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甘美な憂鬱、あるいは悪夢
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思考にぼんやりと霧がかかっている。
ひどい頭痛と体調不良にまともな判断ができているのか、時々不安になる。
ザカライアスは、眉間を強く指で揉む。艶めいていた黄金の髪は乱れ、スカイブルーの美しい瞳は真っ赤に充血している。絵物語から出てきたようだと言われる恵まれた容姿は失われていた。
それも仕方のないことだった。なぜなら机上の書類は日々積み上がり、一向に減らない。国のあちこちで魔獣の被害が出ており、騎士団や傭兵団、ギルドのハンターたちを配置しているが、焼け石に水であった。問題が問題を生み、被害が更なる被害を生んでいた。
魔王を倒したと浮かれている場合ではなかった。早々に他の問題にも着手すべきなのは分かっていたはずなのに。こんな時、ロータスが居てくれれば……。二人で危機を乗り越えることも困難ではなかったかも知れない。
ザカライアスは、冷たい水を頭からかけられたようにハッとする。
……居てくれれば一体何なのだと、自らの考えを打ち消すかのように頭を振る。
(私が、王命を無視して、死の森へ追いやったではないか。もう死んでいるに違いない)
インクまみれになった指をぎゅっと握りしめる。薄暗い森の中で、ロータスの死体が、魔獣に蹂躙されて、屠られている様子が頭に浮かぶ。額に脂汗が流れる。
どうしてこうなったのか。考えがうまくまとまらない。ロータスが生きていれば完璧な王太子妃になっただろう。お互いに気を遣い合い、よい国を築けることは明白だった。
(政略結婚だったが、ロータスのことを愛していた。それなのになぜ……私は)
ノック無しにドアがガチャリと開く。
「ザカリー、アリサが来たよ?」
むせかえるような甘い香りが、ザカライアスを包む。視線を上げると、救国の乙女アリサが半開きのドアから、ひょこりと半身をのぞかせている。
ピジョンブラッドルビーのような瞳は、人懐っこく潤み、サラサラとした黒髪は艶々と輝く。
心の奥底から、吐き気と共に愛おしさが込み上げてくる。
「アリサ、愛おしい私の乙女、こちらへおいで」
「うん!」
アリサは子ウサギのようにぴょこぴょこと跳ねながら、ザカライアスへ駆け寄ってくる。
ズキリと頭に痛みが走る。
「アリサ、お腹が大きくなってきているのだから、走ってはダメだ」
「だってぇー、ザカリーに会えたんだよ? 嬉しくてぇ」
アリサは、ザカライアスの膝の上にちょこりと座る。甘過ぎる濃い香りを肺いっぱいに吸い込む。
愛おしいと同時に湧き上がる強い嫌悪感は、一体何なのだろうか。そう思いながらザカライアスは、膝の上のアリサを後ろから、あたかも大切な人であるかのようにその柔らかな身体を抱き締める。しかし行動とは裏腹に悪寒が走り、全身に鳥肌が立つ。
ザカライアスは、アリサの腹を優しく撫でる。
「あっ、今動いたの分かりましたかぁ?」
アリサが丸い瞳で振り返りながら、彼を見上げる。
しかし、ザカライアスにはその胎動が全く分からなかった。アリサの腹は膨らんでいるが、ただそれだけだ。一度もその動きをこの手で感じたことはなかった。
「……かすかに……感じたかもしれない。すまない……。私はこういうことに疎いからな」
とっさに嘘をついた。
「もー、ザカリーったら。私たちの赤ちゃんなのですよ。もっと自分がお父様だとこの子に教えてあげてくださいな」
「……そうだな」
(本当に私の子なのか?)
