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たける

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無事交代を終えたミューズ達は、揃って食堂へとやって来ていた。カールの隣に座ったミューズの前にホップスが座り、その隣にデルマが座って、各自注文した品を食べていると、ワイズも副麟長と共に彼等の席へやって来た。

「相席いいか?」
「もちろん、いいよ」

咀嚼しながらミューズが答えると、隣に座るカールがファイを見上げて悪戯に笑った。

「副藏長殿は何を召し上がりに?」
「コーヒーです」

そう言ってカールの横に腰掛ける。

「それだけ?もっと食べた方がいいですよ……!何なら僕の激辛炒め、1口どうぞ」

そう言いながらミューズが皿を差し出すと、ファイは丁寧にそれを断った。

「お気持ちは有り難いですが、私は辛いのは苦手なのです」
「まぢかよー?その顔で甘党?」

カールが茶化すが、ファイは口角を僅かに引き攣らせるだけだった。

「ちょっと、失礼よ……!」

ホップスが注意すると、カールはデルマを見遣った。

「そう思うよな?」
「ん?あー、どうかな。味覚は人それぞれだから」

ホップスの隣に座ったのはいいが、デルマは内心狼狽えていた。女性が職場にいるのは構わないが、こうしてプライベートでも一緒だと緊張してしまう。
嫌いではないが、苦手だ。

「そうです。味覚は人それぞれで、そもそも味覚と言うのは……」
「副隣長、難しい話はいいじゃないか。大体人体に関しては俺の方が得意分野だ」

向かいに座りカップを握るファイにワイズが笑いかけると、食堂の入口にジョシュの姿を見つけた。

「ジョシュ!こっちだ」

そうワイズが手を挙げると、ジョシュは微笑しながら歩み寄りワイズの横に座った。

「みんなして飯?」
「貴方も何か注文してきたら?」
「そうだなー。じゃ、ちょっと」

そう言って注文しに行くジョシュを皆で見守りつつ、カールは口火を切った。

「あの顔、きっと叱られたんだぜ」
「まさか……!それはないだろ?」

と、ワイズ。

「そうだなぁ……やっぱり、新艦長にって言われたんじゃ?」

と、ミューズ。

「新艦長?彼が?」

と、ファイが首を傾げる。

「さっき、その可能性はあるんじゃないかって、話してたんです」

そうデルマが答えると、ジョシュがカップを持って戻ってきた。

「何の話?」
「おい、ジョシュ。艦長に呼び出されて、何言われたんだ?」

ワイズが難しい顔をしながら質問してくる。ジョシュは何度か瞬きをすると、6人を見遣りながら困ったように微笑して見せた。

「あー……その話?」
「勿体振らずに言えっての!」

カールがそう言い、ジョシュは渋々親友達に話し始めた。

「ピサロ艦長、辞職してアカデミーの講師になるんだって。それで、俺にアルテミス号の艦長を任せるって言われたんだ」

そう言うと、斜め向かいに座るファイが口角を僅かに引き攣らせた。

「面白い……貴方が艦長……?」
「面白いか?だってさ、まだピサロ艦長は俺達には必要だよ。なのに、若輩者なんかが、こんないい航宙艦の艦長なんて……」

いつかはアルテミス号の艦長に、とは願っていた。だが、まだ図書室の書物を全て読み終えてもいない。艦長としての知識はまだまだ足りない。

「喜ばしい事じゃないか!君が艦長なんて、まだ想像し難いが、夢だったろ?」

ワイズは大きな目を更に見開き、戸惑う親友の肩を叩いた。

「そうです。いつかは世代交代するものなのです。第一貴方が不安がっていると、他の乗組員達も不安を感じてしまいますよ」
「おめでとう!ジョシュ!」

カールはそう言って立ち上がると、カウンターへと駆け出した。

「俺なんかでいいのかな?ファイの方が知識も経験も豊富だし、俺よりみんなに慕われてるし」

珍しく弱音を吐くジョシュに、ワイズは優しく頭を撫でながら言った。

「いきなり完璧な艦長になろうとしても無理だし、そんな事出来る筈ないんだ。少しずつ、出来る事からしていけばいいし、悩みだって俺達に相談すればいい。階段は1歩ずつ、確実にって言うだろ?」
「初耳です」

そうファイが言い、5人は笑った。

「みんな!乾杯だ!」

そう言ってビールを7杯運んできたカールは、各自にそれを配った。

「私はアルコールは……」

そう臨躇う副膜長を無視すると、カールは高々とジョッキを掲げた。

「では、ジョシュ・デビットに乾杯!」




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