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全滅の知らせ そして 躍動
しおりを挟む実は、遡ること数日前、無駄な突撃を繰り返していた。ハッピー准将、敵艦隊を総攻撃する度に、引き込まれ、最後は、PCと砲撃のあらしで戦艦を沈められるということの繰り返しだった。
それは、203高地に布陣した砲台に突撃を繰り返しているようなものだった。そう、ただ、無駄に艦隊を消耗しているに過ぎなかった。しかも、そうこうしている内に敵艦隊に側面を突かれ、800隻もの艦隊がすでに半数にまで減っていた。
引き下がれないハッピー准将は、体制を立て直し、鶴翼の陣を敷いて、敵艦隊を圧倒しようとした時だった。旗艦、コアツー・ベースが撃沈した。
ミドルフとポロッソの手柄だった。メテゥカッスルから退却したブラウンがあることに気付いた。それは、目の前に背後を見せている共和国艦隊がいることに、直ぐに、ミドルフとポロッソをランサーカプセルで出撃させた。ランサーカプセルそれは、隕石のような恰好をした数基のPCを格納できる小型船である。
案の定、敵艦隊までたどり着いたミドルフたちは、真っ先に旗艦であるコアツー・ベースを撃破したのだった。このことにより、司令艦を失った共和国軍は一時混乱した。その隙に、背後からは、ブラウン艦隊、そして、正面からはアルデバラン守備隊の猛攻を受け、ほぼ壊滅したのでった。
「最悪だ」
ディカッシュが放った一言だった。本国からは増援は不可能とのことだった。しかも、今回の大討伐に失敗したハッピー准将は、すでにこの世にない。責任は、全て彼の判断ミスだということにしてしまいたいところだが、そうはいかなかった。それは、死んでいたはずのディカッシュが生還したためだった。しかも、数隻はやられたものの、無傷と言っていいような状態でだった。
共和国国内では、ディカッシュの人気が急上昇していた。大敗北の中、すでに死んでいたと思われていた人物の生還、それは、奇跡としか言いようがなかったと皆が口にするのだった。当の本人は、素直に逃げて帰ってきただけだったのだが、そのあとも、メティカッスル要塞の窮地を救うなど、戦火は十分に上げていた。
しかし、共和国の一部の人間取っては、目の上のたん瘤に過ぎない。なぜ、生きて帰ってきたんだと叫ぶ奴もいたそうだった。そんな上っ面の政治家たちと違い現実に直面をしているのは、ディカシュたち最前線の兵士たちだった。
「どうする?」
「困ったな。今来られると確実にこの要塞は崩壊する。そして、亜空間転移装置(きょうわこくへのいりぐち)まで来られるとやっかいだぞ」
そんな話をしているのはディカッシュとルーカスだった。二人は、現状で何とか要塞を防ぐ方法はないのか、考えていたのだった。そこへ現れたのは、はるかだった。彼女は、前回の戦いで、帝国の新型PCデスナイト3を30機も落とす大活躍だった。そして、何かある策を持ってやってきたのだった。
「進言させていただきます」
実は、この要塞も太陽系外周のアステロイドベルトを利用している。とはいえ、小惑星はそんなにあるわけではなく、更に、あったとりても、かなり小さいものしかなかった。しかし、その小さな小惑星を利用するというのが、はるかの案だった。要するに、小惑星や今回の戦いの残骸にさく裂弾のようなものを仕込んでおく。そして、各艦隊がそれにむけ、発射させ、誘爆を誘うというものだった。
「なるほど、わかった。艦隊を配備する」
一方、帝国側は、この大勝利に沸いていた。そして、再び、要塞討伐の命が下されようとしていた。しかし、ブラウンは、出撃を拒んだ。
「では、わたくしが」
そういったのは、クィー中将だった。彼は、前回の海王星沖会戦で艦隊指揮を執っていた男であった。そして、討伐の命令はクィー中将に下った。
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