けれどその疑問をなぜか直接ぶつけることができない。アリサが他の男たちと関係を持っているのは知っていた。昼に夜にと男を侍らせ、時には複数で睦み合ってきた。
「お仕事、忙しいのぉ?」
「ああ。各地で魔獣が侵入してきていてな。被害が広がっている」
「そうなんだぁ。大変ですねぇ」
足をパタパタと揺らしながら、他人事のようにアリサが言う。将来は王妃になると言うのにどうしてこうも国のことに無関心なのか。
「アリサ、国を守る魔法陣を王都の周りだけでもいいから、設置することはできないだろうか? 修復するだけでもいい」
「えー。無理ですよぉ。アリサ、難しい魔法式なんて分からないもん」
「ロータスは容易く魔法陣を作ることができた。君にもできるはずだろう? 魔王だって倒したじゃないか。救国の乙女の力をわずかでも使ってもらうことはできないだろうか」
「えー知らないよぉ。それにアリサはぁ、妊婦さんだもん。危ない場所なんか行けないでしょ。もうアリサ、一人の身体じゃあないんだもん」
「そうか……」
ザカライアスは、想定内の答えに心の中でため息をつく。魔法教育を受けていないアリサには、魔法陣を描くことは無理だ。そもそも国を守るという責任感が全くない。
「アリサはここで、ザカリーと生まれてくる子と幸せに暮らすの。ねっ、だからアリサのこと絶対に守って下さいね」
「……そう……だな」
アリサは「嬉しいっ」とザカライアスの頬にキスをする。手入れの行き届いた彼女の黒髪がザカライアスの手の甲をサラリと撫でる。
「これ以上お邪魔するのは悪いので、アリサは大人しくお部屋に戻っています。ザカリー、また夜ね?」
頬をバラ色に染めて、純真無垢な少女のように恥じらいながらアリサは執務室から出ていく。
部屋の中の張り詰めていた緊張が緩む。
彼女が出て行った後、ザカライアスは消毒液を染み込ませた布で頬と両手を綺麗に除菌する。そして窓を全開にし、部屋の空気を入れ替えると、気分が少しだけ良くなった。
依然として体調が悪い。頭痛がひどく、胃がムカムカとする。常に船酔いしているような気分だ。最近、テレンスも王城には来ない。マーヴィン侯爵の具合が悪く、田舎の領地での療養に付き合っているようだった。
騎士団長のイグニス・ガルシアは、魔獣討伐で被害地域を奔走しており、姿を見せない。
神官のオルフィロスは、魔王討伐の完遂とともに自国へ戻ってしまった。今は王太子として神聖プリマヴェル王国で公務をこなしていると言う。
あの時の仲間は今や散り散りとなり、ここには自分とアリサだけが残っている。
アリサを独り占めすることは、ずっと望んでいたことだ。他の男を近づかせたくないとずっと思っていた。
それが現実となった。しかし、これが自分の望んだ結果なのか……。いくら考えても答えは出なかった。
ロータス、どうして私たちはこうなってしまったのだ……。虚しい問いかけに応えるものはいない。
ひどい頭痛と体調不良にまともな判断ができているのか、時々不安になる。
ザカライアスは、眉間を強く指で揉む。艶めいていた黄金の髪は乱れ、スカイブルーの美しい瞳は真っ赤に充血している。絵物語から出てきたようだと言われる恵まれた容姿は失われていた。
それも仕方のないことだった。なぜなら机上の書類は日々積み上がり、一向に減らない。国のあちこちで魔獣の被害が出ており、騎士団や傭兵団、ギルドのハンターたちを配置しているが、焼け石に水であった。問題が問題を生み、被害が更なる被害を生んでいた。
魔王を倒したと浮かれている場合ではなかった。早々に他の問題にも着手すべきなのは分かっていたはずなのに。こんな時、ロータスが居てくれれば……。二人で危機を乗り越えることも困難ではなかったかも知れない。
ザカライアスは、冷たい水を頭からかけられたようにハッとする。
……居てくれれば一体何なのだと、自らの考えを打ち消すかのように頭を振る。
(私が、王命を無視して、死の森へ追いやったではないか。もう死んでいるに違いない)
インクまみれになった指をぎゅっと握りしめる。薄暗い森の中で、ロータスの死体が、魔獣に蹂躙されて、屠られている様子が頭に浮かぶ。額に脂汗が流れる。
どうしてこうなったのか。考えがうまくまとまらない。ロータスが生きていれば完璧な王太子妃になっただろう。お互いに気を遣い合い、よい国を築けることは明白だった。
(政略結婚だったが、ロータスのことを愛していた。それなのになぜ……私は)
ノック無しにドアがガチャリと開く。
「ザカリー、アリサが来たよ?」
