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443 密会でしょうか
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2016. 6. 28
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卒業式があった日の夜。
学寮から荷物も一旦引き揚げ、アデルとキルシュは両親達とヒュースリーの学園街にある別邸で泊まる事になった。
そんな中、ティアは夜中に屋敷を抜け出し、王宮へ来ていた。
「こんばんは。王様、お妃様方」
忍び込んだのは王宮の奥にある離宮。そのテラスにふわりと降り立った。
「時間ぴったりだな」
「引き止められませんでしたか?」
王と王妃が笑顔で迎え入れる。
「皆、昼間に騒ぎ過ぎたみたいで、早々に眠ってました」
フィスタークとシアンは勿論、泊まっているキルシュとアデルの両親も、思いの外楽しく過ごしていたらしい。小学部の卒業式が終わってからなので、丸っと半日宴会気分だったようだ。
「コリアートもか?」
「もちろん。侯爵の場合は、特に前の晩から結婚式の事で父と話し合ってましたからね」
「そうか。もうすぐだったな」
「ええ、これで私も少し肩の荷が下りますよ」
そう言って王と王妃の向かいに座る。
そこへ、お茶を持って来たのはエルヴァストの母で側妃のエイミールだ。
「エルも楽しみにしているようです」
「ふふっ、多分一番兄の結婚を喜んでいるのはエル兄様ですね。日取りを決めたと報告した時に泣かれたと言っていましたから」
「あの子ったら……」
苦笑を浮かべているが、本心は違う。親友と呼べる者が出来、その友の幸せを喜べる今のエルヴァストを誇らしく、また嬉しく思っているのだ。
そんなエイミールの表情を見て、王が申し訳なさそうに言った。
「レイナルートの結婚が決まらんからなぁ。エルの結婚も考えてやれずすまんな」
「よろしいのですよ。今はレイナルート様のお相手を見極めるのが先決です」
王太子であり、エルヴァストの兄であるレイナルートは、現在二十歳。十八で結婚する事も珍しくはないが、未だに結婚を決めかねていた。
「心配しなくても、エル兄様の相手はもう決まっていますから、気兼ねなく王太子様の方を考えてください」
エルヴァストの方は気にする必要はない。心は既にかなり前から決まっているのだ。その気になればティアは勿論、周りの者も協力するので問題はない。
「そのエルの相手は気になるんだがなぁ。まだ教えてはもらえんのか?」
「エル兄様だって男としてのプライドがあるでしょう。ちゃんとエル兄様から紹介してもらってくださいな」
「ま、まぁ、そうか」
まだアプローチ出来ていないのにこの人だと王達に知らせるのは良くないだろう。相手はラキアなのだ。王が調査など、少しでもラキアの周りをうろつけば怪しまれるどころか目的など全て暴かれてしまう。
そうなれば、エルヴァストが想いを告げる前にばれてしまうことになる。それでは台無しだ。
「あぁ、そうだ。遅くなったが、卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
まるで娘に対するような喜びを笑みに含み、王が言う。
「今日の送辞、とても感動しましたわ」
フェルマー学園の高学部の卒業式には毎年、王と王妃が出席する。今日の卒業式にも当然来ていたのだ。
「良かった。誰も褒めてくれなかったので、ちょっと自信をなくしていたところです」
「あら。どうして? あんなに素晴らしい送辞でしたのに」
苦笑するティアに、王妃が目を丸くする。王も王妃と同意見のようで、同じく不思議そうな顔をしていた。
「それは、ご友人達ですか?」
そう笑いながら言い当てたのは、隣に腰掛けたエイミールだ。
「ええ。キルシュには寒気がしたと言われるし、アデルには心にもない事をと言われましたね」
「まぁ。うふふふっ」
「はっはっはっ、それは酷いな」
二人に笑われ、ティアは不貞腐れたように続けた。
「ウルさんには相変わらず何か裏があるようで怖いって怯えられるし、こう、素直に受け止められない人達ばっかりで困ります」
