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第六章 新教会のお披露目

209 浜辺でカニパした♪

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一方は美少女。一方が美女。二人が再会を喜び抱き合う姿は見ていて目の保養になる。

「ベニちゃんはやっぱりその姿の方がしっくりくるわ♪」
「エリィちゃんも服はその色が一番似合うよ」
「本当? ふふっ。懐かしいわねえ。確か、最後に会ったのって五百年前くらい?」
「そうやねえ。海に近い国を乗っ取った頃だもの」
「あ~、そうそうっ。浜辺でカニパした♪」
「そうやった、そうやった。乱獲し過ぎて、リクト様に叱られたやつ」
「うわぁっ、懐かしいぃぃっ」

とっても盛り上がっていらっしゃる。ベニも気付いていないかもしれないが、言葉使いがいつもと違う。きっと若い頃のものだろう。けれど、コウヤが一番気になったのはそれではない。

「いいなあ。カニ……こっちに戻ってきて、まだ一度も食べてないや」

それが聞こえたらしいエリスリリアとベニが声を揃えた。

「「それはダメだわっ。今すぐ乱獲する!?」」

必死の形相だ。ちょっとびっくりした。

「それ、やってリクト兄に怒られたんでしょ? いいよ。もうすぐエアボ出来るから、それの試験も兼ねて海行ってくる」
「エアボ? ああ、コウヤちゃんが空飛ぶ暴走族になるためのやつね? へえ。もうすぐなんだぁ」

ルディエとコウヤでは身長的にも、体付きにもサーナ達に支給したバイクは不向き。そこで考えていたものだ。

「うん。見た目はサーフボードで楽しそうでしょう?」
「ふふ。お父様が作ってるところを見てブツブツ言ってたわよ」
「え、あ、見られてたんだ。そっか。今度そっちに行った時に改良点がないか聞いてみる」

きっと、色々と意見を出してくれるだろう。物作りはゼストラークが唯一夢中になれるものだ。

そんなコウヤやエリスリリア、ベニの間に入って行こうという者はおらず、ただただ驚いた様子で、誰もが成り行きを見つめていた。それに気付いたわけではないが、コウヤはエリスリリアへ話を振った。

「そういえば、ベニばあさまに会いたかっただけ?」
「ん? ああ。忘れてたわ。ねえ、ベニちゃん。ここの教会が出来たら、すぐにでも神降ろしの儀式してくれない?」
「それは構わないけど、いいの? 何度も呼ばれるの嫌だって言ってたじゃない」

神降ろしの儀式とは、その名の通り、神であるエリスリリア達を顕現させる儀式だ。もちろん、応えるかどうかは神の方が決める。邪神としてコウヤが討たれる前までは、教会を認める意味でも度々応えていた。ただし、この儀式は大巫女か大神官しか可能とはならない。

「あれは、ベニちゃん達も命令されてたでしょ? ただ教会の権威のためだけにやってたじゃない。ベニちゃん達大巫女が儀式をやると、声だけはしっかり聞こえるから、無視するのも大変なのよ」

神界に声だけは聞こえる。それも、集まった信者達の心の声も全部だ。一方的にオンラインになると言えばいいのか。とにかく煩いのだ。時間が経てば聞こえなくなるが、それでも煩いものは煩いし、不快だ。

「まあ、最近はその儀式のやり方も分からなくなってるし、大巫女や大神官の役職の称号を持ってる人が居ないから問題ないけど♪」

エリスリリア達は、コウヤが消えてからすぐに三人で密かにそれらを処分した。役職も与えないようにしていたのだが、それは口にしなかった。

「今回の件でいい加減、あの神教国の子達には愛想が尽きたのよ。今まではベニちゃん達がいたから、大目に見てやってたけど、コウヤちゃんも戻ってきたことだし、そろそろ一つにまとめても良いと思うの♪」
「なるほど。分かったわ。すぐに準備するわ」
「楽しみにしてるわ♪ それじゃあ、用も済んだし、帰るわねん♪ コウヤちゃん、今夜にでも神界で待ってるから♪ リクトとお父様の感想聞きに来てね♪」

そう言って、いつの間にかその手に現れたバスケットを掲げて見せた。

「うん。分かった」
「それじゃあねん♪ あ、そこの子達は、また後日、ここの教会ができた時の神降ろしの儀式の時にね☆」
「……っ?」

そこの子と呼ばれた王達は大混乱だ。そして、そんな中、エリスリリアは発光しながら消えていった。

エリスリリアのことを知らないアビリス王達は、ポカンと口を開けたまま光の消えた場所を見つめている。そんな中、アルキスが口を一度閉じて、誰にともなく呟いた。

「……な、なあ、今の誰なん?」

おそらく、予想は出来ているのだろう。若干震えているように見える。ベニが鼻を鳴らす。

「ふん。分かっているだろうに」
「っ、いや……でも……マジで? だってよ……神なんて……」
「エリスリリア様を見られるなんて幸運だったねえ」
「「「っ……!!」」」

今更ながらに、動揺しているようだ。そこで部屋の隅のベビーベッドからレナルカが顔を出してコウヤを呼ぶように声を出した。

「あー、あー、あ♪」
「なんかご機嫌だね? レナルカ。そろそろ行こうか」
「うだぁ♪」

コウヤが近付いて抱き上げる。

「なら、行こうかねえ。また追加で提案でもあれば、四日後に頼むよ。これから忙しいからねえ」
「ばばさま。さっきまでエリィ姉と話してた感じが良かったのに」
「ん? 何か変わっていたかい?」
「ふふ。ううん。いいんだ。ばばさまらしいから」
「そうかい?」

ベニは分かっていないようだ。それにクスクスと笑いながら、ではまたと言って、あっさりコウヤとベニに続きサーナも一礼してから部屋を出て行った。

だが、コウヤだけが忘れてたと言ってニールへ大きなバスケットを差し出す。

「これ、分けてくださいね」
「はい。お預かりいたします」
「にいさま、またすぐあえますか?」
「うん。また近いうちにね。シン様もあまり無理されないように」
「え……」

コウヤはシンリームへ小さな包みを渡した。

「塗り薬です。訓練の後は、きちんと水で手を洗ってくださいね。潰れたマメから良くないものが入りますから。手を洗った後に塗って使ってください。また今度持ってくるので、ケチっちゃダメですよ」
「っ、うん! ありがとう!」
「ふふ。ではまた」

そんな一連の光景を見ても、アビリス王達の混乱はまだ解けない。ニールがコウヤの作ったパンケーキサンドをそれぞれの前に用意し、お茶の匂いを嗅いだことで、ようやく正気付くのだった。

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読んでくださりありがとうございます◎
次回、三日空きます。
よろしくお願いします◎
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