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ミッション10 子ども達の成長
394 規律厳しく
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広場の方もそろそろ終わりのようだ。リーリルが最後にと前に出る。
『さて、みなさんは、罪人となった者達がどのような場所に送られるのか知っているでしょうか』
「知らないな」
「教会?」
「牢屋でしょう?」
「お城の地下?」
牢に入れられるというだけでも、この世界では悲惨な罰だった。この国に関して言えば、盗賊の特に殺人を犯したと判別される者以外は処刑されない。
盗賊は、他人の命を奪っても物を奪うというもの。そうした考えの者を生かしておくことは危険という判断から、こうなっている。何より、盗賊は群れる。それを全員牢に押し込め続けるというのも、数の関係で避けたいことだったという事情もある。
それはともかく、犯罪者は牢に入り、水だけしか与えられず、飢えで最後を迎えるというのが用意される末路だ。
裁判なんてものはないし、今回のように、調べられて罪の重い、軽いなんてことの判断もあまりされることはなく、自白頼り。犯罪者はほぼ全てが牢でこの末路を辿ることになる。
『国が管理する牢に入れられて、最後を迎えるというのが多いのですが、明らかに反省させれば許しても良いという軽微な罪の場合や、心から反省し、償う意思を見せた者、牢で死を迎えるに値しないとする者は、教会に引き取られます』
これに続き、神殿長が前に出る。
『ほぼ全ての牢に、神官が毎日のように出向き、そこで、神託により教会へと引き取る方がおります。神は、心を見るので、虚偽は見抜かれますので、反省しているかどうかは、間違いありません』
それを聞いて、数人が手を上げた。
「それ! 本当ですか!? 父がっ……父が殺された。その犯人がっ、教会に連れて行かれたって……」
「私も! 絶対に、アイツは反省なんかしない! そいつが、神官様に引き取られたって! そう聞きました!」
何人かは、納得いかないと声を上げていた。
これに、リーリルがスクリーンを指さして説明した。
『それについては、こちらをご覧ください。神官様がこの国で罪を犯した犯罪者を連れて行く先がこちらの四箇所になります』
大きな修道院が四つ。四分割されて映っている。
『右上がサーフル修道院。こちらは、軽微な犯罪者達が罪を償うために生活する場所です。長くても十年ほどでその罪を償うことができると見込まれた者が集められております』
その修道院は、山に張り付くようにしてあり、広い牧場が見えた。魔牛や魔羊といった気性の穏やかな家畜達が敷地内にのびのびと暮らしている。けれど、高く分厚い塀が囲んでいることは変わりない。
「もしかして、牛や羊の世話をするのか?」
「サフールって聞いたことあるわよ……チーズの名前にあるサフールチーズ……まさか……」
『こちらでは、主に酪農をして運営資金を得ています』
「あ、自分達で稼ぐのね」
「まあ、犯罪者を国の金で養うとかって違うし?」
きちんと修道院でお金を稼ぎ、それで運営していた。
『そして、左上が別名、この国の監獄、デルト修道院です。こちらには、五年以上の刑期の者。それも、神からもほぼ処置なしとされた者が集められます』
「……すごい……すごいところにある……」
「崖の上? 山の上?」
「雪もありそう……どこだろう……」
「あっ。エレルド男爵領の山だ!」
「え!? もしかして、あの死の山……?」
環境が厳しく、山には辺境の森とほぼ同じくらい凶暴な魔獣が棲みついている。とはいえ、そこに棲む魔獣達は、任されているこの修道院の神官や騎士達によって厳格に管理されているため、集団暴走が起きることはない。麓へ下りていくこともないように見回りもしっかりとしていた。
『地元では、死の山と呼ばれているようですね。この山頂にあるのがデルト修道院です。厳しい環境で作物を育て、木や草を使って手仕事をしてその罪が許されるまで生きることになります』
「え? 許されるまで……許されたら?」
気付く者がいたようだと、リーリルは嬉しそうに微笑む。
『そうです。ここでの死は許された者にのみ与えられます。それは神からの罰です。仮に、凶悪とされる盗賊が処刑される場合も、死は許された者にしか与えられないもの。よって、肉体が死に、火葬される時も、その魂は神の御許には行けず、焼かれる痛みを感じながら、消滅を待つことになります』
「「「「「……」」」」」
『神は罪をそう簡単には許してはくれないのです』
「「「「「……っ」」」」」
今まで、死んで終わりだと、死に逃げた犯罪者達に悔しい思いをしてきた者もいたのだろう。それで神に恨み言を吐いた者もいた。しかし、きちんと神は見てくれていたのだと知り、この広場で、泣き崩れる者が何人もいたようだ。