それだけティアラールの印象とティアの実態がかけ離れてしまっているという事だ。
「なるほどなぁ。もういっそのこと本性を見せてしまってはどうだ?学園ではまだ演技しているのだろう?」
「それは思ったんですけど、周りが止めるんですよね」
「そうか。まぁ、神教会の者達も大変な事になるだろうしな……うむ。やはり現状維持で頼む。今国内がごたつくのは避けたいからな」
そう言った王の顔は、国王としての顔をしていた。
************************************************
舞台裏のお話。
シアン「眠ってしまいましたわね」
ドーバン夫人「ふふっ、まったく夫には困ったものですわ。結婚を目前にして、ようやく娘の父親としての顔をするんですもの」
シアン「でもそれだけ、ユフィアちゃんを見ているということですわね」
ドーバン夫人「ええ。今までまったく目を掛けてこなかったというのに、都合の良い話です」
シアン「娘って、やっぱり男親にとっては特別なのでしょうね」
ドーバン夫人「そうなのかもしれませんわね……ドーバン家は男系で、特に扱い方が分からなかったというのもありますわ。わたくしがもっとしっかりしなくてはならなかったのに……あの子には辛い思いをさせました」
シアン「後悔されていますの?」
ドーバン夫人「ええ……いつ謝ろうかと最近、ずっと考えています」
シアン「では、それは結婚式の日に。私達親にとっても、大切な日になりますわ。夫婦の結びつきだけでなく、親と子の関係も深く結びつく日だと思うのです。死ぬまで親と子ですけれど、人として、今度は手を引かず、隣を歩いていくわよって伝える日なのだと思いますわ」
ドーバン夫人「そうですわね」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
母の愛です。
いつの間にか親交を深めています。
王と王妃とエル兄ちゃんの母親とで仲良くお茶会です。
話すことは世間話だけではありません。
では次回、一日空けて30日です。
よろしくお願いします◎
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卒業式があった日の夜。
学寮から荷物も一旦引き揚げ、アデルとキルシュは両親達とヒュースリーの学園街にある別邸で泊まる事になった。
そんな中、ティアは夜中に屋敷を抜け出し、王宮へ来ていた。
「こんばんは。王様、お妃様方」
忍び込んだのは王宮の奥にある離宮。そのテラスにふわりと降り立った。
「時間ぴったりだな」
「引き止められませんでしたか?」
王と王妃が笑顔で迎え入れる。
「皆、昼間に騒ぎ過ぎたみたいで、早々に眠ってました」
フィスタークとシアンは勿論、泊まっているキルシュとアデルの両親も、思いの外楽しく過ごしていたらしい。小学部の卒業式が終わってからなので、丸っと半日宴会気分だったようだ。
「コリアートもか?」
「もちろん。侯爵の場合は、特に前の晩から結婚式の事で父と話し合ってましたからね」
「そうか。もうすぐだったな」
「ええ、これで私も少し肩の荷が下りますよ」
そう言って王と王妃の向かいに座る。
そこへ、お茶を持って来たのはエルヴァストの母で側妃のエイミールだ。
「エルも楽しみにしているようです」
「ふふっ、多分一番兄の結婚を喜んでいるのはエル兄様ですね。日取りを決めたと報告した時に泣かれたと言っていましたから」
「あの子ったら……」
苦笑を浮かべているが、本心は違う。親友と呼べる者が出来、その友の幸せを喜べる今のエルヴァストを誇らしく、また嬉しく思っているのだ。
そんなエイミールの表情を見て、王が申し訳なさそうに言った。
「レイナルートの結婚が決まらんからなぁ。エルの結婚も考えてやれずすまんな」
「よろしいのですよ。今はレイナルート様のお相手を見極めるのが先決です」
王太子であり、エルヴァストの兄であるレイナルートは、現在二十歳。十八で結婚する事も珍しくはないが、未だに結婚を決めかねていた。
