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126 新学期が始まる
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戦闘訓練はそれから数日続いた。
エマ、チュチュ、メンテ、リナリの4人は、キリアン直々に剣術を習った。
「ほら、振りが甘い!甘えんな」
「はい!」
「目閉じんなよ!見ろ」
「はい!」
それぞれ、木剣を振る。
練習用とはいえ、木でできた剣はなかなかに重い。
「学園帰った後も、体力づくりくらいはやっておけよ」
「はい!」
みんなの声が揃う。すっかり、体育会系のノリだ。
みんながそれなりにしっかりした顔つきになった頃、夏休みの終わりがやってきた。
「これで、訓練は終わりだ。さすが、大魔術師の学園の生徒なだけあるな」
キリアンの顔は、さっぱりしたいい顔をしていた。地面に木剣を突き刺す。どこかのイベントスチルのように、太陽が照らしている。
本当に、太陽を味方につけたイケメンだ。
その日の昼、訓練は終わった。
明日には、6人、馬車で学園へ帰る予定だ。
最後の後片付けで、残ったのはエマとキリアンだった。
「ありがとうございました。コンスタン侯爵」
「ああ。お前らは気に入ったよ。またやろうぜ、訓練」
「はい」
短い期間だったけれど、何かと掴めたものがあった。そう思える数日だった。
……性格に難はあるけれど、いい先生であることは認めざるを得ないようだ。
キリアンが、エマの頭をぐしぐしと撫でた。
キリアンは、頭を撫でながら、からかうような顔をして、エマの後ろを見ていた。
あ、この顔は……。ジークを見る時の顔だ。
ヴァル?
後ろを向こうとしたところで、腕を取られる。
引き寄せたのは、やはりヴァルだった。
キリアンのふざける時の顔。
キリアンは、ヴァルをジークとして見てたんだ。ずっと。
やっぱり……、ヴァルって、ジークなんだ……。
「もう、終わりだろ」
ヴァルがそう言うと、キリアンがフフン、と笑った。
「思わぬ拾い物だったよ。どいつも将来有望だ。お前とも、今度は王都で会いたいものだな」
「……“ケンカを売りたい”の間違いだろ」
「エマちゃん、いつでも騎士団に顔出せよ」
「やらねーよ」
不機嫌そうな顔のまま、ヴァルはエマを連れて屋敷へ歩き出した。
「何が、“エマちゃん”だよ」
どうして呼びに来たのかわからないまま、エマはヴァルに腕を引かれて行った。
翌日、6人は、コンスタン家の大きな馬車に、揺られて帰ることになった。
ヴァルが乗ってきた学園の馬も一緒だ。
馬は、コンスタン家の馬と一緒に馬車に繋げた。時々、ヴァルが馬車の横を馬で歩いた。
エマが、学園の深緑のマントを靡かせるその後ろ姿を眺めた。
まだ、ヴァルにどう接していいのかわからない。
けど。
後ろ姿を見るくらいは、いいよね。
6人は、4日ほどかけて学園に帰ってきた。
「そんなに遠い場所だったんだね」
エマの言葉に反応したのは、隣に座るチュチュだった。
あはは、と笑う。
「学園からエマのうちまでと同じくらいかな」
コンスタンの地は広大だ。王都の東側から国境までを守る、この国の要。どうやらその領地の北の端の方に居たらしい。
色々とあった夏休みだった。
馬車の外を馬で行くヴァルをこっそりと見る。
あれが……ジーク……。
色々とあったけど、でも、知らないままでいるよりは、知ることができてよかった。
学園が近付いてくると、ヴァルが、馬をかけあしで駆けさせた。
後ろ姿を眺める。
次第に見えてきた森は、ヴァルにとてもよく似合っていた。
いよいよ、新学期が始まる。
◇◇◇◇◇
そんなわけで、次回からまた学園でのお話です!
エマ、チュチュ、メンテ、リナリの4人は、キリアン直々に剣術を習った。
「ほら、振りが甘い!甘えんな」
「はい!」
「目閉じんなよ!見ろ」
「はい!」
それぞれ、木剣を振る。
練習用とはいえ、木でできた剣はなかなかに重い。
「学園帰った後も、体力づくりくらいはやっておけよ」
「はい!」
みんなの声が揃う。すっかり、体育会系のノリだ。
みんながそれなりにしっかりした顔つきになった頃、夏休みの終わりがやってきた。
「これで、訓練は終わりだ。さすが、大魔術師の学園の生徒なだけあるな」
キリアンの顔は、さっぱりしたいい顔をしていた。地面に木剣を突き刺す。どこかのイベントスチルのように、太陽が照らしている。
本当に、太陽を味方につけたイケメンだ。
その日の昼、訓練は終わった。
明日には、6人、馬車で学園へ帰る予定だ。
最後の後片付けで、残ったのはエマとキリアンだった。
「ありがとうございました。コンスタン侯爵」
「ああ。お前らは気に入ったよ。またやろうぜ、訓練」
「はい」
短い期間だったけれど、何かと掴めたものがあった。そう思える数日だった。
……性格に難はあるけれど、いい先生であることは認めざるを得ないようだ。
キリアンが、エマの頭をぐしぐしと撫でた。
キリアンは、頭を撫でながら、からかうような顔をして、エマの後ろを見ていた。
あ、この顔は……。ジークを見る時の顔だ。
ヴァル?
後ろを向こうとしたところで、腕を取られる。
引き寄せたのは、やはりヴァルだった。
キリアンのふざける時の顔。
キリアンは、ヴァルをジークとして見てたんだ。ずっと。
やっぱり……、ヴァルって、ジークなんだ……。
「もう、終わりだろ」
ヴァルがそう言うと、キリアンがフフン、と笑った。
「思わぬ拾い物だったよ。どいつも将来有望だ。お前とも、今度は王都で会いたいものだな」
「……“ケンカを売りたい”の間違いだろ」
「エマちゃん、いつでも騎士団に顔出せよ」
「やらねーよ」
不機嫌そうな顔のまま、ヴァルはエマを連れて屋敷へ歩き出した。
「何が、“エマちゃん”だよ」
どうして呼びに来たのかわからないまま、エマはヴァルに腕を引かれて行った。
翌日、6人は、コンスタン家の大きな馬車に、揺られて帰ることになった。
ヴァルが乗ってきた学園の馬も一緒だ。
馬は、コンスタン家の馬と一緒に馬車に繋げた。時々、ヴァルが馬車の横を馬で歩いた。
エマが、学園の深緑のマントを靡かせるその後ろ姿を眺めた。
まだ、ヴァルにどう接していいのかわからない。
けど。
後ろ姿を見るくらいは、いいよね。
6人は、4日ほどかけて学園に帰ってきた。
「そんなに遠い場所だったんだね」
エマの言葉に反応したのは、隣に座るチュチュだった。
あはは、と笑う。
「学園からエマのうちまでと同じくらいかな」
コンスタンの地は広大だ。王都の東側から国境までを守る、この国の要。どうやらその領地の北の端の方に居たらしい。
色々とあった夏休みだった。
馬車の外を馬で行くヴァルをこっそりと見る。
あれが……ジーク……。
色々とあったけど、でも、知らないままでいるよりは、知ることができてよかった。
学園が近付いてくると、ヴァルが、馬をかけあしで駆けさせた。
後ろ姿を眺める。
次第に見えてきた森は、ヴァルにとてもよく似合っていた。
いよいよ、新学期が始まる。
◇◇◇◇◇
そんなわけで、次回からまた学園でのお話です!
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