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――教会の使者  

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「ドミニク司祭が来ました」

ドミニク司祭と言えば、このエターナル王国、国教のトップのお方、そんな方がやって来られたとあって、ドクターワトソン様は慌てている。この王宮にある治療室以外で治療を行うことができるのは、教会の許可を得た医師のみとなっている。

それは、医師と言っても基本的には光系の魔法を中心とした魔法による治癒と薬によるものに頼っているからなんだけど、ここ治療室は王室の直轄ということで、教会からは治外法権なのだが、ここにいるドクターワトソンをはじめとする医師は、教会に認定された人たちなの。

そんな中、私は、王家筆頭魔導士、マーリン様によって、魔法の練習として治癒魔法をここで施している。一応、ドクターワトソン様が監督していることになっているので、私はお仕事ができることになっている。

そこへドミニク司祭がやって来た目的は私にあるのは間違いない。聖女と呼ばれる私がいる以上、見逃すことはできないようなのだ。

しばらくして、鋭い眼光を持つスキンヘッドで小太りな人物が現れた。そして、私をなめるように見ている。特に胸のあたりを中心に、寒気がするほど、その鋭い眼光から放たれたいやらしい視線。

「わしはエターナル王国を担当するドミニクだ。今日は、聖女と呼ばれる君の調査に来た」

「はぁ…そうですか」

このいやらしい視線をなんとかしてよ。と思っているといきなり

『鑑定』

「な…なに?」

「うーむ…なんだこれは?」

ドミニクは驚いた表情をしている。私には何が何だかよくわからない。

「どういうことだ?なぜ、魔力が5なんだ?聖女が魔力5とは一体どうなっているんだ?貴様、魔力をどこに隠している?」

いきなり私に向かって怒り出したぞ、このおっさん!!

「どこだ!!どこに隠した?まさか貴様、魔法の手下か?」

「ま…魔王の手下って?」

「だったら、なぜ魔力が5なんだ?」

「は?」

「そうやってとぼける気か、だったらこのことを本部に報告せねば」

このおっさん、さっきから何を言っているのか全く理解できない。いきなり魔王の手下とか言い出したかと思うと、本部に報告するって、その話を聞いてドクターワトソンはおろおろとしている。するとドミニクは

「ドクターワトソン、席を外していただけないか」

「え?」

「少し二人で話がしたいのだが」

「わかりました」

ドクターワトソンは、部屋を出て行った。するとドミニクは急に鼻息を荒くして私の方へ近寄ってきた

「な…なななななんですか?」

「はぁはぁはぁ…わしの妾にならぬか?」

「はぁ?」

「はぁはぁはぁ…どうじゃ悪い条件ではないと思うが、このエセ聖女様」

「やめてください」

私は思いっきり司祭を振り払った。

「貴様!!優しくしていれば…調子に乗りおって、わしが本部に魔王の手下と報告していいのか?」

「くっ?」

このおっさん、レオン様より腹黒だ

「どうせ、魔力は5なんだろ。そんな奴がこのわしに勝てるはずはないわ」

「はなして~!!」

「ほう…まだ抵抗するのか、抵抗されるほどやりがいがある。」

「やめてー!!」

ドミニクをドンと突き飛ばした。

「うわ!!」

「貴様!!」

しかし、彼は再び私に襲い掛かってきた。

「きゃ!!」

「このわしに歯向かうなんぞ、100年早いわ」

こいつシツコイぞ。とりあえず逃げよう

『テレポート』

がん!!え?壁?なぜこんなところに透明な壁が、ということは逃げられない

「ほう…結界の中で魔法を使うか、しかし、もう魔力はないはず」

じわじわと近づいてくる

『パラライズ』

するとドミニクが一瞬ひるんだ。

「くっ…まだ魔力が残っていたか。しかし、この程度の魔力はわしには効かぬ」

1cm魔力の発動が仇となった。しかし、ここでフルパワーの魔法を使えば、災害が起きてしまう。かといって、こんな奴にやられるのは嫌。

絶対嫌!!嫌!!嫌!!

