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予期せぬ来客
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「リリィ、フェアファクスの騎士たちの滞在が終わるまで、私がいない時はできるだけ周りに気を付けて。また言いがかりをつけられて、君が傷つくのは見ていられない」
「私は、大丈夫です。慣れてますから」
ロータスの言葉を聞いて、オルフィロスは悲しそうな顔をする。
「――慣れてるって、そんなのはダメだ。君は、人から罵倒されるような人じゃない。やはり、今すぐ殺し……、処分して……」
ロータスは慌てて、オルフィロスの口を手で押さえる。言い換えても意味同じっ!
「そんな発言はダメですよ」
オルフィロスは、ロータスの柔らかくほっそりとした手を握ると、何度もキスをする。
「私が嫌なんだ。あの無礼な輩が君に何かしたらと思うと、気が狂いそうになる」
「オルフィが、心配なら私はここから一歩も外にでませんから」
オルフィロスは、彼女の言葉にはっと一瞬息を呑むと、ロータスを抱き寄せる。
「何かあったら、護衛騎士か侍女に言って。監視されているようで嫌だと思うけど、彼らの滞在中は、一人ではでかけないで。必ず誰か付き添いをつけて」
「分かりました」
神殿の敷地の奥にある王族の居住エリア、ハウス・メドウは、一軒家で、王城と比べると小さいが心地よい庭園がついており、神殿の敷地外へ出られなくても窮屈に感じることはなかった。
必要最低限の使用人と騎士がいたが、ここでの暮らしはまるで一軒家で暮らす新婚夫婦のようだった。
緑の蔦が絡まる赤茶の煉瓦造りの建物の入口で、イチャイチャと押し問答をしながら、お互いの身体をあちこち触る二人の様子を使用人と騎士たちは微笑ましげに見守っている。
「あー、もう何もかも投げ捨てて、リリィとのんびりできたらな」
銀の髪が太陽の光で輝き、その瞳はラピスラズリの様に深みのある濃い青。神官服の銀色の光沢と相まって、この世に現れたリュミエール神の姿だと言われても信じてしまいそうな、美しい人が、自分の将来の夫だなんて未だに信じられない。
自分と離れたくないと子どもの様に唇を尖らせるギャップに、愛おしさを感じる。
「ダメですよ。私がオルフィをたぶらかして、怠け者にした悪女だと言われちゃいますから」
「リリィが悪女、それもいい……。仕事を頑張ったら、悪女のリリィが僕を今晩出迎えてくれる?」
ロータスは、くすくすと笑いながら答える。
「はい。悪女のリリィが、オルフィにご褒美をあげますね」
「約束だよ」
オルフィロスはすっと小指を差し出すと、ロータスも小指を絡める。約束の指切りをすると、名残惜しそうにオルフィロスは神殿へと向かった。
プリマヴェル城での生活より、馴染みがある生活のような気がする。マーヴィン侯爵邸での生活は、現実味が全くなかった。
心地よく思うのはやはり前世での生活に近い環境なのかもしれない。
ロータスは、オルフィロスが見えなくなるまで見送ると、屋敷の中に戻る。
「ロータス様、本日は十時から図書館で歴史の授業になっております。午後のご予定は特にございません。外出されるようでしたら、私か護衛騎士がついていきますので、お申し付け下さい」
「ありがとう。でも午後はこちらでのんびりしようと思うの」
「承知致しました」
オルフィロスが仕事をしている間、王太子妃になるための教育を各地の主要な神殿で受けることにしていた。主にこの国での一般常識と王族としてのマナーを習っていた。プリマヴェルの歴史や国土について学び、空いた時間には魔法書を読んで魔法の練習をして過ごしていた。
「ロータス様、少しお聞きしたいことがあるのですが」
珍しくいつもは必要最低限のことしか話さない使用人のロベリアが話しかけてきた。
「何かしら?」
「……あの……、たまに殿下と小指を絡めていらっしゃいますが、あれはどう言った意味があるのでしょうか?」
「え……? 指切りを知らないの?」
「あれは指切りと言うのですね。指を、切る……とは何とも物騒な名前なのです」
「何か約束をする時にする、ちょっとおまじないのようなものよ」
「そうなのですね。プリマヴェルにはない仕草でしたので、気になっておりました」
「……そうなの」
指切りの習慣はプリマヴェルにはないのか。これまで普通にしていたけど、オルフィロスも戸惑った様子がなかったから、フェアファクスでは一般的な仕草だったのだろう。
