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第二章 奴隷とかムカつきます
077 ほろぶべし!
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聖王国へ行くには、この国を横切り、もう一つ国を越えなくてはならない。
「では、お嬢様と旦那様は、聖王国へ向かっておられるのですね?」
そういえば、ケイト達に目的地を話していなかったなと気付いたカトラは、旅の経緯を説明していた。
彼女達とは既に一心同体。厄介事も楽しむことも全て共にしてもらう。
「聖王国がそんなことをしてるなんて知りませんでした」
キュリがすごく残念なことを聞いたというように嘆息した。
「それって、人攫いだし」
クスカは神聖魔術の適性を持った者が、自分たちのように訳も分からず連れ去られることに腹を立てていた。
「ひどい……」
コルも幼いながらに理解したらしく、泣きそうな顔をしている。
そんなコルの頭を撫でながら、カトラは頷いた。
「そうしないと、あの国が国として成り立たなくなるっていうのも分からなくないんだけどね。それはあいつらの勝手でしかない」
神聖魔術を彼らの専売特許とするのは、彼らの勝手だ。誰に許可を取っているわけでもないし、それがないと破綻するような国にしたのも彼らの落ち度だろう。
「それでは、私たちの敵ということですね」
「その通りだよ。カーラに手を出して、生きてること自体がおかしいでしょ」
「確かに」
「……えっと……」
ケイトはかなりターザに毒されてきたようだ。
「何様のつもりなんでしょうね」
「滅ぼして良い理由ですよ」
「……」
違った。キュリとクスカもだと驚いていれば、未だに手を置いていた小さな頭がぴこぴこと上下に動いて主張した。
「ほろぶべし!」
「っ……」
幼いコルまでもが過激なことを言うようになっていた。
「……ナワちゃん……ちょっと、コルまで毒されてるんだけど……」
《ー何か問題でも?ー》
「……」
カトラは失念していた。聖王国のことについては、ナワちゃんも怒っていたのだ。いつもはターザの過激思考を宥めてくれるナワちゃんが、今回のことについては助けにはらないと思い知った。
「良く言った。よし、これからもっと鍛えてあげるよ。国を滅ぼすっていうのはそれなりに大変だからね」
「「「「はい!」」」」
「……滅ぼすのは決定……?」
確かに聖王国については苛ついていた。だが、カトラとしてはそこまでではない。せめて上の方の者達を全員吊るし上げるくらいだ。
「影と後は……上から五十人くらいをお仕置きと思ってたんだけどな……」
カトラの考えも大概だということには、誰も気づけない。
そうこうしている間に、王都についた。
「それなりには賑わってるね」
「すごい……これが王都……」
ケイト達も、初めて見る自分たちの国の王都に目を見開いていた。とりあえず宿を決めて、部屋に入ってから話し合う。
「この後、カーラはどうする?」
「どうせ今日一日だけの滞在でしょ? なら、ケイト達にはまた買い物を頼むよ。ナワちゃん、分身頼める?」
《ーOKー》
ケイト達にナワちゃんをつける。
「六時くらいには戻ってきて。いつものように服と……足りない食品は、ナワちゃんが知ってるから。あとは好きに過ごして。買い食いとかしていいから」
「そんなっ……いえ、わかりました。行って参ります」
「うん。遠慮なんてしないで王都見物も楽しんで」
「はいっ」
カトラは、これまで町に寄るとケイト達にお小遣いを渡していた。買い物のついでにちゃんと遊んでくるようにと言う。ナワちゃんは護衛兼アドバイザーだ。
自由に過ごすというのは、奴隷にはあり得ない待遇だ。だが、カトラは拘束したりはしない。旅の道中で彼女達は戦い方など様々なことを勉強し習得しているのだ。それが彼女たちに課せられた仕事だった。
それをしっかりこなしているのだから、報酬として遊ぶのは当然だ。何より、カトラにはケイト達にのびのびと育って欲しい。今は年齢的に近いし、ケイトに至っては年上だが、前世の記憶のあるカトラとしては、彼女たちは庇護すべき子どもなのだ。
それを、ターザも理解しているのだろう。無茶なことはさせないし、嫌がることは避けてくれている。とはいえ、彼女たちはなんでもやろうとするので、要らぬ気遣いなのかもしれない。
ケイト達を見送り、カトラはターザと出かけることにした。
「どこに行きたい? またカーラの服も買いたいな」
「そんなに要らないって……それより、奴隷商を見たい」
「……そんなに気になる?」
「というか、ターザもちょっと気になってるでしょ? この国、奴隷商が多過ぎる。あの契約魔術って、簡単に習得できるものじゃないよね?」
「気付いちゃったか」
ターザが悪びれる様子もなくニヤリと笑う。こういう場合は、面倒な真実が隠されている。
「ビルスさんの契約魔術が正しいなら、神聖魔術と同じように適性がないとできないものだよね」
「そうだよ。だから、奴隷商っていうのが国で認められてるんだ。不正はできないって知ってるからね」
「……ターザのことだから、調べはついてるんじゃない?」
「ここで裏どり出来たらって思ってはいたよ」
慎重に調べている様子が見え、カトラは察しがついた。
「聖王国の人が関わってる?」
「ふふ、正解。さすがはカーラ。じゃあ、裏どりといこうかな」
「うん」
