上 下
6 / 67

デートではないです。お買い物です

しおりを挟む

沙織さんと向かったの近所のショッピングセンター。

そのことに気付いた沙織さんは少し嫌な顔をした。
何故なら、知っている人と会う確率は高い。
現に、俺自身も買い出しで学校の友人に会うことが多い。
特に佐久間秀人と本田大輔は暇人と来ているので、多分、今日も来ている。

「来ない方がよかったんじゃなかったの?」

「そうなんだけど。近所のことも知っておかないと・・」

そう言って辺りを見回して、すーっと俺から離れて行った。
すると俺の目の前には本田大輔と佐久間秀人が現れたのだった。
そして、彼らの目はもちろん沙織さんの方を向いていた。

「ぉおおおお!!らっきー♡」

「こんなところで水樹さんと会えるなんて」

二人は喜んで水樹さんの所へ向かって行った。

「水樹さん・・こんにちわ」

「こんにちわ」

「今日はどんな様でこちらへ?」

「買い物だけど…」

会話がぷっつりと途切れた。なんてぎくしゃくした会話なんだ?

「水樹さーん。今一人なんでしょう?」

大輔が話しかけているが、彼女は無言だ。すると秀人が

「お時間が良ければ、俺達とお茶でもしない?」

彼女の視線が俺の方へ飛んできた。

ウッホン!!

咳ばらいを聞いた二人はようやく俺を発見した。

「恵!!なんでこんなとこにいるんだよ?」

俺が押しているカートの中身を見て

「あーーいつもの買い物ね・・」

こいつらとはここで何度かあったことがある。だから俺が買い物をしているのは知っている。

「けど・・恵・・影うすくね?」

とそこまで行った佐久間はふとあることに気付いた。

「あ・・・そっか・・・この間、水樹さんに振られたばかりだから・・・」

「そっか・・・そんなにショックだったのか・・・」

二人して俺の傷口に塩を塗り込んでいるつもりだろうが、おれには関係ない。

「そう言えば、あの時の勝負おぼえてるよな!!」

「ぎく」

「秀人、明日は、デミカツランチを頼んだぜ」

「うわ!!」

すると沙織さんが

「私、買い物でいそがしいの?立原くん早く行きましょう」

その言葉を聞いた。二人が

「えーー!!水樹さんと恵がデート?」

「デートではないです。お買い物です!!」

きっぱり言われ、呆然としている二人を置いて、俺たちはショッピングセンターの食品コーナーへ逃げ込んだのだった。

こうして、買い物を終え、バスに乗ると彼女は俺の横に座った。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「どうぞ」

「さっきの賭けってどういう意味よ」

「あ・・・あれね・・・実は、俺が沙織さんに告白した時に振られるかどうか賭けをしたんだ」

「ほう・・・それで、あの全く心のこもっていない告白をしたの」

「その通り!!!俺は、あの時に二人と学食の定食をかけていたんだけど、当然、二人は俺が振られる方をかけた」

「ま・・普通はそうなるわね」

「けど。俺は、それだったから賭けにならないから告白はしないと言った」

「するとあいつら間抜けにも俺が沙織さんとお付き合いできる方へ賭けたのだ」

「どうして、そんな無謀なことを?」

「そんな無謀?」

「あ・・ごめん・・・そんな気じゃ」

「そうだよね。全く不釣り合いだもん」

「で、賭けに勝った」

「そういうことです」

「でもね・・・私、初めて、あんなやる気のない告白を受けて驚いたの」

「それは悪かった」

「別な意味で印象に残っているの」

「それは光栄なことで」

「実は、あの時すでに結婚が決まっていて、その息子であるあなたが告白するとは・・」

「そっち?」

「しかも、無気力な告白・・・あんな印象的なことはなかった。ひょっとして、結婚のことを知っていて、嫌がらせかと思ったほどよ」

「それは、考え過ぎ・・・俺は、顔見せをするまで全く知らされていなかったから」

「そうなんだ・・」

「ところで今晩は何をするの?」

「すき焼き・・・親父の奴、奮発してくれたから」

「やったぁ♡」

「沙織さん・・・手伝ってくれるよね」

「・・・・」

「あれ?沙織さーん」

「・・・・」

「急に静かになったような」

「すーすー」

狸寝入りをしている。絶対にそうだ・・・


ゴトゴトとバスは進んでいったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

悪役令嬢の品格 ~悪役令嬢を演じてきましたが、今回は少し違うようです~

幸路ことは
恋愛
多くの乙女ゲームで悪役令嬢を演じたプロの悪役令嬢は、エリーナとして新しいゲームの世界で目覚める。しかし、今回は悪役令嬢に必須のつり目も縦巻きロールもなく、シナリオも分からない。それでも立派な悪役令嬢を演じるべく突き進んだ。  そして、学園に入学しヒロインを探すが、なぜか攻略対象と思われるキャラが集まってくる。さらに、前世の記憶がある少女にエリーナがヒロインだと告げられ、隠しキャラを出して欲しいとお願いされた……。  これは、ロマンス小説とプリンが大好きなエリーナが、悪役令嬢のプライドを胸に、少しずつ自分の気持ちを知り恋をしていく物語。なろう完結済み Copyright(C)2019 幸路ことは

【完結】愛されないのは政略結婚だったから、ではありませんでした

紫崎 藍華
恋愛
夫のドワイトは妻のブリジットに政略結婚だったから仕方なく結婚したと告げた。 ブリジットは夫を愛そうと考えていたが、豹変した夫により冷めた関係を強いられた。 だが、意外なところで愛されなかった理由を知ることとなった。 ブリジットの友人がドワイトの浮気現場を見たのだ。 裏切られたことを知ったブリジットは夫を許さない。

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件

りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...