リーリルは、それを見ながらも続けた。
『次は左下。こちらは、ハザレイド大修道院です。女性や子どもが多く、貴族籍にあった者達が多く入る場所でもあります』
「……大きい……」
「広い畑がある……」
「でも、周りは綺麗ね」
「ハザレイドって言えば、お貴族様達の別荘地としても有名だもんな……」
「あんなに綺麗な所なのに、あの中に閉じ込められるっていうのは……ちょっと気の毒ね」
「出たいだろうな」
美しい別荘地。それがその修道院から少し離れた場所から続いている。
『こちらでは、刑期に関係なく受け入れています。ただし、重罪となる者達とは住む区画が中で分かれており、管理する畑も違います。厳格な時間管理の下で生活し、規律も厳しい場所とされています』
「怖いマザーが居るって話、聞いたことある!」
「あそこから出てきたって子、村の開拓作業とか、凄く真面目にやるって聞いたよ」
「女も子どもも、働き者になって出てくるって有名だよなっ」
どれだけ厳しいのかは知らなくても、その修道院から罪を許されて出てきた者達は、総じて真面目すぎるほど真面目に働くようになるらしい。教会のお墨付きも持っているため、就職もしやすくなる。そして、働いたことでもらった賃金は、大半を教会へ寄付する。
「なんか、稼いだお金も、最低限の金額以外、全部教会に寄付するんだって。お金持ってるのが怖いって言ってた」
「また欲にかられて悪いことしたくないって言ってたな」
「俺は寧ろ金が怖いとか言ってる奴知ってる」
庶民達の方が、これはよく知っているようだ。
「あそこで一生を過ごすことになる人も居るんだよな……元貴族とか」
「ちょっと同情するかも……」
重罪人というのは、元貴族に多い。今回の騒動でも、そこに入る者は出てくるのは確実だ。
『最後は、右下の教会本部に併設されている大修道院です』
教会の総本山。そこにある修道院だ。こちらは、世界中から修行のためや、家出してきた者、そして、罪人が集まってくることもあり、広大な土地を使っている。
『こちらも、ハザレイド大修道院と同じように規律厳しく、指導されると聞いています』
ここで罪を償い、許された者は、大半が神官になる。罪を犯した者ならば、罪を犯そうとする者の事を理解できるかもしれないと、自ら貧しい村や町に赴き、残りの人生を神官として生きるのだという。
反省しすぎるほど反省しているようなので、それはそれで良いのだろう。
『今回は、中でどのような生活をしているのか、少し見せていただきました。ご覧ください』
そうして始まったのが、それぞれの修道院での一日。顔は見えないように映像編集しており、ドキュメントのように見せている。この時間のここではどうかなど、場所も変え、人を変え、絶妙な切り替えで、少しのドキドキ、ハラハラも交えていた。
広場だけでなく、会議室でも、ホールでも、そして、カティルラが居る部屋や一人、部屋で強制的にこれを見せられているメルナも、引き込まれるようにそれを見つめていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
『さて、みなさんは、罪人となった者達がどのような場所に送られるのか知っているでしょうか』
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「教会?」
「牢屋でしょう?」
「お城の地下?」
牢に入れられるというだけでも、この世界では悲惨な罰だった。この国に関して言えば、盗賊の特に殺人を犯したと判別される者以外は処刑されない。
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それはともかく、犯罪者は牢に入り、水だけしか与えられず、飢えで最後を迎えるというのが用意される末路だ。
裁判なんてものはないし、今回のように、調べられて罪の重い、軽いなんてことの判断もあまりされることはなく、自白頼り。犯罪者はほぼ全てが牢でこの末路を辿ることになる。
『国が管理する牢に入れられて、最後を迎えるというのが多いのですが、明らかに反省させれば許しても良いという軽微な罪の場合や、心から反省し、償う意思を見せた者、牢で死を迎えるに値しないとする者は、教会に引き取られます』
これに続き、神殿長が前に出る。
『ほぼ全ての牢に、神官が毎日のように出向き、そこで、神託により教会へと引き取る方がおります。神は、心を見るので、虚偽は見抜かれますので、反省しているかどうかは、間違いありません』
それを聞いて、数人が手を上げた。
「それ! 本当ですか!? 父がっ……父が殺された。その犯人がっ、教会に連れて行かれたって……」
「私も! 絶対に、アイツは反省なんかしない! そいつが、神官様に引き取られたって! そう聞きました!」
