71 / 86
第22章.式典会場
3.
しおりを挟む「あれ?澪さんは?」
「見当たらないか?」
そう朋樹に聞かれ、会場を見回す。確かに、その姿はなかった。
──さっき、棟方社長と話しているようだったが。
「鷹殿さんに聞いてみよう」
秘書の鷹殿は、壁際で1人、グラスを傾けている。そちらに、朋樹と歩み寄った。
「あの……剣崎さんは?」
「社長と会談してます」
そう答えた鷹殿の顔に、笑みが広がる。私はその顔に見覚えがあり、嫌な予感がした。
「会談?」
「えぇ。この間の撮影のお礼を述べられてるかと」
──そうじゃない筈だ……
そう思えど──朋樹がいる手前──口に出来ずにいると、目の端に我孫子が見えた。私を呼んでいるようなので、そちらへ向かう。
「よぉ。どうかしたのか?」
「うん?あぁ……剣崎さんの姿がないなって、朋樹と言ってたんだ」
「また彼か。この間言っただろう?」
「朋樹には、彼が必要なんだ」
分かってくれ、と言うと、我孫子は顎髭を撫でた。
「だったら、必ずメダルは獲らせろ」
「勿論だ。私も朋樹も、そのつもりでいる」
「ふー……なら、いいんだが……」
我孫子には悪いが、朋樹と彼が交際を始めた事は黙っていた。まだ伝える時では、ないように思う。
「剣崎君ならさっき、棟方社長と連れ立ってここから出て行ったよ」
「やっぱり……」
「何かあるのか?あの2人」
「い、いや。そう言う訳じゃ……」
とてもではないが、言えない。
「相変わらず嘘が下手だな、お前は」
我孫子が笑う。
「オレが探してきてやるから」
「……頼む。だが……」
「分かってる。何があったとしても、他言しない」
──何か知ってるのか……?
そう勘繰るが、我孫子の表情からは──善意以外──何も読み取れなかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
2人
たける
BL
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
もう君を、失いたくない……
【あらすじ】
交通事故に巻き込まれ、視力を失った天涯孤独の葉山ミノルは、ある日自殺を試みる。
その時、親友の声が聞こえてきて踏みとどまるが、既に親友は亡くなっていて……
最後は恐らくハッピーエンドです。
※軽い性描写と暴力描写がありますので、苦手な方はご遠慮下さい。
蝶々の繭
華周夏
BL
同性愛者というだけで、家族から厄介者扱いされた洋之は、山奥で画家をしている父親の従兄弟の覚に預けられる。もう恋はしないと思っていた。あのひとを失って、心の中には何もなくなった。穴があいてしまったように。
洋之は覚に心惹かれていくが、昔、父の従兄弟の覚と運命的な恋をした相手は他でもない洋之の父親だった………。
にーちゃんとおれ
なずとず
BL
おれが6歳の時に出来たにーちゃんは、他に居ないぐらい素敵なにーちゃんだった。そんなにーちゃんをおれは、いつのまにか、そういう目で見てしまっていたんだ。
血の繋がっていない兄弟のお話。
ちょっとゆるい弟の高梨アキト(弟)×真面目系ないいお兄ちゃんのリク(兄)です
アキト一人称視点で軽めのお話になります
6歳差、24歳と18歳時点です
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
だからその声で抱きしめて〖完結〗
華周夏
BL
音大にて、朱鷺(トキ)は知らない男性と憧れの美人ピアノ講師の情事を目撃してしまい、その男に口止めされるが朱鷺の記憶からはその一連の事は抜け落ちる。朱鷺は強いストレスがかかると、その記憶だけを部分的に失ってしまう解離に近い性質をもっていた。そしてある日、教会で歌っているとき、その男と知らずに再会する。それぞれの過去の傷と闇、記憶が絡まった心の傷が絡みあうラブストーリー。
《深谷朱鷺》コンプレックスだらけの音大生。声楽を専攻している。珍しいカウンターテナーの歌声を持つ。巻くほどの自分の癖っ毛が嫌い。瞳は茶色で大きい。
《瀬川雅之》女たらしと、親友の鷹に言われる。眼鏡の黒髪イケメン。常に2、3人の人をキープ。新進気鋭の人気ピアニスト。鷹とは家がお隣さん。鷹と共に音楽一家。父は国際的ピアニスト。母は父の無名時代のパトロンの娘。
《芦崎鷹》瀬川の親友。幼い頃から天才バイオリニストとして有名指揮者の父と演奏旅行にまわる。朱鷺と知り合い、弟のように可愛がる。母は声楽家。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる