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――祝勝会
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――祝勝会
私はというと久しぶりに女性貴族としての正装をしていた。そのせいか私の姿を見た人たちはびっくりしていた。
まずは王子様
「な…なんだその格好は…」
「一応、公の場ですので」
「に…似合ってるよ」
その後は黙り込んでしまった。それだけかい!!と心では突っ込んでいるけど、横にいたクラウス様は
「ふーん。馬子にも衣装とはこのことだね」
相変わらず冷たい。するとレオン様は、私をジロジロ見ている。腹黒なレオン様、きっと何か言ってくるに違いない。
「どうかなさいましたか?」
「うーむ。歳末大売出しって感じかな」
「レオン様、どういう意味ですか?」
「ここで売り切らないと商品価値はなくなる」
クラウス様は納得したと手をポンと叩いて
「なるほど、レオンは、いいことを言うね」
「クラウス様!!、レオン様!!」
「ハハハ、怒ったか」
「もうっ!!」
相変わらずレオン様は腹黒だ。しかし、王子様は、この二人の会話についていけなかったよう。
「時間だ」
***
勲章授与式で私を見た王様は
「フ…フリージアなのか?」
「はい、陛下」
「これは、見違えたぞ。いつも治療をしている姿しかみていないから、今日もその格好でくると思っていたのでな」
「陛下、このような場ですから」
「ほう…貴族令嬢らしきことを言ってくれるわ」
「陛下のいじわる~」
「ようやく、いつものフリージアらしさがでたか」
「もう…しらない」
すると後ろから
「陛下、陛下、時間が…」
「おっと、そうじゃった。フリージア、この度の働き誠に大儀であった。ここに勲章を授ける」
「ありがたき幸せ」
そこまでは良かったんだけど、陛下に近づこうとした瞬間、履き慣れていないスカートの裾を踏んでよろけてしまった。
「あ…」
「おっと」
陛下に抱き着く形になってしまった。周りがざわついていたが陛下は冷静に
「大丈夫かね」
「はい…」
勲章を陛下自らつけた後、
「本当に大儀であった。我が兵士たちを救ってくれた、フリージアに騎士の称号を与える。今後、フリージアを正式に聖女として認める」
「おお!!」
こうしてエターナル王国公認の聖女となったんだけど、この後が大変だった。祝勝会の中で少しでも一人になると、どこからともなく、貴族の坊ちゃんがやってきて
「私と結婚してくれ」
だったらましな方で
「当然、俺と結婚するだろう」
という謎の超上から目線で話をしてくる奴もいたんだけど、直ぐに王子様がやってきて
「聖女様に結婚を申し込んでいないだろうな?」
めっちゃ殺気立っていて、その気迫が私にまで伝わて来た。そして、中途半端な連中は逃げ去っていったのだった。
この会に来ていたロイド=ビンセントは、遠くでその光景を見ていた。いつもならオリバーに近づくように指示するのだが、先日の失敗している。更にコーエンからの忠告が頭をよぎる
「ロイド様、聖女様には手を出されない方が得策かと」
「どういう意味だ」
「まともに戦って勝てる相手ではございません」
「それほどなのか?」
「はい。魔人が放った黒炎のファイヤーボールを受けても無傷ですよ。更に反撃で漆黒のファイヤーボールを撃ち返したのです。あれは神の領域でございます。ですから、手を出されてはいけませぬ」
それほどの魔力を有しているのであれば、その気があれば、このエターナル王国など手中に収められるだろうに、その聖女は目の前で能天気なふるまいをしている。すると、グロブナンがやって来た。
「ビンセント殿は、聖女様には手を出さないのかね」
「いえ…聖女様になった以上、手出しはできぬかと」
「そうだな。聖女様になってしまったからな、しかし、あの王子が聖女様に好意を持っているとは」
「どういうことだ?」
「女どもの間では有名な話だ。あの鉄壁要塞の王子が聖女にアタックしているそうだ」
「なんと」
「しかし、聖女様は年も年だから、断っているそうだ」
「そうだな。既に行き遅れに近いからな」
「だから、他の貴族たちは、ほら、隙を見て聖女様に声を掛けているだろう。ほう、王子様が排除したか」
「なるほど」
「そういえば、教会が聖女様の調査をするそうだ」
「どういうことだ?」
「マーリンのように魔導士になればよかったのだが、あのような流れで聖女扱いになったことで、教会としては、聖職者としてふさわしいかどうか確認しないといけないらしい」
「ということは、教会本部は動くのか」
「教会本部が動くとまずいな」
「異端という烙印を押したら、悪魔狩りと称して聖騎士団がやってくるとやっかいだ」
「陛下はどのように考えておられるのだろう」
「よくわかりませぬが、先程、聖女であると宣言したことは、教会側へ干渉するなというメッセージという意味ではないのか?今回の授与式に教会の司祭が来ていなかっただろう」
「確かにそうだな」
そんな話があったことはつゆ知らず、祝勝会が終わった翌日、私はいつも通り治癒魔法を施していた時にドクターワトソンが慌てて私の部屋に入ってきた。