何人かは、納得いかないと声を上げていた。
これに、リーリルがスクリーンを指さして説明した。
『それについては、こちらをご覧ください。神官様がこの国で罪を犯した犯罪者を連れて行く先がこちらの四箇所になります』
大きな修道院が四つ。四分割されて映っている。
『右上がサーフル修道院。こちらは、軽微な犯罪者達が罪を償うために生活する場所です。長くても十年ほどでその罪を償うことができると見込まれた者が集められております』
その修道院は、山に張り付くようにしてあり、広い牧場が見えた。魔牛や魔羊といった気性の穏やかな家畜達が敷地内にのびのびと暮らしている。けれど、高く分厚い塀が囲んでいることは変わりない。
「もしかして、牛や羊の世話をするのか?」
「サフールって聞いたことあるわよ……チーズの名前にあるサフールチーズ……まさか……」
『こちらでは、主に酪農をして運営資金を得ています』
「あ、自分達で稼ぐのね」
「まあ、犯罪者を国の金で養うとかって違うし?」
きちんと修道院でお金を稼ぎ、それで運営していた。
『そして、左上が別名、この国の監獄、デルト修道院です。こちらには、五年以上の刑期の者。それも、神からもほぼ処置なしとされた者が集められます』
「……すごい……すごいところにある……」
「崖の上? 山の上?」
「雪もありそう……どこだろう……」
「あっ。エレルド男爵領の山だ!」
「え!? もしかして、あの死の山……?」
環境が厳しく、山には辺境の森とほぼ同じくらい凶暴な魔獣が棲みついている。とはいえ、そこに棲む魔獣達は、任されているこの修道院の神官や騎士達によって厳格に管理されているため、集団暴走が起きることはない。麓へ下りていくこともないように見回りもしっかりとしていた。
『地元では、死の山と呼ばれているようですね。この山頂にあるのがデルト修道院です。厳しい環境で作物を育て、木や草を使って手仕事をしてその罪が許されるまで生きることになります』
「え? 許されるまで……許されたら?」
気付く者がいたようだと、リーリルは嬉しそうに微笑む。
『そうです。ここでの死は許された者にのみ与えられます。それは神からの罰です。仮に、凶悪とされる盗賊が処刑される場合も、死は許された者にしか与えられないもの。よって、肉体が死に、火葬される時も、その魂は神の御許には行けず、焼かれる痛みを感じながら、消滅を待つことになります』
「「「「「……」」」」」
『神は罪をそう簡単には許してはくれないのです』
「「「「「……っ」」」」」
今まで、死んで終わりだと、死に逃げた犯罪者達に悔しい思いをしてきた者もいたのだろう。それで神に恨み言を吐いた者もいた。しかし、きちんと神は見てくれていたのだと知り、この広場で、泣き崩れる者が何人もいたようだ。
リーリルは、それを見ながらも続けた。
『次は左下。こちらは、ハザレイド大修道院です。女性や子どもが多く、貴族籍にあった者達が多く入る場所でもあります』
「……大きい……」
「広い畑がある……」
「でも、周りは綺麗ね」
「ハザレイドって言えば、お貴族様達の別荘地としても有名だもんな……」
「あんなに綺麗な所なのに、あの中に閉じ込められるっていうのは……ちょっと気の毒ね」
「出たいだろうな」
美しい別荘地。それがその修道院から少し離れた場所から続いている。
『こちらでは、刑期に関係なく受け入れています。ただし、重罪となる者達とは住む区画が中で分かれており、管理する畑も違います。厳格な時間管理の下で生活し、規律も厳しい場所とされています』
「怖いマザーが居るって話、聞いたことある!」
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「女も子どもも、働き者になって出てくるって有名だよなっ」
どれだけ厳しいのかは知らなくても、その修道院から罪を許されて出てきた者達は、総じて真面目すぎるほど真面目に働くようになるらしい。教会のお墨付きも持っているため、就職もしやすくなる。そして、働いたことでもらった賃金は、大半を教会へ寄付する。
「なんか、稼いだお金も、最低限の金額以外、全部教会に寄付するんだって。お金持ってるのが怖いって言ってた」
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庶民達の方が、これはよく知っているようだ。
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広場だけでなく、会議室でも、ホールでも、そして、カティルラが居る部屋や一人、部屋で強制的にこれを見せられているメルナも、引き込まれるようにそれを見つめていた。
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