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第1章『ベサーイの最後』

第7節『サバル突入』

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 タルカに星移動の準備を促したベサーイ

タルカは、どうすれば良いのか聞くと、ベサーイが

『今までと同じ、球体を移動させるイメージをしなさい』

いよいよ星の移動だ。
タルカの両親や市民達が見守る中、緊張した面持ちで発光する銀色の板に触れるタルカ。

するとベサーイの傘の中から、小さな球がポトポトと落ちて来た。

小さな球は、ひとつひとつの色が異なっており、どんどん落ちてくる。そして、かなりの数が地面に落ちて止まった。

沢山あると、とてもカラフルだった。
すると球は、それぞれ大きくなったり、小さくなったりして、球状の空間の中に移動し止まった。 

場所はバラバラで近くて大きな球もあれば、遠くに小さな球もある。

ワワは直ぐに気付いた。

『星空?タルカ!星の位置だよ!』

タルカの目の前に2つの輝く球があり、その近くに小さな球があった。 

ベサーイ

『タルカの前にある2つの輝く球がサバルとオキア、もう1つの球がランキバーサ』

タルカは元より市民達も皆、その星空の美しさに息を呑み感動していた。

『タルカ、移動を始めますよ』

とベサーイが言うとログカーロから空間に続く穴が閉じた。
タルカはランキバーサを外(宇宙)から見て移動するイメージをした。

すると、それまで銀色に光っていたベサーイがオレンジ色に変わり始めた。

同時にタルカの触れている板も、それに触れているタルカの皮膚もオレンジ色になっていく。
タルカの両親や周囲が心配するとタルカは

『大丈夫』と言った。

星を外から見ているタルカ。
ログカーロの木もオレンジ色に発光し始めた事に気付く。

円形に並び、大きな穴だったのが円を閉じるようにログカーロが斜めに倒れ先端が尖った形(円錐形)になった。

ランキバーサをサバルの軌道に乗せる為、ベサーイはタルカに、不思議な道筋を見せた。

(サバルへの軌道ラインで、半透明のトンネルのようなもの。トンネルの中をランキバーサが進む)

タルカは必死にトンネル進むイメージを続けた。

市民を球体で移動した時のイメージより遥かに難しい。
ほんの少しでも気を抜くとトンネルから出そうになる。
最後の曲線に入る。

市民達のざわめきが聞こえるが気にする余裕がない。
サバルの軌道に乗せたと同時にベサーイが

『タルカよくやりましたね』

と言いベサーイの方を見ると何も無い。
そこには、小さな小さな発光する銀色のバルターモがあった。 

オレンジ色の浮いていた板は地面に落ちて、元の発光する銀色の板になり、空間に星の位置を見せていた球も地面に落ちた。
タルカが

『ベサーイは?あの大きなバルターモは?』

と周囲聞くとモセルが

『オレンジ色になった後に、だんだん小さくなっていったんだ』

タルカは小さくなったベサーイに話しかけるが返事が無い。
何度呼んでも返事がない。
悲しくてたまらなかった所にタルカの母親が優しく言う

『多分エネルギーを使いすぎて、今は休んでるのよ。きっとまた話せるよ』
 
タルカは小さくなったベサーイにお礼を言った。
僅かに少しだけ強く発光したように見えた。

サバルへの軌道に乗せて、少し安堵したタルカだったが、タルカだけオレンジ色が元に戻らず、両親も周囲も心配したが、タルカは気にしない事にした。

いよいよサバルが迫る。
タルカは外の状況を確認しようと、銀色の板に触れるが、今までのように全体が見れない。

部分的しか見れないが、サバルはかなり近い。
タルカは両親や市民達に

『サバルに突入する!』と叫んだ。

ランキバーサが恒星サバルの表面に近づいていくと、サバルの熱で海は沸騰、蒸発し、どんどん水面が下がり、陸地が広がっていく。

更に近づくと、星の半分程あった海は蒸発し海底が露出した。
乾いた大地が灼熱にさらされ、溶けるように燃え出す。
燃えながらサバルに向かうランキバーサは、火の玉のようだった。

あまりの高温に大地は灰のように変色し始め、表面は塵になっていき、塵を宇宙に撒き散らしながら進んで行く。

すると塵の下から真っ赤に燃える大地と、その更に下にある乾いた大地が、一緒に捲れ上がり分厚く剥がれ、宇宙に飛んで行く。

剥がれた場所の露出した地面は、熱で直ぐに燃え出し、至る所で間欠泉のように水蒸気が吹き出した。

(タルカが最初にベサーイの場所に落下した時、途中寒い場所があった。そこは大地の一番下と、ベサーイのいた球体の外側との間に、厚さ数千キロにも及ぶ氷河があった。
サバルの熱で氷河は溶け出し、氷河の中あった物質が、水と大地の間に溜まり、お湯となった氷河の水と共に、大地を押し上げ間欠泉のように吹き出した)

星の外側は、とんでもない状況になっていたが、球体内部は静寂だった。
物凄い速さでサバルに突入していくランキバーサ。

サバルの表面を通過する時には、ランキバーサは、かなり小さくなっていた。

分厚かった大地の殆どは剥がれ飛んで行き、薄い皮のような地面になっていた。

サバルの内部に入ると、中は真っ暗で何も見えなかった。
表面の高温な熱も無く、ただ暗闇が続いている。
タルカは触れていた板から離れた。

するとコルルが聞く

『どうなった?サバルに突入したの?』

タルカは

『今、サバルの中のはず、だけど真っ暗』と答えた。

その会話を聞いていたコーカクが

『真っ暗?もう別の宇宙に行ったという事なんだな!』

と言い市民達に

『タルカがやったぞ!別の宇宙に行けたぞ!成功だ!』

市民達は

『何も感じなかったけど、行けたのね』

『凄いぞタルカ!』

『良かった』

皆、喜んでいた。

モセルがタルカに聞く

『タルカ、地上はどうなった?』
 
タルカは

『サバルの熱で何も無くなった。星も小さくなってしまった』

と答えるとモセルが

『そうか…。でも皆を守ったんだ。役目を立派に果たしたなタルカ』と言った。 

何か腑に落ちないタルカにコルルが

『どうしたのタルカ?』

と聞くとタルカは

『真っ暗で別の宇宙に移動出来たか、わからない』と言うとコルルが

『この星だけの、何もない宇宙だってあるかも知れない』

と言いワワも

『良くやったねタルカ』と言いコルルとワワは共に喜んでいた。

タルカの両親も、タルカを誉めて喜んでいた。
タルカは、何も無い宇宙。
そういう宇宙もあるのかも。と思い守護者という役目を果たし、安堵した。

ふと小さくなったバルターモを見てから、何もない宇宙を見ようと板に触れた。

すると暗闇だった奥から、光る花のような形をした何かが見えて、ゆっくりと迫って来る。
別宇宙の移動はまだだった。 

慌てたタルカは周囲に

『まだ!まだ別の宇宙に行けてない!』

と叫んだ。  
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