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541 町は発展しています
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2016. 12. 14
**********
記憶に引っかかったその人の事を思い出そうと考え込むティアに、シェリスが声をかける。
「知っているのですか?」
シェリスは、ないだろうと思いながらも尋ねた。
「う~ん……思い出せない……他に何かない?」
「そうですねぇ……後覚えているのは、別れる時にゲルヴァローズの遺石を貰ったという事くらいでしょうか」
「あぁ。その人なんだ」
一緒に発見した人がいるとは聞いていた。その人に譲り受けたと言っていたのだ。
「確かその人、歴史を調べながら旅をしてたって聞いたような……」
それを聞いた時、とても羨ましく思ったものだ。ティアも歴史には興味があった。だから、冒険者になって、旅をしながら、色々な土地を見て回る事が夢だったのだ。
「そうです。一度、その方の残した書物でもないかと尋ねた事がありました」
残念ながら、それはないと聞き、シェリスは肩を落としたという。
「気になるなぁ……」
夢で会ったマティアスが言っていた事を思い出そうと頭を捻る。
「その人が母様が、見つけて一発殴ってくれって言った人だと思うんだよね。あと何て言ってたかなぁ」
あれも夢の中だ。時間が経つにつれ、記憶が薄れて曖昧になっていく。
「そういえば、人ではなかったと言っていたような……それで、魔族かと聞いても違うと……結局なんと答えたのでしたか……」
シェリスも記憶を全て覚えているわけではない。ただ、シェリスにとってもはじめて出来た仲間。その為に、マティアスとの思い出はかなり覚えているのだ。
「曖昧だね……何か思い出したら教えてよ。私も、何かの拍子に思い出すかもだし」
「そうですね。分かりました」
早々に思い出す努力を放棄するティアとシェリスだった。
◆◆◆◆◆
ティアは双子をサルバへ連れて行った次の日の放課後、今度はディムースに来ていた。
理由は、ファルに会う為だ。
ファルはここ最近、サルバとディムースを行き来していなかった。
「ファル兄」
「……ティア……」
訓練場となっている、ディムースの闘技場。そこにファルがいた。
「トゥーレ良さそう?」
「……あぁ……クロノスの教え方も良かった……」
「そっか」
かつて、スィールと名乗り、組織に神笛の使い手として利用されていた青年。ファルは彼を鍛えているのだ。
本当は、クロノスの弟子となったのだが、彼は組織からの追っ手が掛かる恐れがある。その為に、最も安全なディムースに滞在しているのだ。
そうして、クロノスがいない間は、ファルが見ていた。
トゥーレとティアから名をもらった彼は、ティアに捕まる前、右腕を失っていた。
いくらティアでも、斬り落とされてしまった腕を再生させる手段は持たなかったのだ。しかし今、彼は義手を着けて生活していた。
「そんな違和感もない……かな」
つい先日、ドワーフや魔族の技術者をこの町に招く事が出来たのだ。
それぞれ工房を用意し、商売をしてもらう事になった。
ドワーフは本来気難しいが、豪嵐のメンバーだったダグストールの血縁の者が来てくれたのだ。
彼は変わり者で、ダグストールに似ているようだ。ドワーフの国を出るのも厭わず、かなり友好的だ。
いつか冒険者になる事が夢であったという彼は、戦う術を持たない事でそれを諦め、それでも外の国で店を持ちたいと思っていたらしい。
「動きも良いし、調子も良さそうだね」
「……すごい技術だ……」
「うん。きっと需要があるよね」
それは、ドワーフの技術と、魔族の技術が合わさって出来たもの。
ティアが掛け合って実現したこの技術は、トゥーレの動きを見るに、成功のようだ。
「……それで……何かあったか……」
ティアが、わざわざこれを見に来たわけではないだろうとファルが問い掛ける。
「うん。ちょっと相手をしてもらいたくて」
「……誰のだ……」
ファルは、ティアがこういう時は、誰か鍛えてほしい人がいるのだと思っていた。しかし、見回してもティア以外いない。
そんな様子を見て、ティアはニヤリと笑ったのだった。
**********
舞台裏のお話。
町人A「ティア様だ」
町人B「久し振りにお姿を見たな」
町人A「あっちは闘技場だな。ファル様に用事か」
町人C「トゥーレの様子見かもね」
町人A「そういやぁ、義手って言うんだったか? あの偽物の手。スゲェよなっ」
町人B「あんなの、初めて見たよな。あれも、ティア様が考えたんだろう?」
町人C「そうよっ。それで、トゥーレさんのが上手くいったら、国に広めるんですって」
町人A「けど、あれを作れるのなんて、ドワーフと魔族の人だけだろう? この町の専売になるだろうな」
町人C「そうね……普通じゃぁ、無理よね」
町人B「そうなると、また町に来る人が増えるな……よしっ、俺ももっと鍛えるか」
町人A「そうだな。町の平和は守らねぇとなっ」
町人C「私も戦えるようになるわよっ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
こうして、クィーグだけじゃなく、町の人達も強くなります。
義手、義足は、この世界では需要がありそうです。
シェリスもティアちゃんも歳なのでしょうか。
記憶が曖昧でした。
では次回、一日空けて16日です。
