321 / 472
第十一章
426 残念ね……
しおりを挟む
エリスリリアは、ユミ、ユリ、ヒナの三人の神子と共に、獣人の里に降り立った。
「ごきげんよう。わたくしはエリスリリア。何者かは……言わなくても分かっているわね?」
これにコクコクと黙って頷く獣人達。
エリスリリアを囲むように立つユミ達は、聖魔教会の制服を着ており、剣は持たないが、女神を守る麗しい女性騎士に見えた。
「今、外で何が起きているのか、理解出来ているかしら」
これにも、獣人達は頷く。
エリスリリアは口元へ優雅に片手を持って行き、笑う。
「ふふっ。では、なぜこうなったのかは?」
獣人達は動きを止めた。
「そう……そうね。この場の迷宮が暴走したのは、必然だったのかもしれないわね。思えば、あなた達は、何もしてこなかった……」
「「「「「っ……」」」」」
責められている。そう感じた獣人達は、首をすくめた。
「外界との関係を断ち、人族が悪いと言うだけで、何もしなかった……」
何のことかと、獣人達は頭を悩ませる。
「口にすることは出来たはずよね? コウルリーヤのことも。それでもしなかった。後になって、加護が消えたと慌てて人族を責めただけだった。そして、今回も……このままでは生きていけないと思って、神教国へ攻め入った。あなた達は、ここまで来ないとそれが出来なかった……残念ね……」
「「「「「っ……」」」」」
神に失望させた。それに、彼らはようやく気付いた。
同じようにこの時、リクトルスがエルフの里でも話している。そして、同じように落胆した。
これにより、彼ら全員に『神を失望させた者』という称号が付いた。
後に知ることだが、これにより、彼らのレベルや身体能力が半分以下に低下した。
「今、あの子達が戦っているのは、あなた達のためでもある。迷宮化によって、この里の土地は影響下に入り、土地が痩せていっている。作物もろくに育たなくなっていたでしょう?」
「あ……」
「え……じゃあ……」
獣人達は痩せていた。外に狩りに行く体力も残ってはいない。辛うじて動けた者達は、神教国へと攻め入るための戦士として出て行っている。
この里に残っているのは、痩せ細り、不幸を嘆き、全ての原因は人族だと恨みを募らせる者たちばかりだ。
「困ったことが起きた時に、誰が悪いのかと決めつけて、責め立てるだけ……自分たちでどうにかしようとは考えない……それで何が変わるの?」
「「「「「っ……」」」」」
文句を言うだけ。コウルリーヤを討った人族が悪いと責めたとして、何が変わるのか。この現状が変わるはずがない。
「人族を見下してはいけないと、コウルリーヤは話したはずよ……」
「「「「「……」」」」」
かつて、コウルリーヤは、寿命の短い人族達を劣等種と言って蔑む獣人族やエルフ族へ忠告した。
「生きる時間が短いからこそ、人族は何かを成そうとする意欲が強い。そこを認め、学ぶべきだと伝えたわ」
種として劣ってはいない。それぞれに欠点があり、誇れる場所がある。そこをお互いに尊重しあい、補っていくべきだとコウルリーヤは説いていた。
違いがあるからこそ、高め合うことで、発展する。だから、どちらも必要なのだと伝えていた。
「コウルリーヤの恩恵を受けておきながら、あなた達はそれを理解しなかった。享受だけしておいて、還元しないのは狡いわよね?」
「「「「「っ……!」」」」」
いつも綻ぶように微笑むエリスリリア。だが、今は艶やかに笑っていた。
彼女も怒っていたのだ。何も成そうとしない彼らに。
「この戦いが終わるまでに、決めてもらいましょう。外に出るか……ここで朽ち果てるか」
「そ、そんなっ」
「め、女神様がそんなこと言うはずがっ……」
「信じないのならそれでも結構よ。私たちの意志は伝えたわ。そう……きちんと称号にも出たはず」
そこで慌ててまだ冷静な者たちがステータスを確認する。
そこに『神を失望させた者』という称号を見つけて愕然とする。
「「「っ、失望……っ」」」
「そうよ。だから、期待はしないわ。選択肢を与えたのは、せめてもの慈悲よ。これからあなた達は生きにくくなるでしょう。覚悟はしておくのね」
そう言い残し、エリスリリアとユミ達は姿を消した。
「……失望させた……」
「神……を……」
「女神を……っ」
何よりも彼らを打ちのめしたのは、愛と再生の女神であるエリスリリアに失望されたのだということだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「ごきげんよう。わたくしはエリスリリア。何者かは……言わなくても分かっているわね?」
これにコクコクと黙って頷く獣人達。
エリスリリアを囲むように立つユミ達は、聖魔教会の制服を着ており、剣は持たないが、女神を守る麗しい女性騎士に見えた。
