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107 救出ミッション(2)

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 その後、少年を連れに行った4人と、その少年、シュバルツ伯爵は場所を応接室に移し、それぞれため息を吐いた。
「シエロ達は明日まで戻ってこないかもしれないな」
「……そうなの?」
 エマが、心配そうな顔をヴァルに向けた。
「騎士団の地下牢……。場所は不穏だけど、そこで守る方が安全だ」
「そっか……」
 少年を保護したことは、屋敷にいた魔術師の一人が伝えに行ってくれた。

 それから、落ち着かない夜を過ごした。
 誰もが眠れずに、小さな応接室のソファでじっとしていた。
 少年に事情をゆっくりと説明すると、少年がぼそぼそと身の上話を始めた。
 契約と違う仕事内容、手紙すら書けない軟禁状態。
「それで……何度か執事長に言って、休暇の申請も出したんだけど、全部却下で……」
 不安そうな顔になった少年にエマが「大丈夫だよ」と声をかけた。
 サイドボードの上に置いてある時計が、音も無く時を刻む。

「この子がお屋敷に居ないことがバレたら……どうなるの」
「僕は普段はあまり呼び出されることはないので、同僚が時間を稼いでくれていれば……」
「大丈夫……。騎士団からの召喚状の方が早いはずだ」

 朝、クリークがこの子が居ないことに気づけばアウト……。
 騙され、閉じ込められ、働かされていたとはいえ、今日のことだけを見れば、こちらが誘拐犯だ。
 あまりにも力技な作戦。

 全員が押し黙り、外の様子に耳をすませる。
 陽が昇り、朝が来る。
 陽が高く昇った頃、料理長が自ら、大きなポットと大皿に乗せたサンドイッチを運んできた。
「お疲れ様です。皆さん、お召し上がりください」
 後ろにいた魔術師二人が、
「調理を見ておりましたが、異常はありませんでした」
 と報告してくれる。
 なるほど、3人もいれば、誰であっても危険物を混ぜる機会は減るだろう。
 エマがサンドイッチに手を出そうとして、止まり、隣にいたヴァルの方に向き直った。
「……毒味しようか?」
「……いや、大丈夫」

 太陽がかなり高くなった頃、扉が開いた。
 入ってきたのは、シエロだ。
「先生!」
 エマが勢い良く立ち上がった。
 シエロが様子を見渡して、安堵の顔を見せる。
「母さんは!?」
 少年が必死な顔をした。
 シエロが少年に優しい顔を向ける。
「大丈夫だよ。クリークは今、審問を受け、勾留されたところだ。君のお母さんはまだ聴取を受けているけれど、重い罪になることはないだろう」
 少年はそこで、今日初めて安心したようだった。
「君も、聴取の予定があるから、騎士団まで送って行こう」

 そうして、少年は、魔術師に連れられて、騎士団へ向かった。
 魔術師と少年が部屋を出て、扉が閉まるのを見届けた。
「これで……一件落着なんですか?」
 エマが口を開いた。
「そうだね」
 シエロが笑顔になる。安心する笑顔だ。
「毒薬の入手経路の特定や雇用状況の確認なんかをしないといけないから、まだ時間はかかるけどね」
「そっか……」
 エマが身体ごと、ヴァルの方を向いた。
「よかった!」
 ヴァルの手を取る。
「よかったね、ヴァル」
「ああ」
 ヴァルもそこでやっと、安心したようだった。
 ヴァルが立ち上がり、周りにいるメンバーの顔を見渡した。
「みんな、手を貸してくれてありがとう」
 その場にいる全員が、安堵の表情を浮かべ、頷いた。



◇◇◇◇◇



さて、この問題はこれで解決、ということで。
次回から恋愛で爆走します!!
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