6 / 30
2.
2
しおりを挟む
ルドルフ号はゆっくりと宇宙をパトロールしていた。1年目は何事もなく過ぎ、もうすぐ地球を出て2年が経とうとしているが、艦内には相変わらず落
ち着いた空気が充満している。
エンジンルームを出たリチャード・ムーアは、久しぶりに妻の声が聞きたくて通信ルームに向かう事にした。この通信ルームは、クルー達が家族達に連絡を取れる様いつでも開放されていて、常に席は満員だった。リチャードが入室した時もそれは変わりなく、席が空くまでソファに座って待つ事になった。
通信が繋がったら何を話そう。そんな事を考えていると、艦内スピーカーから通信士の声が聞こえてきた。
『リチャード・ムーア機関士。直ちにメインブリッジまでお越し下さい』
呼び出されたのが自分だった事に驚いていると、回りのクルー達が彼を振り返っていた。皆、何事だと言わんばかりに怪訝な顔をしている。
「いやぁ……失礼」
申し訳ないような気分で通信ルームを出たリチャードは、慌ててリフトに飛び乗った。
艦内スピーカーで誰かが呼び出される事は稀である為、皆不安がっている。勿論リチャードも不安だった。
──もしかしたらフラムに何かあったのだろうか。
嫌な考えしか過ぎらない頭を振りメインブリッジに入ると、艦長が険しい顔をしていた。
「どうかしましたか?」
入室許可を得る間もなくリチャードが入ると、艦長は正面にある巨大モニターを指差した。宇宙が映し出されているそれは、いつもと変わらない。
「君に通信があったんだが……ラナフ号艦長のタルトは知ってるな?彼女とはどう言う関係なんだ?」
「え……?フラムの友人です。彼女が何か」
艦長が何を言わんとしているか分からず、リチャードは手を腰の後ろで組んだまま彼を見つめた。回りのクルー達も、自分を観察するように見ている。
「君をラナフ号まで寄越さなければ、当艦を攻撃すると言ってきてる。痴情の縺れか?」
苛立ちを含む艦長の声に、リチャードは慌てた。痴情の縺れなどない。
「いえ、断じてそのような事はありません……!何かの間違いではないのですか?」
「とにかく……!」
艦長はゆっくり席を立つと、リチャードの前まで歩いてきた。
「ラナフ号はここから小型宇宙船に乗れば、1時間で到着する場所に停滞しているそうだ」
早く行って処理して来い、と言わんばかりの貫禄に、リチャードはただ敬礼して答えるしかなかった。
ち着いた空気が充満している。
エンジンルームを出たリチャード・ムーアは、久しぶりに妻の声が聞きたくて通信ルームに向かう事にした。この通信ルームは、クルー達が家族達に連絡を取れる様いつでも開放されていて、常に席は満員だった。リチャードが入室した時もそれは変わりなく、席が空くまでソファに座って待つ事になった。
通信が繋がったら何を話そう。そんな事を考えていると、艦内スピーカーから通信士の声が聞こえてきた。
『リチャード・ムーア機関士。直ちにメインブリッジまでお越し下さい』
呼び出されたのが自分だった事に驚いていると、回りのクルー達が彼を振り返っていた。皆、何事だと言わんばかりに怪訝な顔をしている。
「いやぁ……失礼」
申し訳ないような気分で通信ルームを出たリチャードは、慌ててリフトに飛び乗った。
艦内スピーカーで誰かが呼び出される事は稀である為、皆不安がっている。勿論リチャードも不安だった。
──もしかしたらフラムに何かあったのだろうか。
嫌な考えしか過ぎらない頭を振りメインブリッジに入ると、艦長が険しい顔をしていた。
「どうかしましたか?」
入室許可を得る間もなくリチャードが入ると、艦長は正面にある巨大モニターを指差した。宇宙が映し出されているそれは、いつもと変わらない。
「君に通信があったんだが……ラナフ号艦長のタルトは知ってるな?彼女とはどう言う関係なんだ?」
「え……?フラムの友人です。彼女が何か」
艦長が何を言わんとしているか分からず、リチャードは手を腰の後ろで組んだまま彼を見つめた。回りのクルー達も、自分を観察するように見ている。
「君をラナフ号まで寄越さなければ、当艦を攻撃すると言ってきてる。痴情の縺れか?」
苛立ちを含む艦長の声に、リチャードは慌てた。痴情の縺れなどない。
「いえ、断じてそのような事はありません……!何かの間違いではないのですか?」
「とにかく……!」
艦長はゆっくり席を立つと、リチャードの前まで歩いてきた。
「ラナフ号はここから小型宇宙船に乗れば、1時間で到着する場所に停滞しているそうだ」
早く行って処理して来い、と言わんばかりの貫禄に、リチャードはただ敬礼して答えるしかなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
狭間の世界
aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。
記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、
過去の彼を知る仲間たち、、、
そして謎の少女、、、
「狭間」を巡る戦いが始まる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
空のない世界(裏)
石田氏
SF
働きながら書いてるので更新は不定期です。
〈8月の作者のどうでもいいコメント〉
『本格的な夏になりました。学校では夏休み、部活に励む学生、夏の催し夏祭り……ですが、楽しいことばかりではない夏でもある。山のようにある宿題、熱中症等健康悪化、夏休みのない大人。何が楽しくて、こんな暑い中祭りに行くんだと言いながら、祭りに行く自分。まぁ、色々あると思いますが、特に脱水には気をつけましょう。水分不足で、血液がどろどろになると、脳梗塞の原因になります。皆、熱中症だけじゃないんだよ。ってことで、今月も仕事しながら執筆頑張ります』
完全に趣味で書いてる小説です。
随時、概要の登場人物更新します。
※すいません、途中字数オーバーがありますが、御承知ください。(アルファポリス様更新前の上限一万字の時のことです)
ーUNIVERSEー
≈アオバ≈
SF
リミワール星という星の敗戦国で生きながらえてきた主人公のラザーは、生きるため、そして幸せという意味を知るために宇宙組織フラワーに入り、そこで出来た仲間と共に宇宙の平和をかけて戦うSFストーリー。
毎週火曜日投稿中!
Moon Light
たける
SF
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【あらすじ】
タイムワープに失敗したアルテミス号が漂着したのは、80年前の【地球】だった。
彼等は無事、自分達の世界に戻る事が出来るのか……?
宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる