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602 感動します?
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2017. 7. 10
**********
その気配は紛れもなく兄のレナードだとティアには分かった。
「なんで……イル君に……」
そう呟けば、イルーシュの意識が出て来た。
「ぼくがどうぞってしたの。ねぇさまに会えるよって」
イルーシュが望んだ事だと聞いて驚く。だが、悠長に話している余裕はなかった。
「ひひっ、これはこれは、派手な登場をされる」
「っ……ジェルバ……」
忌々しそうにその名を呼び、ゆっくりとそちらに目を向ける。
「そっちから来るなんて上を取っ払った甲斐はあったかな」
ティアがここへ突っ込んだ時、ジェルバの気配は、このダンスホールからは離れた場所にあった。
「女神である貴方にご足労願うなど、失礼ですからね」
「っ……」
女神と言われて反射的に火の魔術をジェルバに向けて放つ。
「おっと」
「チッ」
それをあっさり避けられ、ティアは舌打ちする。これにはジェルバもキョトンとしていた。
「……舌打ち……」
「うっさい。まったく、ここまで来させておいて失礼とか良く言うわ」
「いえ……まさか貴方にわざわざ追って来ていただけるとは思わなかったもので」
「喧嘩の売り逃げは許さないよ。高く買ってやったんだから、ちゃんと置いてきな」
そう言って、ティアは少々面食らった様子のジェルバ目掛けて今度は双剣の斬撃を飛ばす。しかし、それを受け止めたのはライダロフだった。
「くっ」
「あんた……邪魔だなぁ……」
「っ……」
とても女神とは思えない凶悪な顔をしていた。背中を向けている味方には、ジェルバとライダロフだけでなく、集まってきた黒装束の者達がギクリと身動きを止めた事の理由が分からない。
それでも、その背中から受ける気配が変わったように感じたカランタが、ティアに恐る恐る声をかける。
「……ティア?」
「うん? ああ、ちょっとイラっとしただけ。さっさと済ませるよ。兄様とお話しもしたいしね?」
「サティア……」
イルーシュの中にいるレナードが泣きそうな顔を見せる。改めてそんな彼に笑顔を見せ、ティアは敵に向き直る。
すると、そこに一人の女が現れた。
「白い……あんた、何?」
ドレスとも見て取れるが、どちらかといえば頭につけているベールが教会の者だと思わせた。
しかし、その女の正体を教えてくれたのはヒュリアだった。
「あれが国に巣食った怪しげな宗教組織の頭目ですっ」
「へぇ……女だとは聞いてたけど……趣味の悪い服を着てるんだね」
「っ……」
侮辱を受けて女の体に力が入るのが見て取れた。そして、女は一歩ずつ踏み出しながら口を開く。
「悪鬼よ。清廉なる我らを貶めようとする愚かな存在。神の願いを理解しない愚者など、この世に存在してはいけないのです」
「偉そうに……それではまるで、あんたは神の使いだと言っているように聞こえるが?」
相手をするのもくだらないと言わんばかりに、ティアは双剣を手にしたまま腕を組む。
「そのような立場だと口にするのはおこがましい。ですが……こちらには天使がいます。神の本当の使いが」
大仰に手で差し、見せたのはジェルバだ。
「黒い片翼の天使を自慢するなんて笑わせる。それとも、お前達が堕としたのか?」
「っ……何を……」
睨み付ければ臆するような弱い女。立場によって武装する事しか知らない世間知らずだ。
すると、女を守ろうと思ったのか、黒装束の者達がティアへ向かってくる。
「本当に……空気も読めんバカだな」
そう言ってティアは素早く双剣を振るう。殺す事なく、それでも向かって来た全員を城の外まで弾き出してしまった。
「え……」
女が間抜けな声を出した。そして、またティアは何事もなかったかのように腕を組んだ。
「それで? 言いたい事はそれだけなのか?」
「っ……悪魔め……っ」
女の顔が見えるようだ。それが楽しくて、ティアは艶やかに笑って見せる。
「イメージ崩れてるんじゃない?」
「……っ」
手を出す事なく、女は黙らせられそうだ。後ろからは感心したような声が聞こえる。
「……マティそっくり」
「ありがと」
しかし、それがいい意味であるかは人による。
「……性格悪いぞ、ティア」
「エル兄様、黙ってて」
「すまん……」
「本当に、マティアス様を彷彿とさせる……サティアらしいな」
「……」
レナードは嬉しそうにティアを見つめていた。それをエルヴァストは微妙な表情で見る。見た目はイルーシュなので違和感は拭えない。
温かい目と感動と、疑念という三種の視線に支えられながら、ティアは敵に対峙する。
「さて、味方も黙った所で、殲滅しようかな」
「っ、なぜ……っ、神の加護もないお前達が我らに敵対するっ」
女には分からないのだ。否定される事などあってはならない。そう思っているのだろう。
「神、神って……お前、神に会った事でもあるのか? 神の望みってなんだよ。それを理由に人様を巻き込んでんじゃねぇよっ!!」
そう言って、ティアは双剣を薙いだ。
**********
舞台裏のお話。
カイ「……イル……」
ラキア「どうされましたか?」
カイ「うん……イルが……」
ラキア「イルーシュ様に何か?」
カイ「……強いお兄さん」
ラキア「はぁ……っ、何か憑きましたか」
カイ「うん。何で分かったの?」
ラキア「あ……っ、兄達が昔……いえ、勘です」
カイ「そう……?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ちょっと苦手分野だったりします。
凶暴です。
次回、金曜14日0時です。