フェアファクスでも、前世で使っていた単語や行動が無意識に出てしまい、他人を当惑させてしまうことがあった。
変に思われないよう気をつけないと。
「ロータス様、準備ができました」
ぼんやりと考えていると、ロベリアが午前の授業の教材を一式揃えて持ってきた。ロータスはお礼を言い、図書館へ向かった。
◇◇◇
午前の授業が終わったが、昨日のこともあり、外出する気が起きない。人から悪意を向けられることに慣れているとはいえ、悲しく傷ついた気持ちになるのはできれば避けたい。
しばらく落ち着くまで、部屋の中で過ごしてもいいのかもしれない。
ハウス・メドウは、一階がホールや貴賓室、応接室になっており、二階はプライベートな空間となっていた。
二階のリビングのソファーにゆったりと座り、歴史書を読んでいると、コツコツと窓を叩く音がした。音のする方を見ると一羽のワシが止まっている。
頭部は白く、身体は焦茶の鋭い黄色のクチバシを持っていた。瞳の色は、めずらしく銀灰色だった。
ワシは、ロータスと目が合うと飛び立つどころか、更にコツコツと窓を叩く。
不審に思いながらも窓を開いてみると、大きな羽を広げて部屋の中に入ってきてしまった。
え!? な、何で、中に入ってくるの⁉︎
近くで見るワシの大きさに驚き、扉の外の騎士に対処してもらおうと、背を向けて走り出そうとする。しかし背後から口を塞がれ腰の辺りをがっちりと拘束された。
「――え?」
「このような無礼な形で会いに来てしまってすまない。昨日の謝罪と話をしたくて」
視線を後ろに向けると、イグニスがロータスの身体を背後から抱きしめていた。怖くなり逃げようと四肢を動かすが、全く身動きが取れない。
先ほど目の前にいた大ワシは、二メートル弱の巨体を持つ、フェアファクスの騎士団長イグニス・ガルシアに姿を変えていた。
……そうだ。イグニスは変身魔法でワシになることができる設定だった。魔王軍との対局では常に空から敵の布陣を偵察し、重要拠点を撃破することが彼の能力で可能だった。
「どうか少しだけ時間をとっていただけないだろうか」
ロータスの口を塞ぐゴツゴツとした大きな手は、容易く自分の首を折ることができるだろう。丁寧に懇願する言葉とは裏腹にイグニスの腕には脅迫するかのように力が入る。
ロータスは抵抗を諦めて、こくこくと頷く。
「私は、大丈夫です。慣れてますから」
ロータスの言葉を聞いて、オルフィロスは悲しそうな顔をする。
「――慣れてるって、そんなのはダメだ。君は、人から罵倒されるような人じゃない。やはり、今すぐ殺し……、処分して……」
ロータスは慌てて、オルフィロスの口を手で押さえる。言い換えても意味同じっ!
「そんな発言はダメですよ」
オルフィロスは、ロータスの柔らかくほっそりとした手を握ると、何度もキスをする。
「私が嫌なんだ。あの無礼な輩が君に何かしたらと思うと、気が狂いそうになる」
「オルフィが、心配なら私はここから一歩も外にでませんから」
オルフィロスは、彼女の言葉にはっと一瞬息を呑むと、ロータスを抱き寄せる。
「何かあったら、護衛騎士か侍女に言って。監視されているようで嫌だと思うけど、彼らの滞在中は、一人ではでかけないで。必ず誰か付き添いをつけて」
「分かりました」
神殿の敷地の奥にある王族の居住エリア、ハウス・メドウは、一軒家で、王城と比べると小さいが心地よい庭園がついており、神殿の敷地外へ出られなくても窮屈に感じることはなかった。
必要最低限の使用人と騎士がいたが、ここでの暮らしはまるで一軒家で暮らす新婚夫婦のようだった。
緑の蔦が絡まる赤茶の煉瓦造りの建物の入口で、イチャイチャと押し問答をしながら、お互いの身体をあちこち触る二人の様子を使用人と騎士たちは微笑ましげに見守っている。
「あー、もう何もかも投げ捨てて、リリィとのんびりできたらな」
銀の髪が太陽の光で輝き、その瞳はラピスラズリの様に深みのある濃い青。神官服の銀色の光沢と相まって、この世に現れたリュミエール神の姿だと言われても信じてしまいそうな、美しい人が、自分の将来の夫だなんて未だに信じられない。
自分と離れたくないと子どもの様に唇を尖らせるギャップに、愛おしさを感じる。
「ダメですよ。私がオルフィをたぶらかして、怠け者にした悪女だと言われちゃいますから」
「リリィが悪女、それもいい……。仕事を頑張ったら、悪女のリリィが僕を今晩出迎えてくれる?」
