63 / 75
第12章
3.
しおりを挟む
黒いベンツに乗せられ連れて来られた先は──盗撮した時に何度か見た──大きくどっしりとしたたたずまいの、1軒家だった。ドーズの屋敷よりは小さいが、それでも十分大きいので屋敷と呼んでもいいだろう。
「ここだ」
そう言ってカルロスは車から降りると、まだ後部座席に座っているクレイズへと、手を差し出した。その手を取り車から降りると、カルロスはそのままクレイズを家の中へ連れて入った。
玄関を潜り、廊下を歩くとリビングになっている。ブレイブシティでは流行っている建て方なのだろう。途中いくつか扉があり、部屋があるようだった。
「妻の姿が見えないが、1人で暮らしているのか?」
そうクレイズが尋ねると、カルロスは小さく微笑んだ。
「ここは別宅みたいなものだ。妻は自宅の方にいる」
いくつか家があるのだなと思いながら、クレイズは取り敢えず黒い革張りのソファに腰を下ろした。その隣にカルロスが座ると、肩を抱いてくる。
「ゲイナーに会うな、とは言わんが、これからは自分の行動で誰がどうなるか、よく考えてから行動するんだな」
それはまるで、脅迫のような言葉だった。この家から出るな、と言っているようなものだった。クレイズはカルロスに頷いて見せると、病院で怪我をさせられたゲイナーの姿を思い返した。
カルロスは、やる、と言えばやる男だ。従わないまでも、逆らえばゲイナーは更に傷つく事になる。
「この家に住め、と、言っているのか?」
そう言うと、カルロスは返事の代わりに唇を重ねて来た。
深い、舌を絡ませる口づけに目を閉じ、クレイズはされるがままになっていた。暫く、ここにいるのもいい。そうすれば、カルロスの行動も監視出来る。そう言い聞かせ、クレイズはカルロスに腕を絡ませた。
「愛人は勿論いるんだろ?その愛人はここへは来るのか?」
唇が放れると、クレイズは尋ねてみた。するとカルロスは、クレイズをソファへ押し倒すと優しく微笑んだ。
「ここへは滅多に来ない。妻もな」
完全に2人きり、と言う訳か。その方が下手な気を使わなくて済む。
「で、やはり愛人は100人程いるのか?」
そう言うと、カルロスは微笑んだままクレイズの服を乱した。黒いコートが床に落とされ、セーターを胸の上まで上げられる。
「数えた事はないが、そのぐらいはいるんじゃないか?」
「そんなにいたら、名前と顔が一致しないんじゃないのか?」
服を脱がされ肌に触れられる。最初に感じた悪寒は既になく、体が熱く反応した。
「さぁな、会った事もない奴もいる。まぁ、妻は愛人達とは仲がいいらしい」
そう言うと、もう黙れ、と言わんばかりにカルロスは再び唇を重ねた。クレイズはそれを受け入れると、言葉を飲み込んだ。
妻を、愛しているのか?そう尋ねてみたかったが、次の機会にしようと思った。
「相変わらず綺麗だな、クレイズ」
そんな褒め言葉も、胡散臭く聞こえる。以前嘘はついていないと言っていたが、クレイズはまだ疑っていた。
「その台詞、何人の愛人に言ってやったんだ?」
またカルロスは笑った。どうもはぐらかすのがうまいらしい。クレイズは、それ以上カルロスに質問するのは止めた。
「お前はいい女だ」
そう言ってカルロスは、丁寧に愛撫を施して行く。指先の動きや吐息が、クレイズをその気にさせて行った。
「はっ……ぅ……」
カルロスが言ったように、自分はすっかり女だ。認めたくない事実だが、認めざるをえない。カルロスに抱かれ、喜ぶ自分はもう女だ。
クレイズは、そっとため息を漏らした。
「ここだ」
そう言ってカルロスは車から降りると、まだ後部座席に座っているクレイズへと、手を差し出した。その手を取り車から降りると、カルロスはそのままクレイズを家の中へ連れて入った。
玄関を潜り、廊下を歩くとリビングになっている。ブレイブシティでは流行っている建て方なのだろう。途中いくつか扉があり、部屋があるようだった。
「妻の姿が見えないが、1人で暮らしているのか?」
そうクレイズが尋ねると、カルロスは小さく微笑んだ。
「ここは別宅みたいなものだ。妻は自宅の方にいる」
いくつか家があるのだなと思いながら、クレイズは取り敢えず黒い革張りのソファに腰を下ろした。その隣にカルロスが座ると、肩を抱いてくる。
「ゲイナーに会うな、とは言わんが、これからは自分の行動で誰がどうなるか、よく考えてから行動するんだな」
それはまるで、脅迫のような言葉だった。この家から出るな、と言っているようなものだった。クレイズはカルロスに頷いて見せると、病院で怪我をさせられたゲイナーの姿を思い返した。
カルロスは、やる、と言えばやる男だ。従わないまでも、逆らえばゲイナーは更に傷つく事になる。
「この家に住め、と、言っているのか?」
そう言うと、カルロスは返事の代わりに唇を重ねて来た。
深い、舌を絡ませる口づけに目を閉じ、クレイズはされるがままになっていた。暫く、ここにいるのもいい。そうすれば、カルロスの行動も監視出来る。そう言い聞かせ、クレイズはカルロスに腕を絡ませた。
「愛人は勿論いるんだろ?その愛人はここへは来るのか?」
唇が放れると、クレイズは尋ねてみた。するとカルロスは、クレイズをソファへ押し倒すと優しく微笑んだ。
「ここへは滅多に来ない。妻もな」
完全に2人きり、と言う訳か。その方が下手な気を使わなくて済む。
「で、やはり愛人は100人程いるのか?」
そう言うと、カルロスは微笑んだままクレイズの服を乱した。黒いコートが床に落とされ、セーターを胸の上まで上げられる。
「数えた事はないが、そのぐらいはいるんじゃないか?」
「そんなにいたら、名前と顔が一致しないんじゃないのか?」
服を脱がされ肌に触れられる。最初に感じた悪寒は既になく、体が熱く反応した。
「さぁな、会った事もない奴もいる。まぁ、妻は愛人達とは仲がいいらしい」
そう言うと、もう黙れ、と言わんばかりにカルロスは再び唇を重ねた。クレイズはそれを受け入れると、言葉を飲み込んだ。
妻を、愛しているのか?そう尋ねてみたかったが、次の機会にしようと思った。
「相変わらず綺麗だな、クレイズ」
そんな褒め言葉も、胡散臭く聞こえる。以前嘘はついていないと言っていたが、クレイズはまだ疑っていた。
「その台詞、何人の愛人に言ってやったんだ?」
またカルロスは笑った。どうもはぐらかすのがうまいらしい。クレイズは、それ以上カルロスに質問するのは止めた。
「お前はいい女だ」
そう言ってカルロスは、丁寧に愛撫を施して行く。指先の動きや吐息が、クレイズをその気にさせて行った。
「はっ……ぅ……」
カルロスが言ったように、自分はすっかり女だ。認めたくない事実だが、認めざるをえない。カルロスに抱かれ、喜ぶ自分はもう女だ。
クレイズは、そっとため息を漏らした。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる