Love Trap

たける

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空港内にあるカフェに2人して入り、ノッドは丸いテーブルの上にノートパソコンを置いた。

「はぁ……まったく……!」

ハンクはまだ怒っている。そりゃそうだろう。せっかく取ったチケットが無駄になったのだ。

「そうカリカリするなよ。せっかくお前に最後のチャンスをやるんだから」

ノッドは1人で向かおうとしていたハンクを許した。理由は簡単だ。彼もフィックスが好き。それだけだ。
だが、ハンクを飛行機に乗せなかった理由は、他にもある。

「で、未来のお前は何てアドバイスしてくれたんだ?」

ホットコーヒーが運ばれ、ノッドはそれを受け取った。

「俺と同じようなサイボーグなら、力が使える筈だから、テレパシーを送り続けろって」
「なるほどな。それで、通じたか?」

ブラックのまま、ハンクがコーヒーに口をつけるのを見遣りながら、ノッドは砂糖とフレッシュを入れた。

「いや、まだだ。距離に問題があるのかも……」
「だったら、さっさとパムラまで向かったらどうなんだ?」

確かにそうだ。だが、何かひっかかる。

「あいつら、俺とフィックスがこっそり外に出るのを知ってたんだ。きっと、どこかに監視カメラでもつけてたんだ」

だとしたら、現在捕われているフィックスも、厳重な監視にある筈だ。もしそうだとしたら、フィックスがストレイン達の目を盗んでメールを打てるだろうか?

「あぁ、そうだな。君達が親密だと教えてくれた時、ストレインは証拠を見るか、と言っていたな」

ハンクが言った。それなら、監視カメラはきっと設置されているだろう。

「ハンク、このメールは罠だ。ストレインはフィックスを監視してる」

ノートパソコンを見遣る。

「じゃあ、フィックスがメールを打つのを黙って見てたってのか?まさか……!」

そう言って呆れの鼻息を漏らしたハンクは、ノッドと同じようにノートパソコンを見遣った。

「黙って見ていないとしたら、奴が書かせた。そうならないか?」

懸命に頭を働かせる。
このメールが罠なのなら、ノッド達が向かう先には既に何等かの手は打たれていると言う事になる。

「俺達をおびき寄せて、そして消すつもりか?それなら、お前はどうなんだ?俺なら簡単に死ぬだろうが、君は違うだろう?まさかまた起爆装置で?」
「いや……」

ノッドは自身の左胸に手を宛てた。ここに爆弾はない。そう言うと、ハンクは首を傾げた。

「何故分かる?自分で胸を開いたのか?」
「未来の自分に会いに行った時に、この新しい体を見てもらったんだ。レントゲンみたいなやつで」

爆弾はないと、ファイも自身も教えてくれたし、自分でもフィルムを確認した。

「だったら、お前は死ぬ事はなくなったんだな」

ハンクは、何故か淋しげに呟いた。

「爆弾がない事は、奴らも分かってる筈だ」

それなら、どうやって自分を殺すと言うのだろう?
大掛かりな機械で粉砕でもするつもりなのだろうか?
方法に推測が出来ないまま、ノッドはコーヒーを飲みほした。




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