女神なんてお断りですっ。

紫南

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306 過去編 16 危険な物です

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2015. 12. 20
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サティアは探し物に夢中になっていた為、唐突に外が静かになった事に気付いていなかった。

先程探し当てた神具の気配は濃さを増し、その存在を強く主張している。お陰で、他の不穏な気配を探るのが集中しないと難しくなっていたのだ。

「これも違う……あとは……」

ぶつぶつと無意識に呟きながら、次に感じる気配を辿る。そして、ようやくそれを見つけ出す事ができた。

「あった。ナイフ……黒い鞘と柄……ね。うん。あ~、なんか抜かない方が良さそうだから刀身を確認するのはやだなぁ……」

そのナイフを手に取って分かった。かなりの力が込められているが、鞘がしっかりとその力を押さえ込んでいるのだ。

「すごいなぁ。どんな魔術が込められてるんだろう」

一瞬抜いてみたい衝動に駆られるが、サティアにはこれが、とても危険なものだと分かるのだ。

「抜かないぞ。さて、サクヤさんに……っ」

その時、ナイフや未だに主張を続ける神具のせいで、背後まで迫っていた盗賊の男の気配に気付けなかった。

「ぐわぁぁぁぁっ、ぐっ」
「っ……あ……」

撃退してしまったのは、完全に条件反射だ。

サティアは手に持っていたサクヤの呪いのナイフを抜き放ち、今まさにサティアへと向かって振り下ろそうとしていた男のナイフを持った腕を、斬り飛ばしたのだ。

それだけでは終わらず、腕を斬り飛ばした事実を確認するより先に、更に綺麗な流れるような動作で、男を入り口近くまで回し蹴りによって吹き飛ばしていたのだった。

「ぐぅ……」

お陰で、男はそれ程苦しまず、一気に意識を飛ばすことが出来たようだ。

「ほぉ。ふふふっ、さすがは私の娘。だが……腕はどこへいった?」
「へ?母様?」

そこに現れたのは、久方ぶりに見る冒険者姿の母、マティアスだった。

「笑い事ではないよ。でも、確かに……切り口も何かおかしいね……」

マティアスの隣には、カルツォーネが立っており、じっくりと男の切られた腕の切り口を観察していた。

「ふむ……あの黒い粉かな」
「粉だと?」

次に部屋を見回したカルツォーネが、一部の床に短い棒があったように黒い砂が散らばる部分へと歩み寄る。

「水晶の細かい欠片のようにも見えるけれど、サティアが持っているナイフの力を感じるよ」
「あ……」

そこでサティアは、手にしていたナイフを抜き放ったままであった事に気付いた。

その刀身は、思った通り黒く光り、美しかった。見惚れては危ないと、冷静な頭で慌てて鞘へと戻す。

「あら?もしかして、使っちゃった?」
「サクヤ。どうゆう事だ?」

マティアスが、遅れて顔を覗かせたサクヤへ、その綺麗な眉根を寄せて問い掛けた。

「やだ、マティったら怖い顔☆」
「自慢の尻尾を切り落とされたくなれけばシャキッと答えろ」
「うぅっ……久し振りに会ったのに冷たい……っ、ご、ごめんなさぁいっ。言いますっ、言いますからっ」

サクヤとしては、十数年振りの再会であったマティアスとの穏やかな語らいが希望だったのだが、マティアスにその余裕はなかった。

母となったマティアスは、そうは見えなくとも、娘であるサティアを大事に思っている。久方ぶりの友人との語らいより、おかしな力を持ったナイフを使った事で害がないかとの心配が先に立ったのだ。

「え、えっと、使った方に害はないのよ?『呪いの~』なんて言ってるけど、身を護る為の武器でしかないの。ただ、切りつけた所が結晶化しちゃったりするんだけどね。どうゆう理屈か分かんないんだけど、生き物とかだと、切り離した所は、瞬時に結晶化してこうやって粉になって砕けちゃうのよ……」
「……」