ロータスは、くすくすと笑いながら答える。
「はい。悪女のリリィが、オルフィにご褒美をあげますね」
「約束だよ」
オルフィロスはすっと小指を差し出すと、ロータスも小指を絡める。約束の指切りをすると、名残惜しそうにオルフィロスは神殿へと向かった。
プリマヴェル城での生活より、馴染みがある生活のような気がする。マーヴィン侯爵邸での生活は、現実味が全くなかった。
心地よく思うのはやはり前世での生活に近い環境なのかもしれない。
ロータスは、オルフィロスが見えなくなるまで見送ると、屋敷の中に戻る。
「ロータス様、本日は十時から図書館で歴史の授業になっております。午後のご予定は特にございません。外出されるようでしたら、私か護衛騎士がついていきますので、お申し付け下さい」
「ありがとう。でも午後はこちらでのんびりしようと思うの」
「承知致しました」
オルフィロスが仕事をしている間、王太子妃になるための教育を各地の主要な神殿で受けることにしていた。主にこの国での一般常識と王族としてのマナーを習っていた。プリマヴェルの歴史や国土について学び、空いた時間には魔法書を読んで魔法の練習をして過ごしていた。
「ロータス様、少しお聞きしたいことがあるのですが」
珍しくいつもは必要最低限のことしか話さない使用人のロベリアが話しかけてきた。
「何かしら?」
「……あの……、たまに殿下と小指を絡めていらっしゃいますが、あれはどう言った意味があるのでしょうか?」
「え……? 指切りを知らないの?」
「あれは指切りと言うのですね。指を、切る……とは何とも物騒な名前なのです」
「何か約束をする時にする、ちょっとおまじないのようなものよ」
「そうなのですね。プリマヴェルにはない仕草でしたので、気になっておりました」
「……そうなの」
指切りの習慣はプリマヴェルにはないのか。これまで普通にしていたけど、オルフィロスも戸惑った様子がなかったから、フェアファクスでは一般的な仕草だったのだろう。
フェアファクスでも、前世で使っていた単語や行動が無意識に出てしまい、他人を当惑させてしまうことがあった。
変に思われないよう気をつけないと。
「ロータス様、準備ができました」
ぼんやりと考えていると、ロベリアが午前の授業の教材を一式揃えて持ってきた。ロータスはお礼を言い、図書館へ向かった。
◇◇◇
午前の授業が終わったが、昨日のこともあり、外出する気が起きない。人から悪意を向けられることに慣れているとはいえ、悲しく傷ついた気持ちになるのはできれば避けたい。
しばらく落ち着くまで、部屋の中で過ごしてもいいのかもしれない。
ハウス・メドウは、一階がホールや貴賓室、応接室になっており、二階はプライベートな空間となっていた。
二階のリビングのソファーにゆったりと座り、歴史書を読んでいると、コツコツと窓を叩く音がした。音のする方を見ると一羽のワシが止まっている。
頭部は白く、身体は焦茶の鋭い黄色のクチバシを持っていた。瞳の色は、めずらしく銀灰色だった。
ワシは、ロータスと目が合うと飛び立つどころか、更にコツコツと窓を叩く。
不審に思いながらも窓を開いてみると、大きな羽を広げて部屋の中に入ってきてしまった。
え!? な、何で、中に入ってくるの⁉︎
近くで見るワシの大きさに驚き、扉の外の騎士に対処してもらおうと、背を向けて走り出そうとする。しかし背後から口を塞がれ腰の辺りをがっちりと拘束された。
「――え?」
「このような無礼な形で会いに来てしまってすまない。昨日の謝罪と話をしたくて」
視線を後ろに向けると、イグニスがロータスの身体を背後から抱きしめていた。怖くなり逃げようと四肢を動かすが、全く身動きが取れない。
先ほど目の前にいた大ワシは、二メートル弱の巨体を持つ、フェアファクスの騎士団長イグニス・ガルシアに姿を変えていた。
……そうだ。イグニスは変身魔法でワシになることができる設定だった。魔王軍との対局では常に空から敵の布陣を偵察し、重要拠点を撃破することが彼の能力で可能だった。
「どうか少しだけ時間をとっていただけないだろうか」
ロータスの口を塞ぐゴツゴツとした大きな手は、容易く自分の首を折ることができるだろう。丁寧に懇願する言葉とは裏腹にイグニスの腕には脅迫するかのように力が入る。
ロータスは抵抗を諦めて、こくこくと頷く。
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