Dark Moon

たける

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3.

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苛立ちだけが募り、この議会の意味さえ疑い始めた。

「もう2時間になるぞ。なぁ艦長、そろそろ覚悟した方がいいんじゃないか?」

ワイズがそう言った。それはジョシュも薄々考えていた事だったが、敢えてそれを口に出されると、反論したくなる。

「覚悟?覚悟だって?何のだ?優勝な副艦長を失う覚悟か?それとも、友人を失う覚悟か?」

珍しく、ジョシュの口調に怒りが篭っている。いつだってお気楽なこの友人は、どんな窮地に陥っても冷静さを欠いた事はなかった。だが、今はそうではない。冷静さを失う1歩手前、と言ったところだ。

「ジョシュ、冷静になれ。辛いだろうが、いつまで待つつもりだ?そう長く水の底に沈んでられないぞ」

親友だからこそ、時には苦言を口にしてやらなければならない時はある。それはワイズがジョシュより年上、と言う事もあったが、誰より彼を知る者として、当然の意見だ。
ジョシュは、苛立ちをぶつけてしまった事を後悔していた。謝らなければ。そう思いワイズを見返す。と、何も言う前に、彼は頷いて見せた。言う必要はない。そう親友は言っている。
ジョシュは深呼吸をし、ゆっくりと瞬きをした。
自分は、アルテミス号の艦長として、冷静な対処をしなければならない。どんな危機的状況に陥っても、それが親友の生命的危機であっても、だ。
厳しい訓練を思い出す。
今は空席になっている副艦長の席を振り返る。
きっと戻ってくるさ。そう自身に言い聞かせ、ジョシュは指令席へと移動した。

「全クルーに命令する。ただちに出発準備を!」

ホップスは立ち上がり、自分の席に着いた。タッチパネルを叩き、艦内の状況を確認する。

「艦長、準備は調っています」

と、ホップス。

「エンジンも問題なし」

カールも報告し、ジョシュは操舵士へと向き直った。

「スラスター解除、いつでも発進出来ます艦長」

デルマは言った。

「では……」

まだ躊躇いがある。だがジョシュは、すぐにそれを胸の内に押し込めると、指令を出した。

「ワープ開始!」




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