「フリージア様!!大変です」
「どうなされたの?ドクターワトソン様」
「ドミニク司祭が来られました」
私はというと久しぶりに女性貴族としての正装をしていた。そのせいか私の姿を見た人たちはびっくりしていた。
まずは王子様
「な…なんだその格好は…」
「一応、公の場ですので」
「に…似合ってるよ」
その後は黙り込んでしまった。それだけかい!!と心では突っ込んでいるけど、横にいたクラウス様は
「ふーん。馬子にも衣装とはこのことだね」
相変わらず冷たい。するとレオン様は、私をジロジロ見ている。腹黒なレオン様、きっと何か言ってくるに違いない。
「どうかなさいましたか?」
「うーむ。歳末大売出しって感じかな」
「レオン様、どういう意味ですか?」
「ここで売り切らないと商品価値はなくなる」
クラウス様は納得したと手をポンと叩いて
「なるほど、レオンは、いいことを言うね」
「クラウス様!!、レオン様!!」
「ハハハ、怒ったか」
「もうっ!!」
相変わらずレオン様は腹黒だ。しかし、王子様は、この二人の会話についていけなかったよう。
「時間だ」
***
勲章授与式で私を見た王様は
「フ…フリージアなのか?」
「はい、陛下」
「これは、見違えたぞ。いつも治療をしている姿しかみていないから、今日もその格好でくると思っていたのでな」
「陛下、このような場ですから」
「ほう…貴族令嬢らしきことを言ってくれるわ」
「陛下のいじわる~」
「ようやく、いつものフリージアらしさがでたか」
「もう…しらない」
すると後ろから
「陛下、陛下、時間が…」
「おっと、そうじゃった。フリージア、この度の働き誠に大儀であった。ここに勲章を授ける」
「ありがたき幸せ」
そこまでは良かったんだけど、陛下に近づこうとした瞬間、履き慣れていないスカートの裾を踏んでよろけてしまった。
「あ…」
「おっと」
陛下に抱き着く形になってしまった。周りがざわついていたが陛下は冷静に
「大丈夫かね」
「はい…」
勲章を陛下自らつけた後、
「本当に大儀であった。我が兵士たちを救ってくれた、フリージアに騎士の称号を与える。今後、フリージアを正式に聖女として認める」
「おお!!」
こうしてエターナル王国公認の聖女となったんだけど、この後が大変だった。祝勝会の中で少しでも一人になると、どこからともなく、貴族の坊ちゃんがやってきて
「私と結婚してくれ」
だったらましな方で
「当然、俺と結婚するだろう」
という謎の超上から目線で話をしてくる奴もいたんだけど、直ぐに王子様がやってきて
「聖女様に結婚を申し込んでいないだろうな?」
めっちゃ殺気立っていて、その気迫が私にまで伝わて来た。そして、中途半端な連中は逃げ去っていったのだった。
この会に来ていたロイド=ビンセントは、遠くでその光景を見ていた。いつもならオリバーに近づくように指示するのだが、先日の失敗している。更にコーエンからの忠告が頭をよぎる
「ロイド様、聖女様には手を出されない方が得策かと」
「どういう意味だ」
「まともに戦って勝てる相手ではございません」
「それほどなのか?」
「はい。魔人が放った黒炎のファイヤーボールを受けても無傷ですよ。更に反撃で漆黒のファイヤーボールを撃ち返したのです。あれは神の領域でございます。ですから、手を出されてはいけませぬ」
それほどの魔力を有しているのであれば、その気があれば、このエターナル王国など手中に収められるだろうに、その聖女は目の前で能天気なふるまいをしている。すると、グロブナンがやって来た。
「ビンセント殿は、聖女様には手を出さないのかね」
「いえ…聖女様になった以上、手出しはできぬかと」
「そうだな。聖女様になってしまったからな、しかし、あの王子が聖女様に好意を持っているとは」
「どういうことだ?」
「女どもの間では有名な話だ。あの鉄壁要塞の王子が聖女にアタックしているそうだ」
「なんと」
「しかし、聖女様は年も年だから、断っているそうだ」
「そうだな。既に行き遅れに近いからな」
「だから、他の貴族たちは、ほら、隙を見て聖女様に声を掛けているだろう。ほう、王子様が排除したか」
「なるほど」
「そういえば、教会が聖女様の調査をするそうだ」
「どういうことだ?」
「マーリンのように魔導士になればよかったのだが、あのような流れで聖女扱いになったことで、教会としては、聖職者としてふさわしいかどうか確認しないといけないらしい」
「ということは、教会本部は動くのか」
「教会本部が動くとまずいな」
「異端という烙印を押したら、悪魔狩りと称して聖騎士団がやってくるとやっかいだ」
「陛下はどのように考えておられるのだろう」
「よくわかりませぬが、先程、聖女であると宣言したことは、教会側へ干渉するなというメッセージという意味ではないのか?今回の授与式に教会の司祭が来ていなかっただろう」
「確かにそうだな」
そんな話があったことはつゆ知らず、祝勝会が終わった翌日、私はいつも通り治癒魔法を施していた時にドクターワトソンが慌てて私の部屋に入ってきた。
「フリージア様!!大変です」
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