かといってライデンを呼んでしまうと私は悪魔の手先という烙印を押されてしまう。
さて、そてどうする?ここにあるのは。オキシドールとメンソール液か…ん?メンソール液…これを

『サイコキネシス』

「フン!!そんな魔法が効くか」

私はドミニクの真上の天井にメンソール液が入った瓶をぶつけた

パリン!!

「な…なんだ?うわ~目…目がぎ…ゃぁああああ…目…目が…」

騒動に気付いたお付の者2名が部屋に入ってきた。

「司祭様!!」

「貴様!!司祭様に何をした!!」

「目が…目が…」

「お前は司祭様を守れ、早くヒールだ!!」

「目が…目が…」

『ヒール』

すると司祭様の目は治ったって、メンソール液が目に入っただけなんだけどね。

「こ…こいつは魔王の手下だ。早く始末してしろ!!」

二人は素早く剣を抜いた。そして、一人は司祭を守り、もう一人は私に切りかかってきた。

彼が振りかざした剣は、素早く私は避けることはできなかった。

キン!!

首元で受けた剣はそこで止まっていた。

「へ?」

切られたと思った私も当然驚いたんだけど、相手はもっと驚いていた。

「なぜだ?」

慌てて引き抜いた剣によって服が切られて胸元がはだけた。

「きゃあああ!!」 

「えっ?」

「えっちー」

私のビンタが炸裂

「はぅっ!!くっ!!この女!!」

そう叫んで再び剣を振りかざし私に切りつけた。そして、剣はパリンと折れてしまったのだった。

「バ…バケモノ!!」

もう一人の護衛も驚いていた。

「剣が効かないとは」

「やはり、こいつは魔王の手先だ」

そこへ王子様が部屋に入ってきた。

「フリージア!!こ…これは」

王子様を見た司祭は、彼に訴え始めた。

「おお!!これは王子様!!こやつは魔王の手先です」

するとその様子を見た王子様は

「いくら国教のトップとは言え、この事態をどう説明する」

「な…何をおっしゃるのですか」

「どう見てもお前がか弱い女性を襲っているとしか見えぬが」

「わ…私を疑うのですか」

「服をはだけた女性と刃物をもっている男たち、これはどう見てもお前たちが襲っているとしか俺には見えないが」

折れた剣を持った一人が叫んだ。

「王子様、この折れた剣を見てください。あの者を切ろうとしたら折れたのですぞ」

「なに?それは本当か?」

「ほ…本当です。これをご覧ください」

「貴様!!フリージアに切りかかったのか」

「え?…うぐっ…」

次の瞬間、王子様はその者に蹴りを入れていた。

「ここが治療室でよかったな。そうでなかったら切り裂いているところだ」

「お…王子様?何を」

王子様は、私と司祭との間に入った。

「ちがう…違う…その女が私を誘惑したのだ。魔王の手先を黙ってくれと」

「ほう?…彼女が魔王の手先という証拠は?」

「ですから、この剣が」

既に気を失っている者の折れた剣を王子様に見せていた。

「剣?それが証拠ですか?」

「そうです。この剣が折れたのが証拠です」

すると王子様は私の方をちらっと見て

「君は聖女の防御力をしらないのかね」

「い…いえ」

「そうか…ということは、君たちは嘘をついていることになるな」

すると王子様の護衛が部屋に入ってきて司祭たちを取り押さえた。

「こんなことをして許されると思っているのか!!」

「司祭様、後は、法廷で話を伺います」

「ク…こんなこと、本部に知らせてやる」

「どうぞ、ご自由に」

王子様は上着を私にかけてくれた。

「大丈夫か?フリージア」

「ええ…」

こうしてこの騒動は終わったのだった。



















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