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ミッション10 子ども達の成長
353 するわくん……
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血縁判定機のテストと調整を終えた翌日。フィルズは王都支部に移動していた。相棒のビズに乗り、空を飛んでやってきたのだが、今回はジュエルがついて来ていた。時刻は昼になる頃だ。
「ありがとな、ビズ」
《ヒヒィィン》
「ん? 近くの森を? この辺は冒険者が多いし、人通りもそれなりにあるから、気をつけてな」
《フシュっ》
「おっ。分かってるな。そう。一番気を付けるのは貴族だ。だから、邪魔かもしれんが、馬具は付けとけよ」
《ヒヒィィン》
「おう。いってら~」
《ヒヒィィン!》
《クゥゥン ♪ 》
「あ、ジュエルはダメ」
《クゥン!?》
当然のように、ビズの背にくっ付いて一緒に出かけようとしていたジュエルは剥がし取った。抱え直して、目を合わせると言い聞かせる。
「お前はグリフォンの亜種ってことになってるけど、その幼獣なんだぜ? 珍しいって速攻で捕まるわ」
《クゥン!》
「いや、お前が強いことは知ってるけど」
パンチパンチと短い腕で撃退できることをアピールするが、フィルズは首を横に振る。その間に、ビズは飛び立っていた。ビズもジュエルがついて来てはトラブルになると分かっているのだ。
「あのな? 公爵領とか、辺境の辺りのは結構大らかな奴が多いんだよ。土地柄だろうな。田舎ってほど田舎じゃねえけど、助け合いってのが当たり前になってる」
《クゥン?》
「そう。優しい人が多いんだよ。助け合わなければいけない土地だったってのもあるかもな。けど、王都は違う」
《クゥン……クゥン?》
どう違うのかと首を傾げるジュエル。もう外に行こうという気はなくなったのか、フィルズの腕からよじ登るようにして左肩に前を向いてぶら下がった。
「傲慢な人が多いんだよ。他人の迷惑は考えない奴らが。そんでもって『欲しいと思ったものは即自分のもの!』って我慢を知らない貴族がいる」
《クゥン!?》
「そうそう。オモチャの取り合いをして、取られた方は泣いて、取った方は悪いな~って罪悪感を感じながら一人で遊ぶってのが子どもにあるだろう?」
《クゥン》
「ここの貴族の大半は、盗賊と一緒で殺して奪っても渡さなかったやつが悪いって開き直れるくらい性格が悪い」
《クゥン!?》
それは酷いとジュエルはただでさえ丸い目を更に丸くしていた。
「そんでもって、周りに人が居てもお構いなしだ。その見ていた人も見なかった事にする」
《クゥン……》
ジュエルは愕然とした。
「ってことで、そんな所にお前がフラフラ~っと行ったらどうなるよ」
《クゥン! クゥン……》
捕まっちゃう、籠に入れられちゃうと理解したようだ。
「そういうこと。取り敢えず、ちょい装飾も増やすぞ。首飾りで良いか?」
《クゥン!》
宝石付きでと要望がすかさず飛んでくる。これにフィルズは笑いながら答える。
「あんま派手なの付けると、余計に欲しがられるぞ?」
《クゥン……クゥン!》
これは譲れないのだと一瞬諦めかけたが、思い直してしまったようだ。
「はあ~、仕方ねえなあ。けど、それなりに目立った装飾じゃねえと、相棒が居るって分からんもんなあ」
そう思案しながら屋敷に入ると、そこでアクラスが待ち構えていた。
「ん? どうしたんだ? アクラス」
「必要なのはこれだ。頑張れ」
「んん?」
アクラスはそう言って資料を手渡すと消えた。その資料には、V字型になっているしっかりとした首飾りが描かれている。
「ん~っと……『ビリビリっと! 変態撃退する輪くん』……するわくん……うん。賢者か」
《クゥゥン?》
覗き込んだジュエルは、端に書かれていた言葉を指差して読む。
「ジュエル。小さいメモ書きは、飾りだと思うように。読んではダメだ」
《クゥンっ、クゥンっ ♪ 》
「楽しいこと書いてあると思ってもダメだ。そっと、見なかった振りしなさい」
《クゥ~ン》
は~いといい返事をしてくれた。小さく書かれているのは、まるで恍惚とした表情が見えそうになる感想だった。要約すると、気持ちがいいのだというのが分かる。
「変態避けなのに、変態が作ったとか、外聞が悪いしな……」
見なかったことにするのが心の平穏のためだ。
「そんなことより、ささっと作ってやるよ。ファシーとの約束は夕方だしな。工房に宝石もあるから、付けたいやつ選びな」
《クゥン!》
宝石という言葉に過剰に反応して見せるジュエル。我先にと飛び立ち、工房の方へ向かって行った。それを見て、フィルズは苦笑する。