「心配しなくても、エル兄様の相手はもう決まっていますから、気兼ねなく王太子様の方を考えてください」
エルヴァストの方は気にする必要はない。心は既にかなり前から決まっているのだ。その気になればティアは勿論、周りの者も協力するので問題はない。
「そのエルの相手は気になるんだがなぁ。まだ教えてはもらえんのか?」
「エル兄様だって男としてのプライドがあるでしょう。ちゃんとエル兄様から紹介してもらってくださいな」
「ま、まぁ、そうか」
まだアプローチ出来ていないのにこの人だと王達に知らせるのは良くないだろう。相手はラキアなのだ。王が調査など、少しでもラキアの周りをうろつけば怪しまれるどころか目的など全て暴かれてしまう。
そうなれば、エルヴァストが想いを告げる前にばれてしまうことになる。それでは台無しだ。
「あぁ、そうだ。遅くなったが、卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
まるで娘に対するような喜びを笑みに含み、王が言う。
「今日の送辞、とても感動しましたわ」
フェルマー学園の高学部の卒業式には毎年、王と王妃が出席する。今日の卒業式にも当然来ていたのだ。
「良かった。誰も褒めてくれなかったので、ちょっと自信をなくしていたところです」
「あら。どうして? あんなに素晴らしい送辞でしたのに」
苦笑するティアに、王妃が目を丸くする。王も王妃と同意見のようで、同じく不思議そうな顔をしていた。
「それは、ご友人達ですか?」
そう笑いながら言い当てたのは、隣に腰掛けたエイミールだ。
「ええ。キルシュには寒気がしたと言われるし、アデルには心にもない事をと言われましたね」
「まぁ。うふふふっ」
「はっはっはっ、それは酷いな」
二人に笑われ、ティアは不貞腐れたように続けた。
「ウルさんには相変わらず何か裏があるようで怖いって怯えられるし、こう、素直に受け止められない人達ばっかりで困ります」
それだけティアラールの印象とティアの実態がかけ離れてしまっているという事だ。
「なるほどなぁ。もういっそのこと本性を見せてしまってはどうだ?学園ではまだ演技しているのだろう?」
「それは思ったんですけど、周りが止めるんですよね」
「そうか。まぁ、神教会の者達も大変な事になるだろうしな……うむ。やはり現状維持で頼む。今国内がごたつくのは避けたいからな」
そう言った王の顔は、国王としての顔をしていた。
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舞台裏のお話。
シアン「眠ってしまいましたわね」
ドーバン夫人「ふふっ、まったく夫には困ったものですわ。結婚を目前にして、ようやく娘の父親としての顔をするんですもの」
シアン「でもそれだけ、ユフィアちゃんを見ているということですわね」
ドーバン夫人「ええ。今までまったく目を掛けてこなかったというのに、都合の良い話です」
シアン「娘って、やっぱり男親にとっては特別なのでしょうね」
ドーバン夫人「そうなのかもしれませんわね……ドーバン家は男系で、特に扱い方が分からなかったというのもありますわ。わたくしがもっとしっかりしなくてはならなかったのに……あの子には辛い思いをさせました」
シアン「後悔されていますの?」
ドーバン夫人「ええ……いつ謝ろうかと最近、ずっと考えています」
シアン「では、それは結婚式の日に。私達親にとっても、大切な日になりますわ。夫婦の結びつきだけでなく、親と子の関係も深く結びつく日だと思うのです。死ぬまで親と子ですけれど、人として、今度は手を引かず、隣を歩いていくわよって伝える日なのだと思いますわ」
ドーバン夫人「そうですわね」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
母の愛です。
いつの間にか親交を深めています。
王と王妃とエル兄ちゃんの母親とで仲良くお茶会です。
話すことは世間話だけではありません。
では次回、一日空けて30日です。
よろしくお願いします◎
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