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第十二章
492 絶対に失くさないようにっ!
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貴族達も迷宮化の討伐のライブ映像をしっかり観ていた。
寧ろ一日中、その映像の見えるようになっている会議室に集まり、観覧していたのだ。よって、パックンやダンゴ、テンキの事も知っているし、その強さも分かっている。
ファンも付くというもの。
「くっ……授与式でこれほど羨ましいと思ったことは初めてだ……っ」
「いやいや。コウヤ様手ずからであったなら、血涙を流して見せましたぞ」
「それはある。だが……羨ましい……っ」
近衛師団の者達は、更にソワソワと落ち着きがない。声には出さないが、とっても嬉しそうに目を輝かせていた。
《頑張ろうね!》
パックンが楽しそうな笑顔で師団章を付けてから声を掛ける。すると、付けられた者は感動したように頬を染めて返事をする。
「はい!!」
次はダンゴ。こちらは優しく微笑みながらだ。
《協力していきましょう》
「お任せください!」
頼りにされるよう頑張りますと胸に手を当てて誓っていた。
最後はテンキの方を見てみる。
《期待していますよ》
「っ、より一層、努力してまいります!!」
その答えに、テンキは満足げに頷く。厳しい訓練を耐え抜いた生徒達を見るような目であり、師団章を受け取った方も、誇らしげだった。
それらを見ている王族一同は同じ感想を持つ。代表で口にしたのはコウヤだ。
「それぞれ反応や雰囲気が違って面白いですね」
「「「「「うん」」」」」
見ていて飽きない。退屈にならなくて何よりだ。
無事に師団章が行き渡った。
誰もが顔をしっかりと上げて、誇らしげに王族を見上げていた。
そんな様子を確認してから、ベルナディオは覚悟を決めてそれの効果を説明することにする。
「え~……受け取った師団章は……」
覚悟が足りなかったようだ。少し間が空き、ぐっと何かを堪えた様子を見せる。
「「「「「……?」」」」」
どうしたのだろうかと、見ている貴族達も、団員達も心配気にベルナディオを見つめた。
コウヤもベルナディオを見る。すると、そこで彼と目が合った。これは本当に言ってしまっていいのかと迷っている目だ。
だから、コウヤは微笑んで頷いて見せた。
「大丈夫ですよ。お願いします。聞いている効果を全部伝えてください」
「っ……承知しました」
ベルナディオはふうと息を吐き、背筋を伸ばして声を張り上げた。
「その師団章は、創造神ゼストラーク様によって作られました! 所有者は着けた時点で登録されています!」
「「「「「……え……?」」」」」
そのために、直接の上官となるはずのニールやブランナ、ビジェではなく、パックン達が付けて回ったのだ。それにより、個人登録は既にこの時点で全員が完了している。
ベルナディオは更に続ける。団員達には目を合わせない作戦に出たようだ。とりあえず、彼らが盛大に戸惑っていても見なかったことにして全て言ってしまう。
「効果としましては、一日一回、どんな命の危険も確実に回避できるというのが一つ!」
「「「「「っ、ひとっ……」」」」」
思わず叫びそうになる団員達。ゼストラークに慣れているユースールの者達もびっくりしている。
「それと、それぞれの素質により適応したスキルの熟練度が上がりやすくなり、修得しやすくなるというのが一点」
「「「「「っ、いっ!?」」」」」
まだあるのかと目を丸くする一同。
「更には! 個人に合った武器との相性が良くなり、人や従魔との縁が繋がりやすくなるという効果があるそうです!! 絶対に失くさないようにっ!」
「「「「「ひいっ」」」」」
小さな悲鳴が上がっていた。
コウヤは改めて彼らが着けた師団章を確認する。ベルナディオの説明はこれだけのようだが、完全に着けた者達の顔が強張ってしまっているのを察して、視線でニールを呼ぶ。
察したニールがコウヤの側に来た。
「どうされましたか?」
「うん。アレ、盗難防止の機能あるって、ゼストパパから聞いてないのかな?」
「……お聞きしておりません」
「そっか。多分、当たり前の機能だからかな。えっと……」
コウヤが説明すると、ニールは頷いてベルナディオに耳打ちする。そして、ベルナディオが落ち着いてから、再び声を張り上げた。
「っ、追加機能があります! 個人登録は今着けた段階で出来ており、もし、どこかに転がって行ってしまっても、意識すればどこにあるか分かるそうです! 基本、取り外しは本人にしか出来ません! それでも気を付けるように!」
「「「「「っ、はい!」」」」」
それならばなんとか大丈夫だと、着けた師団章を確認しながらほっとしていた。失くしにくいなら充分だろう。失くす気はない。
コウヤも顔色が戻り良かったと微笑む。
そうして、心臓に悪い授与式は無事終了となった。
「本日の夜は懇親会を行います。それまで案内に従って行動してください」
コウヤ達、王族組が退出し、近衛師団の者達に続き、貴族達もゾロゾロと退出していった。
謁見の間を出た所で、ざわざわとするのは仕方がない。
本来ならば身分がなんだと言うはずの貴族達の方から彼らに少し声を掛ける。
「気をしっかり持つのだぞ」
「今夜、また」
「倒れないのはさすがだな」
「是非、今夜話しをしよう」
「頑張ってくれ」
などなど。そんな声掛けに、近衛師団の者達は戸惑いながらも、頑張ろうと心に誓う。
そう。これくらいで倒れていては、コウヤの側には居られないのだから。
************
読んでくださりありがとうございます◎
次回22日です!
