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第二章 奴隷とかムカつきます

076 ラブラブのじゃまはダメー!

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ケイト達を引き取り、旅を再開したカトラとターザは、彼女達の指導をナワちゃんに頼んで情報を共有していた。

「あの奴隷商。他の奴隷商とはやっぱりちょっと違うみたいだね」
「そうなんだ……確かに、他の奴隷商を見たけど、雰囲気が全く違ったかも……」

カトラは町にある他の奴隷商を確認していた。大抵、どの町にも奴隷商が三つある。多くて七つもあった。

どこも陰鬱な雰囲気があり、入りたいとは思えなかった。どの店も看板商品として外に出している奴隷の目は荒んでいた。

「あそこは、外に奴隷を置いてなかったよね。ナワちゃんが店の奥を見てきたみたいだけど、清潔な部屋で生活してるみたいだったって」

個別の牢できちんとした最低限の生活が出来るようになっていた。

「あの店、犯罪奴隷を基本的に扱ってないんだ」
「……そう……あんな面倒な人、引き受けて大丈夫かな……」

カトラは、味方にした人にはとことん甘くなる。心配するのも当然だった。

「そこは大丈夫だよ。そろそろ、この国が動いてるからね。引き取られてくはずだ」
「国が?」
「うん。あの女、これから行く隣の国から流れてきたみたいなんだ。犯罪奴隷に落とされる前に親が流したんだね。さすがに王女にまで手を出されたものだから、国王が探して犯罪奴隷として回収することにしたみたい」

処刑したって文句の言えないことをした。だが、それでは気が治らないのだろう。何より、セリカは現実が見えていない。自分が悪いことをした自覚がない。せめてそれだけでも理解させなくてはと思ったのだろう。

「この国の王に要請したんだ。代わりに少しお金を積んだみたい。破綻しかけてるこの国にとっては願っても無い話だよね」

だが、これによりこの国は現実を見つめる時間が遠のいた。崩壊の兆しから目を逸らされてしまっただろう。

「この国……奴隷の方が多くなりそうだね……」
「国を上げての国家事業になるんじゃないかな。それしか生き延びる道はなくなる」
「国民を奴隷として派遣するってこと?」
「そう。既にケイト達みたいに、なんの罪もない者まで集めてる時点で、そっちへ流れて行ってるよ。ただ、今のここの王族が生き残れるかどうかは怪しいね。まあ、先ずは内乱かな」
「……避けられないか……」

違法がまかり通ってしまっていることさえ、上は知らない可能性がある。その証拠に、兵や騎士はまともなのが多かった。

「王都の様子次第だけどね。この辺はまだ端の方だし、目が届かないのもあるのかも」

国とは端からゆっくりと病んでいくものと、中央から一気に病むものとがある。だから、これから向かう王都の様子によっては、まだ間に合うのかもしれない。

「カーラはどうにかしたいの?」
「……隣の国がこんな状態っていうのは気分が良くないよ。それに、ケイト達みたいなことが横行してるなら、近いうちに国境を越えてやりだすかもしれないし」
「それはあるね。なるほど。なら、俺も考えようかな」
「いいの?」
「もちろん。カーラが大事にするものは全部守るつもりだからね」
「……ありがと……」

大きな手がカトラの頭を撫でる。

そんな穏やかな空気の流れる一方で、ケイト達は何をしているかといえば、襲ってくる魔獣の相手だ。

「お嬢様と旦那様の邪魔は許さないわ!」
「あれを邪魔したら地獄行きだよ」
「旦那様の嫉妬は怖いんだから」
「ラブラブのじゃまはダメー!」
《ーその意気です! ー》

ここまで小さな魔獣から始め、今や自分たちと同じくらいの大きさの狼を相手にしている。

ケイトは剣。キュリとクスカの二人はメイス。幼いコルは弓だ。

最初はキュリとクスカの二人には槍を渡したのだが、突き刺すよりも近付いてボコる方を取ったのだ。二人曰く、刺す場所を考える時間がもったいないらしい。結構な脳筋要素を持っているようだ。

「これでトドメ!」

ケイトが最後は仕留め、次に解体作業に移る。

「ナワさん、この魔獣は何が必要ですか?」
《ー討伐証明は牙ですー》
《ー肉はあまり美味しくありませんー》
《ー肝は薬の材料ーー皮は売れますー》

ナワちゃんの説明を受けて、ケイト達は解体していく。要らない部分は魔術によって焼却処分だ。

武器の扱いや魔術については、ここまでの道中でターザとカトラによって教えられていた。

《ー完璧ですねー》
「「「「ありがとうございます!」」」」

こうして、彼女たちは有り得ない速さで成長していった。

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読んでくださりありがとうございます◎
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