よろしくお願いします◎
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記憶に引っかかったその人の事を思い出そうと考え込むティアに、シェリスが声をかける。
「知っているのですか?」
シェリスは、ないだろうと思いながらも尋ねた。
「う~ん……思い出せない……他に何かない?」
「そうですねぇ……後覚えているのは、別れる時にゲルヴァローズの遺石を貰ったという事くらいでしょうか」
「あぁ。その人なんだ」
一緒に発見した人がいるとは聞いていた。その人に譲り受けたと言っていたのだ。
「確かその人、歴史を調べながら旅をしてたって聞いたような……」
それを聞いた時、とても羨ましく思ったものだ。ティアも歴史には興味があった。だから、冒険者になって、旅をしながら、色々な土地を見て回る事が夢だったのだ。
「そうです。一度、その方の残した書物でもないかと尋ねた事がありました」
残念ながら、それはないと聞き、シェリスは肩を落としたという。
「気になるなぁ……」
夢で会ったマティアスが言っていた事を思い出そうと頭を捻る。
「その人が母様が、見つけて一発殴ってくれって言った人だと思うんだよね。あと何て言ってたかなぁ」
あれも夢の中だ。時間が経つにつれ、記憶が薄れて曖昧になっていく。
「そういえば、人ではなかったと言っていたような……それで、魔族かと聞いても違うと……結局なんと答えたのでしたか……」
シェリスも記憶を全て覚えているわけではない。ただ、シェリスにとってもはじめて出来た仲間。その為に、マティアスとの思い出はかなり覚えているのだ。
「曖昧だね……何か思い出したら教えてよ。私も、何かの拍子に思い出すかもだし」
「そうですね。分かりました」
早々に思い出す努力を放棄するティアとシェリスだった。
◆◆◆◆◆
ティアは双子をサルバへ連れて行った次の日の放課後、今度はディムースに来ていた。
理由は、ファルに会う為だ。
ファルはここ最近、サルバとディムースを行き来していなかった。
「ファル兄」
「……ティア……」
訓練場となっている、ディムースの闘技場。そこにファルがいた。
「トゥーレ良さそう?」
「……あぁ……クロノスの教え方も良かった……」
「そっか」
かつて、スィールと名乗り、組織に神笛の使い手として利用されていた青年。ファルは彼を鍛えているのだ。
本当は、クロノスの弟子となったのだが、彼は組織からの追っ手が掛かる恐れがある。その為に、最も安全なディムースに滞在しているのだ。
そうして、クロノスがいない間は、ファルが見ていた。
トゥーレとティアから名をもらった彼は、ティアに捕まる前、右腕を失っていた。
いくらティアでも、斬り落とされてしまった腕を再生させる手段は持たなかったのだ。しかし今、彼は義手を着けて生活していた。
「そんな違和感もない……かな」
つい先日、ドワーフや魔族の技術者をこの町に招く事が出来たのだ。
それぞれ工房を用意し、商売をしてもらう事になった。
ドワーフは本来気難しいが、豪嵐のメンバーだったダグストールの血縁の者が来てくれたのだ。
彼は変わり者で、ダグストールに似ているようだ。ドワーフの国を出るのも厭わず、かなり友好的だ。
いつか冒険者になる事が夢であったという彼は、戦う術を持たない事でそれを諦め、それでも外の国で店を持ちたいと思っていたらしい。
「動きも良いし、調子も良さそうだね」
「……すごい技術だ……」
「うん。きっと需要があるよね」
それは、ドワーフの技術と、魔族の技術が合わさって出来たもの。
ティアが掛け合って実現したこの技術は、トゥーレの動きを見るに、成功のようだ。
「……それで……何かあったか……」
ティアが、わざわざこれを見に来たわけではないだろうとファルが問い掛ける。
「うん。ちょっと相手をしてもらいたくて」
「……誰のだ……」
ファルは、ティアがこういう時は、誰か鍛えてほしい人がいるのだと思っていた。しかし、見回してもティア以外いない。
そんな様子を見て、ティアはニヤリと笑ったのだった。
**********
舞台裏のお話。
町人A「ティア様だ」
町人B「久し振りにお姿を見たな」
町人A「あっちは闘技場だな。ファル様に用事か」
町人C「トゥーレの様子見かもね」
町人A「そういやぁ、義手って言うんだったか? あの偽物の手。スゲェよなっ」
町人B「あんなの、初めて見たよな。あれも、ティア様が考えたんだろう?」
町人C「そうよっ。それで、トゥーレさんのが上手くいったら、国に広めるんですって」
町人A「けど、あれを作れるのなんて、ドワーフと魔族の人だけだろう? この町の専売になるだろうな」
町人C「そうね……普通じゃぁ、無理よね」
町人B「そうなると、また町に来る人が増えるな……よしっ、俺ももっと鍛えるか」
町人A「そうだな。町の平和は守らねぇとなっ」
町人C「私も戦えるようになるわよっ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
こうして、クィーグだけじゃなく、町の人達も強くなります。
義手、義足は、この世界では需要がありそうです。
シェリスもティアちゃんも歳なのでしょうか。
記憶が曖昧でした。
では次回、一日空けて16日です。
よろしくお願いします◎
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