カトラとターザは、王都の端にある奴隷商へと先ずは足を向けるのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 6. 24
「では、お嬢様と旦那様は、聖王国へ向かっておられるのですね?」
そういえば、ケイト達に目的地を話していなかったなと気付いたカトラは、旅の経緯を説明していた。
彼女達とは既に一心同体。厄介事も楽しむことも全て共にしてもらう。
「聖王国がそんなことをしてるなんて知りませんでした」
キュリがすごく残念なことを聞いたというように嘆息した。
「それって、人攫いだし」
クスカは神聖魔術の適性を持った者が、自分たちのように訳も分からず連れ去られることに腹を立てていた。
「ひどい……」
コルも幼いながらに理解したらしく、泣きそうな顔をしている。
そんなコルの頭を撫でながら、カトラは頷いた。
「そうしないと、あの国が国として成り立たなくなるっていうのも分からなくないんだけどね。それはあいつらの勝手でしかない」
神聖魔術を彼らの専売特許とするのは、彼らの勝手だ。誰に許可を取っているわけでもないし、それがないと破綻するような国にしたのも彼らの落ち度だろう。
「それでは、私たちの敵ということですね」
「その通りだよ。カーラに手を出して、生きてること自体がおかしいでしょ」
「確かに」
「……えっと……」
ケイトはかなりターザに毒されてきたようだ。
「何様のつもりなんでしょうね」
「滅ぼして良い理由ですよ」
「……」
違った。キュリとクスカもだと驚いていれば、未だに手を置いていた小さな頭がぴこぴこと上下に動いて主張した。
「ほろぶべし!」
「っ……」
幼いコルまでもが過激なことを言うようになっていた。
「……ナワちゃん……ちょっと、コルまで毒されてるんだけど……」
《ー何か問題でも?ー》
「……」
カトラは失念していた。聖王国のことについては、ナワちゃんも怒っていたのだ。いつもはターザの過激思考を宥めてくれるナワちゃんが、今回のことについては助けにはらないと思い知った。
「良く言った。よし、これからもっと鍛えてあげるよ。国を滅ぼすっていうのはそれなりに大変だからね」
「「「「はい!」」」」
「……滅ぼすのは決定……?」
確かに聖王国については苛ついていた。だが、カトラとしてはそこまでではない。せめて上の方の者達を全員吊るし上げるくらいだ。
「影と後は……上から五十人くらいをお仕置きと思ってたんだけどな……」
カトラの考えも大概だということには、誰も気づけない。
そうこうしている間に、王都についた。
「それなりには賑わってるね」
「すごい……これが王都……」
ケイト達も、初めて見る自分たちの国の王都に目を見開いていた。とりあえず宿を決めて、部屋に入ってから話し合う。
「この後、カーラはどうする?」
「どうせ今日一日だけの滞在でしょ? なら、ケイト達にはまた買い物を頼むよ。ナワちゃん、分身頼める?」
《ーOKー》
ケイト達にナワちゃんをつける。
「六時くらいには戻ってきて。いつものように服と……足りない食品は、ナワちゃんが知ってるから。あとは好きに過ごして。買い食いとかしていいから」
「そんなっ……いえ、わかりました。行って参ります」
「うん。遠慮なんてしないで王都見物も楽しんで」
「はいっ」
カトラは、これまで町に寄るとケイト達にお小遣いを渡していた。買い物のついでにちゃんと遊んでくるようにと言う。ナワちゃんは護衛兼アドバイザーだ。
自由に過ごすというのは、奴隷にはあり得ない待遇だ。だが、カトラは拘束したりはしない。旅の道中で彼女達は戦い方など様々なことを勉強し習得しているのだ。それが彼女たちに課せられた仕事だった。
それをしっかりこなしているのだから、報酬として遊ぶのは当然だ。何より、カトラにはケイト達にのびのびと育って欲しい。今は年齢的に近いし、ケイトに至っては年上だが、前世の記憶のあるカトラとしては、彼女たちは庇護すべき子どもなのだ。
それを、ターザも理解しているのだろう。無茶なことはさせないし、嫌がることは避けてくれている。とはいえ、彼女たちはなんでもやろうとするので、要らぬ気遣いなのかもしれない。
ケイト達を見送り、カトラはターザと出かけることにした。
「どこに行きたい? またカーラの服も買いたいな」
「そんなに要らないって……それより、奴隷商を見たい」
「……そんなに気になる?」
「というか、ターザもちょっと気になってるでしょ? この国、奴隷商が多過ぎる。あの契約魔術って、簡単に習得できるものじゃないよね?」
「気付いちゃったか」
ターザが悪びれる様子もなくニヤリと笑う。こういう場合は、面倒な真実が隠されている。
「ビルスさんの契約魔術が正しいなら、神聖魔術と同じように適性がないとできないものだよね」
「そうだよ。だから、奴隷商っていうのが国で認められてるんだ。不正はできないって知ってるからね」
「……ターザのことだから、調べはついてるんじゃない?」
「ここで裏どり出来たらって思ってはいたよ」
慎重に調べている様子が見え、カトラは察しがついた。
「聖王国の人が関わってる?」
「ふふ、正解。さすがはカーラ。じゃあ、裏どりといこうかな」
「うん」
カトラとターザは、王都の端にある奴隷商へと先ずは足を向けるのだった。
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