機動戦記 バイソン

出撃命令

　共和国側としてもメルバルク２の奪還が急務であるというのが政治家たちの本音だった。しかし、軍部としては、奪還は、建前であって、メルバルク２を通過してくる帝国軍を迎え撃つ方が、進軍するリスクよりはましだというのが本音だった。
　特に、軌道要塞マックスの活躍は共和国側としては、予想外の展開となっていた。

　そんな中、ディカッシュは軍司令部に呼ばれた。嫌な予感しかしないというのが彼の一言だったそうだが、その悪い予感は的中した。それは、目の前の軍上層部の暗い表情かから読み取れた。

　「ディカッシュ提督にメルバルク2奪還を命ずる」

その言葉を聞いたディカッシュは珍しく無言だったと後の歴史書には記されていた。こうして、後の歴史書に無謀な行動と記された。ディカッシュの単独行動が起きることとなった。
　メルバルク２は、要塞以外にもう一つの機能を持っていた。それは、亜空間転送装置という機能だった。これは、太陽系外洋とＥ２外洋を結ぶものであり、これを運用するにはかなりの出力のエネルギーが必要だった。これをメルバルク２は、両方の機関で補っている。つまり、片方の機関が停止すれば、その亜空間転送は不可能となるのである。
　かといって、メルパルク２はかなり難攻不落である。先の戦いでミドルフたちＰＣ隊の活躍で地球側が奪取され、芋づる式にメルパルク２側も奪取されてしまった経緯がある。そして、直ぐに帝国は、その防衛機能を準備したのであった。これはルーカスの才能を無視することはできなかった。
　こうして、難攻不落の要塞は帝国側にわたってしまった。そんな状態のメルパルク２要塞を攻撃せよという無謀な作戦を、前線をはずされたディカッシュに命令する共和国にも問題があるのだが、それが現実というものだった。
　そして、ディカッシュはＥ２要塞奪取作戦を行うことになる。これが、とんでもないことになるとは、共和国の政治家も、帝国側も知る由もなかった。