むせかえるような甘い香りが、ザカライアスを包む。視線を上げると、救国の乙女アリサが半開きのドアから、ひょこりと半身をのぞかせている。
ピジョンブラッドルビーのような瞳は、人懐っこく潤み、サラサラとした黒髪は艶々と輝く。
心の奥底から、吐き気と共に愛おしさが込み上げてくる。
「アリサ、愛おしい私の乙女、こちらへおいで」
「うん!」
アリサは子ウサギのようにぴょこぴょこと跳ねながら、ザカライアスへ駆け寄ってくる。
ズキリと頭に痛みが走る。
「アリサ、お腹が大きくなってきているのだから、走ってはダメだ」
「だってぇー、ザカリーに会えたんだよ? 嬉しくてぇ」
アリサは、ザカライアスの膝の上にちょこりと座る。甘過ぎる濃い香りを肺いっぱいに吸い込む。
愛おしいと同時に湧き上がる強い嫌悪感は、一体何なのだろうか。そう思いながらザカライアスは、膝の上のアリサを後ろから、あたかも大切な人であるかのようにその柔らかな身体を抱き締める。しかし行動とは裏腹に悪寒が走り、全身に鳥肌が立つ。
ザカライアスは、アリサの腹を優しく撫でる。
「あっ、今動いたの分かりましたかぁ?」
アリサが丸い瞳で振り返りながら、彼を見上げる。
しかし、ザカライアスにはその胎動が全く分からなかった。アリサの腹は膨らんでいるが、ただそれだけだ。一度もその動きをこの手で感じたことはなかった。
「……かすかに……感じたかもしれない。すまない……。私はこういうことに疎いからな」
とっさに嘘をついた。
「もー、ザカリーったら。私たちの赤ちゃんなのですよ。もっと自分がお父様だとこの子に教えてあげてくださいな」
「……そうだな」
(本当に私の子なのか?)
けれどその疑問をなぜか直接ぶつけることができない。アリサが他の男たちと関係を持っているのは知っていた。昼に夜にと男を侍らせ、時には複数で睦み合ってきた。
「お仕事、忙しいのぉ?」
「ああ。各地で魔獣が侵入してきていてな。被害が広がっている」
「そうなんだぁ。大変ですねぇ」
足をパタパタと揺らしながら、他人事のようにアリサが言う。将来は王妃になると言うのにどうしてこうも国のことに無関心なのか。
「アリサ、国を守る魔法陣を王都の周りだけでもいいから、設置することはできないだろうか? 修復するだけでもいい」
「えー。無理ですよぉ。アリサ、難しい魔法式なんて分からないもん」
「ロータスは容易く魔法陣を作ることができた。君にもできるはずだろう? 魔王だって倒したじゃないか。救国の乙女の力をわずかでも使ってもらうことはできないだろうか」
「えー知らないよぉ。それにアリサはぁ、妊婦さんだもん。危ない場所なんか行けないでしょ。もうアリサ、一人の身体じゃあないんだもん」
「そうか……」
ザカライアスは、想定内の答えに心の中でため息をつく。魔法教育を受けていないアリサには、魔法陣を描くことは無理だ。そもそも国を守るという責任感が全くない。
「アリサはここで、ザカリーと生まれてくる子と幸せに暮らすの。ねっ、だからアリサのこと絶対に守って下さいね」
「……そう……だな」
アリサは「嬉しいっ」とザカライアスの頬にキスをする。手入れの行き届いた彼女の黒髪がザカライアスの手の甲をサラリと撫でる。
「これ以上お邪魔するのは悪いので、アリサは大人しくお部屋に戻っています。ザカリー、また夜ね?」
頬をバラ色に染めて、純真無垢な少女のように恥じらいながらアリサは執務室から出ていく。
部屋の中の張り詰めていた緊張が緩む。
彼女が出て行った後、ザカライアスは消毒液を染み込ませた布で頬と両手を綺麗に除菌する。そして窓を全開にし、部屋の空気を入れ替えると、気分が少しだけ良くなった。
依然として体調が悪い。頭痛がひどく、胃がムカムカとする。常に船酔いしているような気分だ。最近、テレンスも王城には来ない。マーヴィン侯爵の具合が悪く、田舎の領地での療養に付き合っているようだった。
騎士団長のイグニス・ガルシアは、魔獣討伐で被害地域を奔走しており、姿を見せない。
神官のオルフィロスは、魔王討伐の完遂とともに自国へ戻ってしまった。今は王太子として神聖プリマヴェル王国で公務をこなしていると言う。
あの時の仲間は今や散り散りとなり、ここには自分とアリサだけが残っている。
アリサを独り占めすることは、ずっと望んでいたことだ。他の男を近づかせたくないとずっと思っていた。
それが現実となった。しかし、これが自分の望んだ結果なのか……。いくら考えても答えは出なかった。
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