ホワイト・ルシアン

たける

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第22章.式典会場

3.

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「あれ?澪さんは?」
「見当たらないか?」

そう朋樹に聞かれ、会場を見回す。確かに、その姿はなかった。


──さっき、棟方社長と話しているようだったが。


「鷹殿さんに聞いてみよう」

秘書の鷹殿は、壁際で1人、グラスを傾けている。そちらに、朋樹と歩み寄った。

「あの……剣崎さんは?」
「社長と会談してます」

そう答えた鷹殿の顔に、笑みが広がる。私はその顔に見覚えがあり、嫌な予感がした。

「会談?」
「えぇ。この間の撮影のお礼を述べられてるかと」


──そうじゃない筈だ……


そう思えど──朋樹がいる手前──口に出来ずにいると、目の端に我孫子が見えた。私を呼んでいるようなので、そちらへ向かう。

「よぉ。どうかしたのか?」
「うん?あぁ……剣崎さんの姿がないなって、朋樹と言ってたんだ」
「また彼か。この間言っただろう?」
「朋樹には、彼が必要なんだ」

分かってくれ、と言うと、我孫子は顎髭を撫でた。

「だったら、必ずメダルは獲らせろ」
「勿論だ。私も朋樹も、そのつもりでいる」
「ふー……なら、いいんだが……」

我孫子には悪いが、朋樹と彼が交際を始めた事は黙っていた。まだ伝える時では、ないように思う。

「剣崎君ならさっき、棟方社長と連れ立ってここから出て行ったよ」
「やっぱり……」
「何かあるのか?あの2人」
「い、いや。そう言う訳じゃ……」

とてもではないが、言えない。

「相変わらず嘘が下手だな、お前は」

我孫子が笑う。

「オレが探してきてやるから」
「……頼む。だが……」
「分かってる。何があったとしても、他言しない」


──何か知ってるのか……?


そう勘繰るが、我孫子の表情からは──善意以外──何も読み取れなかった。




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