薔薇の弔い

たける

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第1章

1─4

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捜査は、二手に別れて行う事にする。ジェシカには悪いが、バラ専門店の事は──恐らく知っているだろうが、異議はなかった──まだ黙っていた。
ジェシカにはジョンの通っていたハイスクールに向かってもらい、自分はあのバラ専門店ローズに向かう事にする。そこになら、ジュリアスローズがあると踏んだからだ。
ローレンは警察署前の道路を渡ると花屋内を見回した。が、ブルーローズの姿はなく、別の女性店員がいるだけだ。その女性はブルーローズより少し年上のようで、ショートヘアに赤い口紅とマニキュアをしている。

「すみません、ちょっとよろしいですか?」

そう言いながら警察手帳を見せると、店員は訝るような目をローレンに向けた。

「あの、何か?」
「ブルーローズさんは、今どちらに?」

そう尋ねてみたのは、単なるローレンの興味でもあり、勘だった。すると店員は首を傾げた。

「彼女なら、小休憩に入ってもらってるわ。彼女が何か?」

面倒はごめんだ、と言いたげな顔だ。

「いえ、いないのなら構わないんですが。この店で、ジュリアスローズは取り扱いがありますか?」
「ええ。あるわ」
「それは、他のお店にも売ってるような物ですか?」

続けて質問すると、店員は片手を作業台に置いた。左手薬指に指輪が見える。

「扱ってないと思うわ。珍しいバラだから」

それで?と、今度は店員が質問してきた。ローレンは手帳を取り出すと、その事をメモするフリをした。

「じゃあ最近、そのバラを購入した方は分かりますか?」
「えぇ。昨日、ブルーが買って行ったわ。あ、ブルーってブルーローズの事よ」

そう店員は付け足した。それは既に知っている事だったが、ローレンは敢えて口にしなかった。

「それは何時頃ですか?どんな様子でしたか?」

ペンを握る手に、力が入っているのが分かる。嫌な緊張だ。

「そうね。21時半頃だったかしら?あの子、21時で上がったんだけどまた店に来てね。どうしても必要だからって、買っていったわ。ちょっと、慌ててた感じがしたけど?」

それもメモするフリをする。
ローレンは、鼓動が早くなるのを感じた。


──まさか、彼女が殺したと言うのだろうか?


確かに、朝に店を尋ねた時はそう推測した。だが、どうだろうか。
とにかく、彼女からも話しを聞かなければならない。

「それで、彼女はどこへ休憩に行ったか分かりますか?」





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