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デートではないです。お買い物です
しおりを挟む沙織さんと向かったの近所のショッピングセンター。
そのことに気付いた沙織さんは少し嫌な顔をした。
何故なら、知っている人と会う確率は高い。
現に、俺自身も買い出しで学校の友人に会うことが多い。
特に佐久間秀人と本田大輔は暇人と来ているので、多分、今日も来ている。
「来ない方がよかったんじゃなかったの?」
「そうなんだけど。近所のことも知っておかないと・・」
そう言って辺りを見回して、すーっと俺から離れて行った。
すると俺の目の前には本田大輔と佐久間秀人が現れたのだった。
そして、彼らの目はもちろん沙織さんの方を向いていた。
「ぉおおおお!!らっきー♡」
「こんなところで水樹さんと会えるなんて」
二人は喜んで水樹さんの所へ向かって行った。
「水樹さん・・こんにちわ」
「こんにちわ」
「今日はどんな様でこちらへ?」
「買い物だけど…」
会話がぷっつりと途切れた。なんてぎくしゃくした会話なんだ?
「水樹さーん。今一人なんでしょう?」
大輔が話しかけているが、彼女は無言だ。すると秀人が
「お時間が良ければ、俺達とお茶でもしない?」
彼女の視線が俺の方へ飛んできた。
ウッホン!!
咳ばらいを聞いた二人はようやく俺を発見した。
「恵!!なんでこんなとこにいるんだよ?」
俺が押しているカートの中身を見て
「あーーいつもの買い物ね・・」
こいつらとはここで何度かあったことがある。だから俺が買い物をしているのは知っている。
「けど・・恵・・影うすくね?」
とそこまで行った佐久間はふとあることに気付いた。
「あ・・・そっか・・・この間、水樹さんに振られたばかりだから・・・」
「そっか・・・そんなにショックだったのか・・・」
二人して俺の傷口に塩を塗り込んでいるつもりだろうが、おれには関係ない。
「そう言えば、あの時の勝負おぼえてるよな!!」
「ぎく」
「秀人、明日は、デミカツランチを頼んだぜ」
「うわ!!」
すると沙織さんが
「私、買い物でいそがしいの?立原くん早く行きましょう」
その言葉を聞いた。二人が
「えーー!!水樹さんと恵がデート?」
「デートではないです。お買い物です!!」
きっぱり言われ、呆然としている二人を置いて、俺たちはショッピングセンターの食品コーナーへ逃げ込んだのだった。
こうして、買い物を終え、バスに乗ると彼女は俺の横に座った。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「どうぞ」
「さっきの賭けってどういう意味よ」
「あ・・・あれね・・・実は、俺が沙織さんに告白した時に振られるかどうか賭けをしたんだ」
「ほう・・・それで、あの全く心のこもっていない告白をしたの」
「その通り!!!俺は、あの時に二人と学食の定食をかけていたんだけど、当然、二人は俺が振られる方をかけた」
「ま・・普通はそうなるわね」
「けど。俺は、それだったから賭けにならないから告白はしないと言った」
「するとあいつら間抜けにも俺が沙織さんとお付き合いできる方へ賭けたのだ」
「どうして、そんな無謀なことを?」
「そんな無謀?」
「あ・・ごめん・・・そんな気じゃ」
「そうだよね。全く不釣り合いだもん」
「で、賭けに勝った」
「そういうことです」
「でもね・・・私、初めて、あんなやる気のない告白を受けて驚いたの」
「それは悪かった」
「別な意味で印象に残っているの」
「それは光栄なことで」
「実は、あの時すでに結婚が決まっていて、その息子であるあなたが告白するとは・・」
「そっち?」
「しかも、無気力な告白・・・あんな印象的なことはなかった。ひょっとして、結婚のことを知っていて、嫌がらせかと思ったほどよ」
「それは、考え過ぎ・・・俺は、顔見せをするまで全く知らされていなかったから」
「そうなんだ・・」
「ところで今晩は何をするの?」
「すき焼き・・・親父の奴、奮発してくれたから」
「やったぁ♡」
「沙織さん・・・手伝ってくれるよね」
「・・・・」
「あれ?沙織さーん」
「・・・・」
「急に静かになったような」
「すーすー」
狸寝入りをしている。絶対にそうだ・・・
ゴトゴトとバスは進んでいったのだった。
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