寧ろ一日中、その映像の見えるようになっている会議室に集まり、観覧していたのだ。よって、パックンやダンゴ、テンキの事も知っているし、その強さも分かっている。
ファンも付くというもの。
「くっ……授与式でこれほど羨ましいと思ったことは初めてだ……っ」
「いやいや。コウヤ様手ずからであったなら、血涙を流して見せましたぞ」
「それはある。だが……羨ましい……っ」
近衛師団の者達は、更にソワソワと落ち着きがない。声には出さないが、とっても嬉しそうに目を輝かせていた。
《頑張ろうね!》
パックンが楽しそうな笑顔で師団章を付けてから声を掛ける。すると、付けられた者は感動したように頬を染めて返事をする。
「はい!!」
次はダンゴ。こちらは優しく微笑みながらだ。
《協力していきましょう》
「お任せください!」
頼りにされるよう頑張りますと胸に手を当てて誓っていた。
最後はテンキの方を見てみる。
《期待していますよ》
「っ、より一層、努力してまいります!!」
その答えに、テンキは満足げに頷く。厳しい訓練を耐え抜いた生徒達を見るような目であり、師団章を受け取った方も、誇らしげだった。
それらを見ている王族一同は同じ感想を持つ。代表で口にしたのはコウヤだ。
「それぞれ反応や雰囲気が違って面白いですね」
「「「「「うん」」」」」
見ていて飽きない。退屈にならなくて何よりだ。
無事に師団章が行き渡った。
誰もが顔をしっかりと上げて、誇らしげに王族を見上げていた。
そんな様子を確認してから、ベルナディオは覚悟を決めてそれの効果を説明することにする。
「え~……受け取った師団章は……」
覚悟が足りなかったようだ。少し間が空き、ぐっと何かを堪えた様子を見せる。
「「「「「……?」」」」」
どうしたのだろうかと、見ている貴族達も、団員達も心配気にベルナディオを見つめた。
コウヤもベルナディオを見る。すると、そこで彼と目が合った。これは本当に言ってしまっていいのかと迷っている目だ。
だから、コウヤは微笑んで頷いて見せた。
「大丈夫ですよ。お願いします。聞いている効果を全部伝えてください」
「っ……承知しました」
ベルナディオはふうと息を吐き、背筋を伸ばして声を張り上げた。
「その師団章は、創造神ゼストラーク様によって作られました! 所有者は着けた時点で登録されています!」
「「「「「……え……?」」」」」
そのために、直接の上官となるはずのニールやブランナ、ビジェではなく、パックン達が付けて回ったのだ。それにより、個人登録は既にこの時点で全員が完了している。
ベルナディオは更に続ける。団員達には目を合わせない作戦に出たようだ。とりあえず、彼らが盛大に戸惑っていても見なかったことにして全て言ってしまう。
「効果としましては、一日一回、どんな命の危険も確実に回避できるというのが一つ!」
「「「「「っ、ひとっ……」」」」」
思わず叫びそうになる団員達。ゼストラークに慣れているユースールの者達もびっくりしている。
「それと、それぞれの素質により適応したスキルの熟練度が上がりやすくなり、修得しやすくなるというのが一点」
「「「「「っ、いっ!?」」」」」
まだあるのかと目を丸くする一同。
「更には! 個人に合った武器との相性が良くなり、人や従魔との縁が繋がりやすくなるという効果があるそうです!! 絶対に失くさないようにっ!」
「「「「「ひいっ」」」」」
小さな悲鳴が上がっていた。
コウヤは改めて彼らが着けた師団章を確認する。ベルナディオの説明はこれだけのようだが、完全に着けた者達の顔が強張ってしまっているのを察して、視線でニールを呼ぶ。
察したニールがコウヤの側に来た。
「どうされましたか?」
「うん。アレ、盗難防止の機能あるって、ゼストパパから聞いてないのかな?」
「……お聞きしておりません」
「そっか。多分、当たり前の機能だからかな。えっと……」
コウヤが説明すると、ニールは頷いてベルナディオに耳打ちする。そして、ベルナディオが落ち着いてから、再び声を張り上げた。
「っ、追加機能があります! 個人登録は今着けた段階で出来ており、もし、どこかに転がって行ってしまっても、意識すればどこにあるか分かるそうです! 基本、取り外しは本人にしか出来ません! それでも気を付けるように!」
「「「「「っ、はい!」」」」」
それならばなんとか大丈夫だと、着けた師団章を確認しながらほっとしていた。失くしにくいなら充分だろう。失くす気はない。
コウヤも顔色が戻り良かったと微笑む。
そうして、心臓に悪い授与式は無事終了となった。
「本日の夜は懇親会を行います。それまで案内に従って行動してください」
コウヤ達、王族組が退出し、近衛師団の者達に続き、貴族達もゾロゾロと退出していった。
謁見の間を出た所で、ざわざわとするのは仕方がない。
本来ならば身分がなんだと言うはずの貴族達の方から彼らに少し声を掛ける。
「気をしっかり持つのだぞ」
「今夜、また」
「倒れないのはさすがだな」
「是非、今夜話しをしよう」
「頑張ってくれ」
などなど。そんな声掛けに、近衛師団の者達は戸惑いながらも、頑張ろうと心に誓う。
そう。これくらいで倒れていては、コウヤの側には居られないのだから。
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