幻想序曲

たける

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第二章

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叫んでも、誰も来てくれない。それでも叫ばずにはいられなかった。骸骨の手が今度は、足首を離して肩を掴んだ。カタカタ言っている。何か言っている。聞き取りにくい。

「アオヤマヒジリ、オマエ、モドサナイ、オマエ、ワレワレノナカマ」

骸骨の口から、自分の名前が聞こえた。どうして知っているのだ。それに、何が戻れない、仲間、だ。自分は大学の帰り道だ。家に帰らねばならない。たった1人の家族が、帝が待っている。

「モウオマエ、ミカドトアエナイ」

骸骨がそう言って、大きく口を開けた。口の中は真っ暗だった。骸骨が自分の肩に噛みついた。痛い、噛みつかれたところが、火のついたように熱い。もう恐怖は麻痺してしまった。
今はただ痛い。戻りたい。帝に会いたい。

「うあぁぁぁぁああ!」

肉が食いちぎられていく。いつの間にか骸骨は1体ではなく、4体にもなっていた。それぞれが自分を掴み、肉を食いちぎっている。骨が見えてくる。

「ああ……」

自分も骨だけにされる。こいつらみたいに、骨になる。まさしくこれは夢だ。夢なのだ。そうでなければ、どうして自分がこんな目に遇うのか分からない。これは悪夢なのだ。もうすぐ目が覚める。そうすれば、夢だったと言う事が分かる。目を覚ませ。自分が骨だけになる前に。
食いちぎられた肉や臓器は、自分の回りに飛び散っていた。自分は心臓を取られても、生きている。血管を取られても、血は出ない。もう神経も切られている。痛みはない。脳も取られた。もう考えられない。
青山ひじりは骨だけになった。




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