「今、外で何が起きているのか、理解出来ているかしら」
これにも、獣人達は頷く。
エリスリリアは口元へ優雅に片手を持って行き、笑う。
「ふふっ。では、なぜこうなったのかは?」
獣人達は動きを止めた。
「そう……そうね。この場の迷宮が暴走したのは、必然だったのかもしれないわね。思えば、あなた達は、何もしてこなかった……」
「「「「「っ……」」」」」
責められている。そう感じた獣人達は、首をすくめた。
「外界との関係を断ち、人族が悪いと言うだけで、何もしなかった……」
何のことかと、獣人達は頭を悩ませる。
「口にすることは出来たはずよね? コウルリーヤのことも。それでもしなかった。後になって、加護が消えたと慌てて人族を責めただけだった。そして、今回も……このままでは生きていけないと思って、神教国へ攻め入った。あなた達は、ここまで来ないとそれが出来なかった……残念ね……」
「「「「「っ……」」」」」
神に失望させた。それに、彼らはようやく気付いた。
同じようにこの時、リクトルスがエルフの里でも話している。そして、同じように落胆した。
これにより、彼ら全員に『神を失望させた者』という称号が付いた。
後に知ることだが、これにより、彼らのレベルや身体能力が半分以下に低下した。
「今、あの子達が戦っているのは、あなた達のためでもある。迷宮化によって、この里の土地は影響下に入り、土地が痩せていっている。作物もろくに育たなくなっていたでしょう?」
「あ……」
「え……じゃあ……」
獣人達は痩せていた。外に狩りに行く体力も残ってはいない。辛うじて動けた者達は、神教国へと攻め入るための戦士として出て行っている。
この里に残っているのは、痩せ細り、不幸を嘆き、全ての原因は人族だと恨みを募らせる者たちばかりだ。
「困ったことが起きた時に、誰が悪いのかと決めつけて、責め立てるだけ……自分たちでどうにかしようとは考えない……それで何が変わるの?」
「「「「「っ……」」」」」
文句を言うだけ。コウルリーヤを討った人族が悪いと責めたとして、何が変わるのか。この現状が変わるはずがない。
「人族を見下してはいけないと、コウルリーヤは話したはずよ……」
「「「「「……」」」」」
かつて、コウルリーヤは、寿命の短い人族達を劣等種と言って蔑む獣人族やエルフ族へ忠告した。
「生きる時間が短いからこそ、人族は何かを成そうとする意欲が強い。そこを認め、学ぶべきだと伝えたわ」
種として劣ってはいない。それぞれに欠点があり、誇れる場所がある。そこをお互いに尊重しあい、補っていくべきだとコウルリーヤは説いていた。
違いがあるからこそ、高め合うことで、発展する。だから、どちらも必要なのだと伝えていた。
「コウルリーヤの恩恵を受けておきながら、あなた達はそれを理解しなかった。享受だけしておいて、還元しないのは狡いわよね?」
「「「「「っ……!」」」」」
いつも綻ぶように微笑むエリスリリア。だが、今は艶やかに笑っていた。
彼女も怒っていたのだ。何も成そうとしない彼らに。
「この戦いが終わるまでに、決めてもらいましょう。外に出るか……ここで朽ち果てるか」
「そ、そんなっ」
「め、女神様がそんなこと言うはずがっ……」
「信じないのならそれでも結構よ。私たちの意志は伝えたわ。そう……きちんと称号にも出たはず」
そこで慌ててまだ冷静な者たちがステータスを確認する。
そこに『神を失望させた者』という称号を見つけて愕然とする。
「「「っ、失望……っ」」」
「そうよ。だから、期待はしないわ。選択肢を与えたのは、せめてもの慈悲よ。これからあなた達は生きにくくなるでしょう。覚悟はしておくのね」
そう言い残し、エリスリリアとユミ達は姿を消した。
「……失望させた……」
「神……を……」
「女神を……っ」
何よりも彼らを打ちのめしたのは、愛と再生の女神であるエリスリリアに失望されたのだということだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
204
お気に入りに追加
11,126
あなたにおすすめの小説
思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
先にわかっているからこそ、用意だけならできたとある婚約破棄騒動
志位斗 茂家波
ファンタジー
調査して準備ができれば、怖くはない。
むしろ、当事者なのに第3者視点でいることができるほどの余裕が持てるのである。
よくある婚約破棄とは言え、のんびり対応できるのだ!!
‥‥‥たまに書きたくなる婚約破棄騒動。
ゲスト、テンプレ入り混じりつつ、お楽しみください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。