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護衛の本当の理由をノッドは知らない。ただ必要だと言われただけだ。
今までの全てがそうだ。
知識、能力。
全て必要だと言われ、学び装備した。だが結局、能力は危険だから、と言って使わせて貰えない。装備の意味はないのではないか、と言った事があったが、全てリモコンをチラつかされて終わりだった。
陽射しが高い位置に昇り、蝉がわんわんと煩く叫び始めた頃、階段をフィックスが上がって来た。その顔は暗く重苦しい。
「話は何だったんだ?」
読んでいた書物を閉じ、顔を上げる。フィックスはノッドの向かいに座ると、じっと見つめてきた。
「君の能力を教えて貰ったよ。凄いな、あんな……」
「危険な……って?」
テレパシーは使えないが、少し考えれば分かる事だ。
「あぁ……その能力のせいで、君は外の世界を知らない」
研究者達はリモコンで能力を制御している割に、ノッドを図書館から出そうとはしなかった。多分、心のどこかで恐れているのだろう。
──もしリモコンが利かなくなったら?
彼等は、ノッドを作った割に、腫れ物に触れるような扱いをしてきた。それが気に入らない。
このフィックスと言う男もきっと、自分を恐れるだろう。
意思を持ったサイボーグ。
兵器を携えている、人間に近いサイボーグ。
「そうだな。もう20年はこの中だ」
窓の外を見遣る。
雀が飛び交い、車が時折行き過ぎる。
「私は君の護衛だが……」
そこで言葉を切ったフィックスは、ノッドと同じように視線を表に向けた。
「何だよ。友達だって言うのか?」
文章からは、それを感じる事は出来ない。だからノッドには、それが何なのか理解出来ていなかった。
「ん……少し違うな。君とは歳も離れているし」
「じゃあ、何だってんだよ?父親気取りでもするつもりか?だったら」
「俺は君の味方よ」
ノッドの言葉を遮り、フィックスは力付くそう言った。その声に、閉じた書物の中の一節を思い出す。
「護衛は明日からだから、また朝一番に来るよ」
そう言って立ち上がったフィックスは、何も言えないでいるノッドに片手を上げると、そのまま階段を下りて行った。
味方……?どう言う意味だろう。分からないまま、また書物を開く。と、カーディナルがノッドを迎えた。
美しい赤。力強い囀り。
──欲しい。
そう思ったノッドは、そのページを破っていた。
エンジン音が遠ざかる。
「カーディナル」
そう聞こえゆっくりと振り返ると、そこに自分が立っていた。
今までの全てがそうだ。
知識、能力。
全て必要だと言われ、学び装備した。だが結局、能力は危険だから、と言って使わせて貰えない。装備の意味はないのではないか、と言った事があったが、全てリモコンをチラつかされて終わりだった。
陽射しが高い位置に昇り、蝉がわんわんと煩く叫び始めた頃、階段をフィックスが上がって来た。その顔は暗く重苦しい。
「話は何だったんだ?」
読んでいた書物を閉じ、顔を上げる。フィックスはノッドの向かいに座ると、じっと見つめてきた。
「君の能力を教えて貰ったよ。凄いな、あんな……」
「危険な……って?」
テレパシーは使えないが、少し考えれば分かる事だ。
「あぁ……その能力のせいで、君は外の世界を知らない」
研究者達はリモコンで能力を制御している割に、ノッドを図書館から出そうとはしなかった。多分、心のどこかで恐れているのだろう。
──もしリモコンが利かなくなったら?
彼等は、ノッドを作った割に、腫れ物に触れるような扱いをしてきた。それが気に入らない。
このフィックスと言う男もきっと、自分を恐れるだろう。
意思を持ったサイボーグ。
兵器を携えている、人間に近いサイボーグ。
「そうだな。もう20年はこの中だ」
窓の外を見遣る。
雀が飛び交い、車が時折行き過ぎる。
「私は君の護衛だが……」
そこで言葉を切ったフィックスは、ノッドと同じように視線を表に向けた。
「何だよ。友達だって言うのか?」
文章からは、それを感じる事は出来ない。だからノッドには、それが何なのか理解出来ていなかった。
「ん……少し違うな。君とは歳も離れているし」
「じゃあ、何だってんだよ?父親気取りでもするつもりか?だったら」
「俺は君の味方よ」
ノッドの言葉を遮り、フィックスは力付くそう言った。その声に、閉じた書物の中の一節を思い出す。
「護衛は明日からだから、また朝一番に来るよ」
そう言って立ち上がったフィックスは、何も言えないでいるノッドに片手を上げると、そのまま階段を下りて行った。
味方……?どう言う意味だろう。分からないまま、また書物を開く。と、カーディナルがノッドを迎えた。
美しい赤。力強い囀り。
──欲しい。
そう思ったノッドは、そのページを破っていた。
エンジン音が遠ざかる。
「カーディナル」
そう聞こえゆっくりと振り返ると、そこに自分が立っていた。
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