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265 強く生きてます
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2015. 10. 23
********************************************
ティア達子ども組は、食事を終えると、ルクスとクロノスを保護者役として連れ、サルバの冒険者ギルドへと向かっていた。
「アデルも話を聞かなくてよかった?」
「うん。だって、うちのご先祖様の事でしょ?あたしは父さん達みたいにはもう気にしてないし、これも……今は結構自慢なんだ」
そう言って、アデルは自分のこめかみを指差して笑った。
「そっか。まぁ、ファル兄の事なら、私も話せるしね。いつでも聞いてくれればいいよ」
ティアと出会った頃の、暗い影は今のアデルにはない。全てを受け入れ、自信を持って笑う事が出来ているのだ。そんなアデルに、ティアも嬉しくなる。だから、少々注意が足りなかった。
「そうなの?でも、竜人族だし、ティアも会った事ないんだよね?なんでファル兄って呼ぶの?」
そう言うアデルと共に、聞いていた一同がティアへと目を向ける。その気配が、一番前を歩くティアの背中に突き刺さった。
それにティアは、内心の動揺を隠してニヤリと笑みを浮かべる。
「ファル兄はねぇ。すっごいお兄ちゃんって感じでね。火王をちょい若くしたみたいって言ったら分かりやすいかも」
苦労性なんだけど、優しいお兄ちゃんなんだよとティアは話す。
「へぇ~、会ってみたいなぁ」
隣を歩くアデルは、想像を膨らませるように目線を上へと上げた。
これで誤魔化せればしめたものと思っていたティアだが、そろそろ、そう簡単に引っかからない者がいる。
「それで、ティアはその人にどこで会ったんだ?」
訊ねたのはルクスだ。
最近のルクスは、こういう細かい所に気付いて、すかさず突いてくる。だからティアは、しっかりと心構えだけはしていた。
「うん?やだなぁ……本当に知りたいの?」
「っ……」
振り返り、目を鋭く細めて試すように言うティアに、ルクスがぐっと口を引き結ぶ。それを確認し、口を開かせない為に畳み掛ける。
「シェリーやカル姐の関係者だもん。知っててもおかしくないじゃん」
シェリスとカルツォーネとの関係についての疑問は、長く保留になっていた為、ルクス達の中では既に『そういうもの』と固定化されているのだ。今更、どう知り合ったのかなどと無闇に追及してはこないので、これに乗じて今回も、うやむやにする作戦だ。
「それに私は、ヒミツをいっぱい秘めた女の子だもん」
「……そ、そうだったか……」
昔から、この言葉に弱いルクスだ。
「ふふっ、ティアさんらしいですね。『女はヒミツで出来ている』って、聞いた事がありますわ。なんだか、ティアさんにぴったりです」
「いや、それは多分、半分以上は冗談のつもりで言われていると思うんだ……」
「そうだな。だが、ティアの場合は冗談ではなく、事実だろう」
年長組の三人は、仲良く並んで話す。
「クロノスはどう思う?」
エルヴァストが、最後尾を歩くクロノスへと話を振る。
「私などには、ティア様の全てを理解する事はできないでしょう」
クロノスは、静かにそう言った。
「ほぉ。不安ではないのか?」
そう訊ねるエルヴァストに、クロノスは晴れやかな笑みを浮かべて答えた。
「私もルクスも、ティア様ならば、いつかはその秘密を打ち明けてくださると信じていますから」
「成る程。主従の信頼とは素晴らしいな」
感心するエルヴァストの隣で、ベリアローズとユフィアも満足気に頷いている。もちろん、クロノスのそんな真っ直ぐな言葉は、ティアにも聞こえていた。
「クロちゃん……最近、ちょい眩しいなぁ……」
「ティア。それって、後ろめたい何かがあるからじゃない?」
「アデル……はっきり言ってやるな」
ティアが弱ったように表情を引きつらせるのを見て、アデルは素直な意見を言った。それに、キルシュが少々フォローを入れる。
そんな珍しくダメージを受けている様子のティアを知らず、ルクスが追いうちをかけた。
「ティア。待ってるからな」
「うっ……」
悪い事をしている訳ではないのだが、その純粋な想いや言葉は、ティアの心に突き刺さる。
「ティア……あれだよ。やっぱり、真っ当に生きるって大事なんだよ」
「え~っと、待ってね、アデル……っ私が真っ当じゃないと?」
それにアデルとキルシュが揃って重く頷いた。
「えぇっ、マジでっ?ガチでっ?どこがっ!?」
「「ほとんど全部」」
「うわぁ……即答された……」
