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2日目
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ホテルに着いたのは、昼前だった。すっかり太陽は高い場所に昇っていて、年末だと言うのに日射しが暖かい。
ホテルの自動ドアを潜ると、フロントに立つ背の低い男に声をかけた。その時、早瀬タクミの友人の坂井だと──そう告げるだけで、人間は簡単に騙されてしまうが、これは存在が固定する前にのみ有効な方法だ──名乗った。
「早瀬様は、お出かけですね」
手元に置いてある、分厚いファイルをめくるなり、男は視線も上げずにそう言った。
「どこへ」
私がそう尋ねると、男の視線が漸く持ち上がって目が合った。垂れた目の、温厚そうな顔立ちをしている。
「さぁ……私どもは、行き先までは存じ上げませんので……」
知っていたとしても、教えるつもりはないと、垂れた目が語っているようだったので、仕方なく私はまた、ラジオ局の方へ向かう事にした。今回は、なかなか担当相手に会えないなと、思いながら。
ホテルの自動ドアを潜ると、フロントに立つ背の低い男に声をかけた。その時、早瀬タクミの友人の坂井だと──そう告げるだけで、人間は簡単に騙されてしまうが、これは存在が固定する前にのみ有効な方法だ──名乗った。
「早瀬様は、お出かけですね」
手元に置いてある、分厚いファイルをめくるなり、男は視線も上げずにそう言った。
「どこへ」
私がそう尋ねると、男の視線が漸く持ち上がって目が合った。垂れた目の、温厚そうな顔立ちをしている。
「さぁ……私どもは、行き先までは存じ上げませんので……」
知っていたとしても、教えるつもりはないと、垂れた目が語っているようだったので、仕方なく私はまた、ラジオ局の方へ向かう事にした。今回は、なかなか担当相手に会えないなと、思いながら。
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