怖すぎる。万が一、自身を傷付けたりしたらどうするつもりなのか。

「危険だね」
「良くないな」
「なんかやだぁ」
「ちょっ、ちょっと、今すぐに処分しようっ、みたいな目で見ないでよっ。彼氏からのプレゼントなのよっ⁉︎」

サティアが、もう持ちたくないと摘み持つナイフに、カルツォーネとマティアスが鋭い目を向けるのを慌ててサクヤは遮る。そして、サティアからナイフを取ると、大切な物を抱き締めるように愛しげに胸に抱いた。

その様子をしばらく見つめていたマティアスは、何かを思い付つく。

「おい、サクヤ。ついでにそこの横笛を持ってこい」
「はぁ?ついでって……横笛ってこれ?ちょっ、な、なんか嫌な感じするわよっ?」

サクヤは、違和感を感じながらも、抵抗なくひょいっと神具を持ち上げた。

「心配ない。お前は鈍いからな」
「どうゆう意味よっ⁉︎」
「良いから持って来い。城へ……いや、待て……寄り道をするか……」
「どこにっ?」

マティアスのこの呟きに、サティアが真っ先に食らいついた。

「ふっ、行ってみたいと言っていただろう。ダンジョンだ」
「っダンジョンっ⁉︎ 私も行って良いのっ⁉︎」
「あぁ、見せてやろう」

今のサティアには、転がる男の事などちょっと邪魔な障害物でしかない。それを飛び越え、喜びのあまりマティアスへと満面の笑顔で駆け寄る。

「ちょっと、見せるって、まさかあそこ?」
「サク姐は苦手でしたね。彼女・・が」
「うっ、仕方ないじゃない。合わないんだもの」

気まずげに顔を歪めるサクヤに、カルツォーネはくすくすと笑う。

「似ているからじゃないのか?お前のは同族嫌悪だろうと、前にシェリーが言っていた」
「……あの変態エルフっ……」

ギリギリと歯を擦るサクヤの様子を目の端に捉え、サティアは不思議そうにマティアスへと尋ねた。

「誰かに会いにいくの?」
「そうだ。私達の創り上げた……というか、改造したダンジョンの主……妖精王にな」
「妖精王っ⁉︎」

得意気に笑いながら口にしたマティアスの言葉に、物語でしか知らない妖精の存在を聞いたサティアは驚愕するのだった。


************************************************
舞台裏のお話。

騎士A「こ、ここか?」

アリア「そのようです……」

騎士B「ここまで酷いと、盗賊でも同情する……」

アリア「い、一応、全員生きてはいるようですね……」

魔術士A「我々はどうすれば?」

アリア「あ、この奥に宝物庫があるそうですので、そちらにお願いします」

魔術士B「我々が運び出すのですか?」

アリア「いえ、ただ……危険な魔導具や呪いの何とかと言われても、騎士であるこちらには分からない物も多いので、選別をお願いします」

魔術士C「なんか、すっごい奴がありそうだ」

アリア「はいっ。マティアス様が危険と判断していますから」

魔術士達「「「……」」」

騎士達「「「……」」」

アリア「あ……言うべきではありませんでしたね……」

魔術士A「ですね……一気に不安になりました」

魔術士B「帰っても良いですか?」

魔術士C「丸ごと焼き払ってしまいましょう」

アリア「いやいや、ダメですってっ。今回のこれは、王命ですよっ⁉︎」

騎士A「マティアス様がやった事にすれば……」

騎士B「サティア様が、おかしな実験をしたという事にしてもいけるかもな」

騎士C「豪嵐が通ったのだと言えば問題ない」

魔術士達「「「賛成です!」」」

アリア「……」

シル「アリア殿。マティアス様からお預かりいたしました。拝読ください。失礼いたします」

アリア「あ、は、はい……え?マ、マティアス様からっ?…………」

騎士達A「なんと?」

アリア「……『サティの命を軽んじる奴は、全員、赤白の宮殿に連れてこい』……だそうです……」

騎士達「「「さぁ、やるぞ!」」」

魔術士達「「「宝はどこだ!」」」

アリア「え?あれ?皆さん……?」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


俄然ヤル気が出たようです。
後始末……頑張れ。


ようやくこのエピソードが見えました。
晶腐石を取りに行った時でしたか……カル姐さんが、楽しそうに話していたお話です。
マティアス母さんも久し振りな気がします。
冒険者な王妃様です。
ダンジョンにいるのは妖精王だとか。
今も居るのか……?


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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