ただちょっと、隠し事をしているだけの話だった筈が、はっきりとダメ出しをされてしまった。
こんな時、落ち込んで己を見つめ直すのが大半だろう。しかし、そこは常識外れなティアだ。しっかりと捻くれていた。
「ふんっ、いいもん。それならそれで極めてやるんだからっ。後ろめたい気持ちなんてちっとも感じない、図太い神経で生きてやるっ」
そう一人、拳を握り締めて宣言するティアに、またもアデルが素直に告げた。
「ティアの神経は、もう充分図太いよ?」
「……」
その時のアデルの笑顔が一番眩しかった。
************************************************
舞台裏のお話。
ユメル「今日もなんとかなったね……」
カヤル「うん。本当に……」
ラキア「二日連続で侵入に成功するなんて兄さん達、やるね」
ユメル「ほめられた……」
カヤル「ラキアにほめられた……」
ラキア「なに?いつもは私に何か不満があると?」
ユメル「ううんっ、そんな事ないよっ」
カヤル「うんうんっ、満足してますっ」
ラキア「そう。なら、あっちの庭と屋根の整備を頼もうかな」
ユ・カ「「……」」
ラキア「兄さん達?不満はないんだよね?」
ユ・カ「「っもちろんですっ!」」
ラキア「それじゃ、よろしく」
ユ・カ「「はい!!」」
ラキア「ふぅ……兄さん達はこれでいい……それで、何のご用でしょうか」
謎の人「……気付いていたか……」
ラキア「ええ。ですが、兄達も気付いていましたよ?ただ、何もしない方には、反応しないだけです」
謎の人「……そうか……」
ラキア「では、ご用件をお聞きしましょう。こうして、わざわざ学園の外まで来られたのですから」
謎の人「あぁ……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
何者でしょうね。
兄達もマヌケではないです。
アデルは逞しく育っています。
そして、うっかりなティアちゃん。
まだまだ打ち明けるには早いかもしれませんね。
クロちゃんは、本当に昔の毒素が抜けて、とても清浄な人になってしまいました。
腹黒なティアちゃんには眩しいようです。
ルクスは今一歩といった所でしょうか。
もう少し強気にいって欲しかった。
これからシェリスに会いに行くんですからね。
ポイントを稼ぐべき所だったかもしれません。
では次回、一日空けて25日です。
よろしくお願いします◎
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ティア達子ども組は、食事を終えると、ルクスとクロノスを保護者役として連れ、サルバの冒険者ギルドへと向かっていた。
「アデルも話を聞かなくてよかった?」
「うん。だって、うちのご先祖様の事でしょ?あたしは父さん達みたいにはもう気にしてないし、これも……今は結構自慢なんだ」
そう言って、アデルは自分のこめかみを指差して笑った。
「そっか。まぁ、ファル兄の事なら、私も話せるしね。いつでも聞いてくれればいいよ」
ティアと出会った頃の、暗い影は今のアデルにはない。全てを受け入れ、自信を持って笑う事が出来ているのだ。そんなアデルに、ティアも嬉しくなる。だから、少々注意が足りなかった。
「そうなの?でも、竜人族だし、ティアも会った事ないんだよね?なんでファル兄って呼ぶの?」
そう言うアデルと共に、聞いていた一同がティアへと目を向ける。その気配が、一番前を歩くティアの背中に突き刺さった。
それにティアは、内心の動揺を隠してニヤリと笑みを浮かべる。
「ファル兄はねぇ。すっごいお兄ちゃんって感じでね。火王をちょい若くしたみたいって言ったら分かりやすいかも」
苦労性なんだけど、優しいお兄ちゃんなんだよとティアは話す。
「へぇ~、会ってみたいなぁ」
隣を歩くアデルは、想像を膨らませるように目線を上へと上げた。
これで誤魔化せればしめたものと思っていたティアだが、そろそろ、そう簡単に引っかからない者がいる。
「それで、ティアはその人にどこで会ったんだ?」
訊ねたのはルクスだ。
最近のルクスは、こういう細かい所に気付いて、すかさず突いてくる。だからティアは、しっかりと心構えだけはしていた。
「うん?やだなぁ……本当に知りたいの?」
「っ……」
振り返り、目を鋭く細めて試すように言うティアに、ルクスがぐっと口を引き結ぶ。それを確認し、口を開かせない為に畳み掛ける。
「シェリーやカル姐の関係者だもん。知っててもおかしくないじゃん」
シェリスとカルツォーネとの関係についての疑問は、長く保留になっていた為、ルクス達の中では既に『そういうもの』と固定化されているのだ。今更、どう知り合ったのかなどと無闇に追及してはこないので、これに乗じて今回も、うやむやにする作戦だ。