よろしくお願いします◎
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その気配は紛れもなく兄のレナードだとティアには分かった。
「なんで……イル君に……」
そう呟けば、イルーシュの意識が出て来た。
「ぼくがどうぞってしたの。ねぇさまに会えるよって」
イルーシュが望んだ事だと聞いて驚く。だが、悠長に話している余裕はなかった。
「ひひっ、これはこれは、派手な登場をされる」
「っ……ジェルバ……」
忌々しそうにその名を呼び、ゆっくりとそちらに目を向ける。
「そっちから来るなんて上を取っ払った甲斐はあったかな」
ティアがここへ突っ込んだ時、ジェルバの気配は、このダンスホールからは離れた場所にあった。
「女神である貴方にご足労願うなど、失礼ですからね」
「っ……」
女神と言われて反射的に火の魔術をジェルバに向けて放つ。
「おっと」
「チッ」
それをあっさり避けられ、ティアは舌打ちする。これにはジェルバもキョトンとしていた。
「……舌打ち……」
「うっさい。まったく、ここまで来させておいて失礼とか良く言うわ」
「いえ……まさか貴方にわざわざ追って来ていただけるとは思わなかったもので」
「喧嘩の売り逃げは許さないよ。高く買ってやったんだから、ちゃんと置いてきな」
そう言って、ティアは少々面食らった様子のジェルバ目掛けて今度は双剣の斬撃を飛ばす。しかし、それを受け止めたのはライダロフだった。
「くっ」
「あんた……邪魔だなぁ……」
「っ……」
とても女神とは思えない凶悪な顔をしていた。背中を向けている味方には、ジェルバとライダロフだけでなく、集まってきた黒装束の者達がギクリと身動きを止めた事の理由が分からない。
それでも、その背中から受ける気配が変わったように感じたカランタが、ティアに恐る恐る声をかける。
「……ティア?」
「うん? ああ、ちょっとイラっとしただけ。さっさと済ませるよ。兄様とお話しもしたいしね?」
「サティア……」
イルーシュの中にいるレナードが泣きそうな顔を見せる。改めてそんな彼に笑顔を見せ、ティアは敵に向き直る。
すると、そこに一人の女が現れた。
「白い……あんた、何?」
ドレスとも見て取れるが、どちらかといえば頭につけているベールが教会の者だと思わせた。
しかし、その女の正体を教えてくれたのはヒュリアだった。
「あれが国に巣食った怪しげな宗教組織の頭目ですっ」
「へぇ……女だとは聞いてたけど……趣味の悪い服を着てるんだね」
「っ……」
侮辱を受けて女の体に力が入るのが見て取れた。そして、女は一歩ずつ踏み出しながら口を開く。
「悪鬼よ。清廉なる我らを貶めようとする愚かな存在。神の願いを理解しない愚者など、この世に存在してはいけないのです」
「偉そうに……それではまるで、あんたは神の使いだと言っているように聞こえるが?」
相手をするのもくだらないと言わんばかりに、ティアは双剣を手にしたまま腕を組む。
「そのような立場だと口にするのはおこがましい。ですが……こちらには天使がいます。神の本当の使いが」
大仰に手で差し、見せたのはジェルバだ。
「黒い片翼の天使を自慢するなんて笑わせる。それとも、お前達が堕としたのか?」
「っ……何を……」
睨み付ければ臆するような弱い女。立場によって武装する事しか知らない世間知らずだ。
すると、女を守ろうと思ったのか、黒装束の者達がティアへ向かってくる。
「本当に……空気も読めんバカだな」
そう言ってティアは素早く双剣を振るう。殺す事なく、それでも向かって来た全員を城の外まで弾き出してしまった。
「え……」
女が間抜けな声を出した。そして、またティアは何事もなかったかのように腕を組んだ。
「それで? 言いたい事はそれだけなのか?」
「っ……悪魔め……っ」
女の顔が見えるようだ。それが楽しくて、ティアは艶やかに笑って見せる。
「イメージ崩れてるんじゃない?」
「……っ」
手を出す事なく、女は黙らせられそうだ。後ろからは感心したような声が聞こえる。
「……マティそっくり」
「ありがと」
しかし、それがいい意味であるかは人による。
「……性格悪いぞ、ティア」
「エル兄様、黙ってて」
「すまん……」
「本当に、マティアス様を彷彿とさせる……サティアらしいな」
「……」
レナードは嬉しそうにティアを見つめていた。それをエルヴァストは微妙な表情で見る。見た目はイルーシュなので違和感は拭えない。
温かい目と感動と、疑念という三種の視線に支えられながら、ティアは敵に対峙する。
「さて、味方も黙った所で、殲滅しようかな」
「っ、なぜ……っ、神の加護もないお前達が我らに敵対するっ」
女には分からないのだ。否定される事などあってはならない。そう思っているのだろう。
「神、神って……お前、神に会った事でもあるのか? 神の望みってなんだよ。それを理由に人様を巻き込んでんじゃねぇよっ!!」
そう言って、ティアは双剣を薙いだ。
**********
舞台裏のお話。
カイ「……イル……」
ラキア「どうされましたか?」
カイ「うん……イルが……」
ラキア「イルーシュ様に何か?」
カイ「……強いお兄さん」
ラキア「はぁ……っ、何か憑きましたか」
カイ「うん。何で分かったの?」
ラキア「あ……っ、兄達が昔……いえ、勘です」
カイ「そう……?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ちょっと苦手分野だったりします。
凶暴です。
次回、金曜14日0時です。
よろしくお願いします◎
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