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2章
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教会孤児院に通い出して二日間が過ぎた。事件の進展もなくいつものようにレイ様を見送った後にハンナとリクと教会孤児院に向かう。
あれから孤児院に魔力の訓練のために通うことをレイ様に話したら笑顔で「お嬢様が聞き込みするにも限界があると思うし気にしないで行っといで~」と快く承諾してくれた。
手伝うつもりだったのが結局レイ様頼りになって申し訳ないと謝るとレイ様は「元からそんなに期待してないって~」と爽やかに言われてしまった……。
リクにも教会孤児院でしばらく通うことを告げると、初日の授業風景を隠れてみていたのもあってかこちらも承諾してくれた。屋敷でリクに教わっていたこともあって少し気まずい気持ちもあったが「私も人に教えるのはあまり上手ではないのでマリウス神父の教え方は参考になります」とあまり気にしていない様子だったのに少しホッとした。
歩きながらいつものように教会へのお土産を屋台で購入する。今日は果物屋台が目に入ったので店主のおすすめのオレンジを購入した。試食でもらったカットされたオレンジをかじりながら歩く。最初こそ食べ歩きに物言いたげだったハンナも、とうとう諦めたようで何も言わずに今ではオレンジを必死にかじっている。
ハンカチで手と口を拭きながらふと思い立ったことを口に出す。
「そういえば、レイ様が言っていたけど結局今のところ一人目と二人目の情報はないままみたいね」
「一体どこからそんな噂が立ったのでしょうかね」
ハンナが不思議そうに首を傾げた。自警団の団長のローランドさんも聞き込みを見回りと並行して行っているそうだが、キヨラの町の住民の誰もが一人目と二人目の噂の出どころはわからないらしい。
「ここまでくると一人目と二人目がいなかったかのように思えてくるわね」
思わずそうこぼすとリクは立ち止まってハッとした表情をして私を見上げた。
「一人目と二人目なんてもともと存在しなかったのではないでしょうか?」
「それってどういうこと?」
リクに聞き返すとリクは「確証は持てませんが……」と小さな声でつぶやいた。
「一人目と二人目の行方不明の話が作られた噂の可能性はないでしょうか」
「確かレイ様が一人目と二人目の噂が立ち始めたのは……一人目が一ヶ月前でその数日後に二人目の行方不明の噂が立ったって言っていたわね」
「ええ。正確な日付は分かりませんが三人目と四人目の行方不明だけ身元がわかっていてしかも二人ともピッタリと一週間を開けて行方がわからなくなったのも何か不自然な気がします」
「でも、誰かが故意に噂を流したと? でも、作られた噂を故意に流すなんてできるのかしら?」
首を傾げていると、リクが神妙な面持ちで私とハンナの顔をみた。
「精霊なら可能かもしれません」
思わず目を見開いて、ハンナと視線を交わした。ハンナも戸惑いを隠せないようだった。周りに人がいないことを確認してリクに小声でたずねた。
「人に噂を流すことのできる能力を持った精霊なんているの?」
「わかりません、精霊の能力は千差万別です。風魔法系統で噂話だけを人の耳に行き渡らせるかもしくは幻影系統の魔法でそういった出来事があったと人間に思い込ませるかなら……ただ、そうなると一ヶ月も前から噂を流す魔法なんて使ったとするとあまりに広域です。まず、そのような噂を流す魔法を継続して行うのは不可能ですし、人間と契約している精霊でなければ魔力は枯渇してしまいます」
精霊と契約している人間の仕業? なんのために?
「精霊が子供をさらうなんてことを流すことで何の得があるのかしら? この町にとってはマイナスになりえるかもしれないのに」
噂を流すことで逆に目を向けさせたかったとか? この町の人じゃない外部の人間からの接触を望んでる?