「それに私は、ヒミツをいっぱい秘めた女の子だもん」
「……そ、そうだったか……」
昔から、この言葉に弱いルクスだ。
「ふふっ、ティアさんらしいですね。『女はヒミツで出来ている』って、聞いた事がありますわ。なんだか、ティアさんにぴったりです」
「いや、それは多分、半分以上は冗談のつもりで言われていると思うんだ……」
「そうだな。だが、ティアの場合は冗談ではなく、事実だろう」
年長組の三人は、仲良く並んで話す。
「クロノスはどう思う?」
エルヴァストが、最後尾を歩くクロノスへと話を振る。
「私などには、ティア様の全てを理解する事はできないでしょう」
クロノスは、静かにそう言った。
「ほぉ。不安ではないのか?」
そう訊ねるエルヴァストに、クロノスは晴れやかな笑みを浮かべて答えた。
「私もルクスも、ティア様ならば、いつかはその秘密を打ち明けてくださると信じていますから」
「成る程。主従の信頼とは素晴らしいな」
感心するエルヴァストの隣で、ベリアローズとユフィアも満足気に頷いている。もちろん、クロノスのそんな真っ直ぐな言葉は、ティアにも聞こえていた。
「クロちゃん……最近、ちょい眩しいなぁ……」
「ティア。それって、後ろめたい何かがあるからじゃない?」
「アデル……はっきり言ってやるな」
ティアが弱ったように表情を引きつらせるのを見て、アデルは素直な意見を言った。それに、キルシュが少々フォローを入れる。
そんな珍しくダメージを受けている様子のティアを知らず、ルクスが追いうちをかけた。
「ティア。待ってるからな」
「うっ……」
悪い事をしている訳ではないのだが、その純粋な想いや言葉は、ティアの心に突き刺さる。
「ティア……あれだよ。やっぱり、真っ当に生きるって大事なんだよ」
「え~っと、待ってね、アデル……っ私が真っ当じゃないと?」
それにアデルとキルシュが揃って重く頷いた。
「えぇっ、マジでっ?ガチでっ?どこがっ!?」
「「ほとんど全部」」
「うわぁ……即答された……」
ただちょっと、隠し事をしているだけの話だった筈が、はっきりとダメ出しをされてしまった。
こんな時、落ち込んで己を見つめ直すのが大半だろう。しかし、そこは常識外れなティアだ。しっかりと捻くれていた。
「ふんっ、いいもん。それならそれで極めてやるんだからっ。後ろめたい気持ちなんてちっとも感じない、図太い神経で生きてやるっ」
そう一人、拳を握り締めて宣言するティアに、またもアデルが素直に告げた。
「ティアの神経は、もう充分図太いよ?」
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その時のアデルの笑顔が一番眩しかった。
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ユメル「今日もなんとかなったね……」
カヤル「うん。本当に……」
ラキア「二日連続で侵入に成功するなんて兄さん達、やるね」
ユメル「ほめられた……」
カヤル「ラキアにほめられた……」
ラキア「なに?いつもは私に何か不満があると?」
ユメル「ううんっ、そんな事ないよっ」
カヤル「うんうんっ、満足してますっ」
ラキア「そう。なら、あっちの庭と屋根の整備を頼もうかな」
ユ・カ「「……」」
ラキア「兄さん達?不満はないんだよね?」
ユ・カ「「っもちろんですっ!」」
ラキア「それじゃ、よろしく」
ユ・カ「「はい!!」」
ラキア「ふぅ……兄さん達はこれでいい……それで、何のご用でしょうか」
謎の人「……気付いていたか……」
ラキア「ええ。ですが、兄達も気付いていましたよ?ただ、何もしない方には、反応しないだけです」
謎の人「……そうか……」
ラキア「では、ご用件をお聞きしましょう。こうして、わざわざ学園の外まで来られたのですから」
謎の人「あぁ……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
何者でしょうね。
兄達もマヌケではないです。
アデルは逞しく育っています。
そして、うっかりなティアちゃん。
まだまだ打ち明けるには早いかもしれませんね。
クロちゃんは、本当に昔の毒素が抜けて、とても清浄な人になってしまいました。
腹黒なティアちゃんには眩しいようです。
ルクスは今一歩といった所でしょうか。
もう少し強気にいって欲しかった。
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よろしくお願いします◎
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