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第四章
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骨の集団と選ばれし者の戦いは、大昔から続いていた。しかしそんな選ばれし者も、初めは1人だった。選ばれし者がたった1人の時に、骨の集団も生まれたのだ。
その者は、奇妙な力を使う。村でも怪しまれていた。
美山京助 は、普通の百姓の家に生まれた長男だった。京助は3人兄妹で、決して裕福とは言えないが、それでも幸せに暮らしていた。
だが京助が20歳の誕生日を迎えた日、村は朝から騒々しかった。物々しい雰囲気に包まれ、人々は何かに怯えているようだった。
それが昼にもなると、いよいよ人々は仕事など放り出し、村で1番大きな教会に集まった。
礼拝堂に人々は入り、口々に何かを言い合っている。その礼拝堂には、京助の家族以外が集まっていた。
やがて神父が姿を現した。肌の白い、ひょろっとした男だった。右の目に片眼鏡をかけ、手には分厚い本を持っている。まだ若く──三十路を迎えたばかりだろう──それに、なかなかの美男子だった。
神父が姿を現すと、人々は吐息と共にそれぞれの思いを口にした。
「1度に仰られても、私には聞き取れません。誰か代表の方が仰って下さい」
男にしては高音な、流れるような声だった。その声に弾かれるようにして、村長の孤土灘が立ち上がった。昨年組父が亡くなり、村長の座を息子である幹夫が継いだのである。まだ若くて落ち着きがない。回りをキョロキョロと気にしている様子である。
「神父さま、おいらたちはホトホト恐いのでス。あの美山のとこの京助が恐いんでス。何や奇妙なちからって言うんです力?魂みたいにピカピカ光るモンで遊んでるんでス。夜なんか恐くて恐くて。それに村のモンの中じゃア、京助がハカから骨を掘ってるって言うんでス。どうにかして下さいヨ。京助はヒトなんかじゃナイでス、もののけでスヨ」
一通り言い終わると、幹夫はストンと座り込んだ。すると人々は、そうだそうだと言い出した。
「静かになさって下さい。いいですか?みなさんが私に言いにいらしたのは、京助君の事なのですね、分かりました」
神父はそう言って人々を残し、礼拝堂を出て墓地の脇を通り、林に近いところにある美山の家にやってきた。美山夫妻はいつもと変わらず畑を耕している。
「こんにちは、美山さん。京助君は家の中ですか?」
「まぁ神父さま、よくいらっしゃいました。ええ、ええ、京助は家の中でございます。しかし、何の御用で?」
「お気になさらず」
神父は家の中に入っていった。入ってすぐ、京助の弟と妹の圭太と万里が家から出てきた。
「あらどうしたの?」
「しんぷさまが、おにいちゃんとふたりでおはなしって」
万里が少しつまらなさそうに言った。圭太は冬樹の方に走り寄り、一緒になって耕し始めた。
一体何の話があるのか、かな子は怪しんだが、万里が遊ぼうと言ったので、考えるのを止めた。
その者は、奇妙な力を使う。村でも怪しまれていた。
美山京助 は、普通の百姓の家に生まれた長男だった。京助は3人兄妹で、決して裕福とは言えないが、それでも幸せに暮らしていた。
だが京助が20歳の誕生日を迎えた日、村は朝から騒々しかった。物々しい雰囲気に包まれ、人々は何かに怯えているようだった。
それが昼にもなると、いよいよ人々は仕事など放り出し、村で1番大きな教会に集まった。
礼拝堂に人々は入り、口々に何かを言い合っている。その礼拝堂には、京助の家族以外が集まっていた。
やがて神父が姿を現した。肌の白い、ひょろっとした男だった。右の目に片眼鏡をかけ、手には分厚い本を持っている。まだ若く──三十路を迎えたばかりだろう──それに、なかなかの美男子だった。
神父が姿を現すと、人々は吐息と共にそれぞれの思いを口にした。
「1度に仰られても、私には聞き取れません。誰か代表の方が仰って下さい」
男にしては高音な、流れるような声だった。その声に弾かれるようにして、村長の孤土灘が立ち上がった。昨年組父が亡くなり、村長の座を息子である幹夫が継いだのである。まだ若くて落ち着きがない。回りをキョロキョロと気にしている様子である。
「神父さま、おいらたちはホトホト恐いのでス。あの美山のとこの京助が恐いんでス。何や奇妙なちからって言うんです力?魂みたいにピカピカ光るモンで遊んでるんでス。夜なんか恐くて恐くて。それに村のモンの中じゃア、京助がハカから骨を掘ってるって言うんでス。どうにかして下さいヨ。京助はヒトなんかじゃナイでス、もののけでスヨ」
一通り言い終わると、幹夫はストンと座り込んだ。すると人々は、そうだそうだと言い出した。
「静かになさって下さい。いいですか?みなさんが私に言いにいらしたのは、京助君の事なのですね、分かりました」
神父はそう言って人々を残し、礼拝堂を出て墓地の脇を通り、林に近いところにある美山の家にやってきた。美山夫妻はいつもと変わらず畑を耕している。
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神父は家の中に入っていった。入ってすぐ、京助の弟と妹の圭太と万里が家から出てきた。
「あらどうしたの?」
「しんぷさまが、おにいちゃんとふたりでおはなしって」
万里が少しつまらなさそうに言った。圭太は冬樹の方に走り寄り、一緒になって耕し始めた。
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