そこまで考えるも頭の中が霞みがかったようにわからなくなる。このモヤモヤした感じがひっかかる。
脳裏に一人の少年が浮かんだ。何の気無しに口に出してみる。
「もしかしてカイ?」
不自然に行方不明になった彼がもしかして自作自演でいなくなったとしたら。もしかして精霊の力を借りていたとしたら。友達であるヨシュアも共謀していたとしたら。
するとハンナが静かに「ですが」と口に出した。
「カイという少年は精霊召喚の儀をまだ行っていません」
精霊召喚の儀をカイは王都の教会に入ってから教会で行う予定だったという。
「じゃあ、他の誰かが?」
「アリアお嬢様……このあいだの少年を覚えていますか?」
リクに言われてクズ石となった魔石を持ち去った少年の姿が浮かぶ。
「あ! リクが前に精霊の色を纏わせていたって……」
そういうとリクはコクリと頷いた。
「可能性はないと言い切れない以上、頭の隅に留めておいた方がよろしいかと」
「でも、あの少年はどうみても平民のようだったけど……そういえばこの町で平民の魔力の多い子供は精霊召喚の儀はどうしているの?」
「この教会では精霊召喚の儀は行うことはできないそうなので隣町の教会までいくしかないようです」
ハンナがマリウス神父から聞いた話によると、ここには精霊召喚の儀を行えるほどの人手が足りないこと、儀式に使用する魔導書がないため行っていないという。そこまで聞くと三人とも黙り込む。
「もしくははぐれ精霊と契約する……」
頭に浮かんだ言葉を口に出したとき、誰かが息を呑んだのがわかった。
あれから孤児院に魔力の訓練のために通うことをレイ様に話したら笑顔で「お嬢様が聞き込みするにも限界があると思うし気にしないで行っといで~」と快く承諾してくれた。
手伝うつもりだったのが結局レイ様頼りになって申し訳ないと謝るとレイ様は「元からそんなに期待してないって~」と爽やかに言われてしまった……。
リクにも教会孤児院でしばらく通うことを告げると、初日の授業風景を隠れてみていたのもあってかこちらも承諾してくれた。屋敷でリクに教わっていたこともあって少し気まずい気持ちもあったが「私も人に教えるのはあまり上手ではないのでマリウス神父の教え方は参考になります」とあまり気にしていない様子だったのに少しホッとした。
歩きながらいつものように教会へのお土産を屋台で購入する。今日は果物屋台が目に入ったので店主のおすすめのオレンジを購入した。試食でもらったカットされたオレンジをかじりながら歩く。最初こそ食べ歩きに物言いたげだったハンナも、とうとう諦めたようで何も言わずに今ではオレンジを必死にかじっている。
ハンカチで手と口を拭きながらふと思い立ったことを口に出す。
「そういえば、レイ様が言っていたけど結局今のところ一人目と二人目の情報はないままみたいね」
「一体どこからそんな噂が立ったのでしょうかね」
ハンナが不思議そうに首を傾げた。自警団の団長のローランドさんも聞き込みを見回りと並行して行っているそうだが、キヨラの町の住民の誰もが一人目と二人目の噂の出どころはわからないらしい。
「ここまでくると一人目と二人目がいなかったかのように思えてくるわね」
思わずそうこぼすとリクは立ち止まってハッとした表情をして私を見上げた。
「一人目と二人目なんてもともと存在しなかったのではないでしょうか?」
「それってどういうこと?」
リクに聞き返すとリクは「確証は持てませんが……」と小さな声でつぶやいた。
「一人目と二人目の行方不明の話が作られた噂の可能性はないでしょうか」
「確かレイ様が一人目と二人目の噂が立ち始めたのは……一人目が一ヶ月前でその数日後に二人目の行方不明の噂が立ったって言っていたわね」
「ええ。正確な日付は分かりませんが三人目と四人目の行方不明だけ身元がわかっていてしかも二人ともピッタリと一週間を開けて行方がわからなくなったのも何か不自然な気がします」
「でも、誰かが故意に噂を流したと? でも、作られた噂を故意に流すなんてできるのかしら?」
首を傾げていると、リクが神妙な面持ちで私とハンナの顔をみた。
「精霊なら可能かもしれません」
思わず目を見開いて、ハンナと視線を交わした。ハンナも戸惑いを隠せないようだった。周りに人がいないことを確認してリクに小声でたずねた。
「人に噂を流すことのできる能力を持った精霊なんているの?」
「わかりません、精霊の能力は千差万別です。風魔法系統で噂話だけを人の耳に行き渡らせるかもしくは幻影系統の魔法でそういった出来事があったと人間に思い込ませるかなら……ただ、そうなると一ヶ月も前から噂を流す魔法なんて使ったとするとあまりに広域です。まず、そのような噂を流す魔法を継続して行うのは不可能ですし、人間と契約している精霊でなければ魔力は枯渇してしまいます」
精霊と契約している人間の仕業? なんのために?
「精霊が子供をさらうなんてことを流すことで何の得があるのかしら? この町にとってはマイナスになりえるかもしれないのに」
噂を流すことで逆に目を向けさせたかったとか? この町の人じゃない外部の人間からの接触を望んでる?
そこまで考えるも頭の中が霞みがかったようにわからなくなる。このモヤモヤした感じがひっかかる。
脳裏に一人の少年が浮かんだ。何の気無しに口に出してみる。
「もしかしてカイ?」
不自然に行方不明になった彼がもしかして自作自演でいなくなったとしたら。もしかして精霊の力を借りていたとしたら。友達であるヨシュアも共謀していたとしたら。
するとハンナが静かに「ですが」と口に出した。
「カイという少年は精霊召喚の儀をまだ行っていません」
精霊召喚の儀をカイは王都の教会に入ってから教会で行う予定だったという。
「じゃあ、他の誰かが?」
「アリアお嬢様……このあいだの少年を覚えていますか?」
リクに言われてクズ石となった魔石を持ち去った少年の姿が浮かぶ。
「あ! リクが前に精霊の色を纏わせていたって……」
そういうとリクはコクリと頷いた。
「可能性はないと言い切れない以上、頭の隅に留めておいた方がよろしいかと」
「でも、あの少年はどうみても平民のようだったけど……そういえばこの町で平民の魔力の多い子供は精霊召喚の儀はどうしているの?」
「この教会では精霊召喚の儀は行うことはできないそうなので隣町の教会までいくしかないようです」
ハンナがマリウス神父から聞いた話によると、ここには精霊召喚の儀を行えるほどの人手が足りないこと、儀式に使用する魔導書がないため行っていないという。そこまで聞くと三人とも黙り込む。
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