機動戦記 バイソン

アルデバラン攻防戦

ディカッシュの命令にメテゥカッスル要塞の誰しもが驚いた。


それは


全艦隊出撃命令だった。

ディカッシュは、ディカッシュ艦隊を第１艦隊、守備艦隊を第２艦隊、突撃艦隊を第３艦隊とし、本作戦を実行する旨を伝えたのだった。第１艦隊、第２艦隊はもちろん陽動艦隊、第３艦隊がその隙を狙って、アルデバランへ突撃をするという作戦だった。
なぜ、これほどの大艦隊を出撃させねばならなかったかと言うと、アルデバラン艦隊はほぼ回復しており、帝国の攻撃艦隊も既に出撃準備をしている。それは、今回の作戦で、数の上では圧倒的な不利だということを示していた。
しかし、命令が来ている。苦肉の策としか言いようがなかった。

久しぶりに旗艦の椅子に座り土星を目にしたディカッシュ、第２艦隊は数日前に出港、大迂回作戦を行っていた。３日後に、アルデバラン要塞を左翼から侵攻予定だった。もちろん、ディカッシュは、正面へ向かうのだった。
そして、前回の戦闘で、アステロイドベルトが一番少ない右翼へ第３艦隊を突撃させるつもりだった。

こうして、先頭に火ぶたが切り落とされた。

予想通り、帝国は３艦隊の守備隊を出撃してきた。この時点で、数の上で負けている。

「PC隊出撃せよ」

こうして敵艦隊との消耗戦が始まった。PC部隊は、バイソン・バイソンマークⅡの奮闘が目立っていた。ただ、E2艦隊の方が、操艦術の熟度が高いせいか、ほぼ互角の戦いをしている。しかし、数で勝る帝国に徐々に押されてきた。その時だった。第３艦隊がワープアウトとともに、全速で、アルデバラン要塞中央へ特攻をかけていった。
しかし、それは、大方の予想を外れ、敵艦隊と接触し大爆発を起こした。その瞬間を見たディカッシュは

「なんてこった・・」

と漏らした。
しかし、その大爆発で、ディカッシュ達と対峙していた艦隊が二つに割れ、アルデバラン要塞が真正面に出てきたのだった。そこへ、第１艦隊の後ろへ別な艦隊がワープアウトしてきた。そして、第１艦隊を追い越した後、アルデバラン要塞へ向け、再度、特攻をかけた。

「遅かったな」

「すみません。一部の戦艦が遅れました」

そう報告をしたのは、ヒジリだった。

「全艦突撃」

真正面のアルデバランに向かって艦隊は突撃した。一方で、ディカッシュは、退却命令を発令した。

「全館、撤退すぐにこの場から離れよ」

数隻の艦隊は、アルデバラン要塞守備隊を巻き込み大爆発をした。その中の一隻が、アルデバランに到着し、ワープをした。
　土星沖まで撤退したディカッシュは、アルデバランの方を見て愕然とした。その付近のアステロイドベルトも吹き飛んでいた。やがて、宇宙空間で初めて重力波の衝撃波というものを体験した。