「宝石に釣られて捕まりそうだな……」
一刻も早く変態はともかく『撃退する輪くん』を作る必要がありそうだ。
「エン達やビズのも作るか。気の重くなるような話をしなきゃならんしな。息抜きは必要だな~」
そうして作業に没頭したフィルズに、昼食も食べないのはいけませんとこの王都の屋敷を管理する執事クマのガンナが部屋に突撃してくるのだが、それはある意味いつもの事だった。
そして、夕方になってファスター王とリゼンフィアがやってきた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「ありがとな、ビズ」
《ヒヒィィン》
「ん? 近くの森を? この辺は冒険者が多いし、人通りもそれなりにあるから、気をつけてな」
《フシュっ》
「おっ。分かってるな。そう。一番気を付けるのは貴族だ。だから、邪魔かもしれんが、馬具は付けとけよ」
《ヒヒィィン》
「おう。いってら~」
《ヒヒィィン!》
《クゥゥン ♪ 》
「あ、ジュエルはダメ」
《クゥン!?》
当然のように、ビズの背にくっ付いて一緒に出かけようとしていたジュエルは剥がし取った。抱え直して、目を合わせると言い聞かせる。
「お前はグリフォンの亜種ってことになってるけど、その幼獣なんだぜ? 珍しいって速攻で捕まるわ」
《クゥン!》
「いや、お前が強いことは知ってるけど」
パンチパンチと短い腕で撃退できることをアピールするが、フィルズは首を横に振る。その間に、ビズは飛び立っていた。ビズもジュエルがついて来てはトラブルになると分かっているのだ。
「あのな? 公爵領とか、辺境の辺りのは結構大らかな奴が多いんだよ。土地柄だろうな。田舎ってほど田舎じゃねえけど、助け合いってのが当たり前になってる」
《クゥン?》
「そう。優しい人が多いんだよ。助け合わなければいけない土地だったってのもあるかもな。けど、王都は違う」
《クゥン……クゥン?》
どう違うのかと首を傾げるジュエル。もう外に行こうという気はなくなったのか、フィルズの腕からよじ登るようにして左肩に前を向いてぶら下がった。
「傲慢な人が多いんだよ。他人の迷惑は考えない奴らが。そんでもって『欲しいと思ったものは即自分のもの!』って我慢を知らない貴族がいる」
《クゥン!?》
「そうそう。オモチャの取り合いをして、取られた方は泣いて、取った方は悪いな~って罪悪感を感じながら一人で遊ぶってのが子どもにあるだろう?」
《クゥン》
「ここの貴族の大半は、盗賊と一緒で殺して奪っても渡さなかったやつが悪いって開き直れるくらい性格が悪い」
《クゥン!?》
それは酷いとジュエルはただでさえ丸い目を更に丸くしていた。
「そんでもって、周りに人が居てもお構いなしだ。その見ていた人も見なかった事にする」
《クゥン……》
ジュエルは愕然とした。
「ってことで、そんな所にお前がフラフラ~っと行ったらどうなるよ」
《クゥン! クゥン……》
捕まっちゃう、籠に入れられちゃうと理解したようだ。
「そういうこと。取り敢えず、ちょい装飾も増やすぞ。首飾りで良いか?」
《クゥン!》
宝石付きでと要望がすかさず飛んでくる。これにフィルズは笑いながら答える。
「あんま派手なの付けると、余計に欲しがられるぞ?」
《クゥン……クゥン!》
これは譲れないのだと一瞬諦めかけたが、思い直してしまったようだ。
「はあ~、仕方ねえなあ。けど、それなりに目立った装飾じゃねえと、相棒が居るって分からんもんなあ」
そう思案しながら屋敷に入ると、そこでアクラスが待ち構えていた。
「ん? どうしたんだ? アクラス」
「必要なのはこれだ。頑張れ」
「んん?」
アクラスはそう言って資料を手渡すと消えた。その資料には、V字型になっているしっかりとした首飾りが描かれている。
「ん~っと……『ビリビリっと! 変態撃退する輪くん』……するわくん……うん。賢者か」
《クゥゥン?》
覗き込んだジュエルは、端に書かれていた言葉を指差して読む。
「ジュエル。小さいメモ書きは、飾りだと思うように。読んではダメだ」
《クゥンっ、クゥンっ ♪ 》
「楽しいこと書いてあると思ってもダメだ。そっと、見なかった振りしなさい」
《クゥ~ン》
は~いといい返事をしてくれた。小さく書かれているのは、まるで恍惚とした表情が見えそうになる感想だった。要約すると、気持ちがいいのだというのが分かる。
「変態避けなのに、変態が作ったとか、外聞が悪いしな……」
見なかったことにするのが心の平穏のためだ。
「そんなことより、ささっと作ってやるよ。ファシーとの約束は夕方だしな。工房に宝石もあるから、付けたいやつ選びな」
《クゥン!》
宝石という言葉に過剰に反応して見せるジュエル。我先にと飛び立ち、工房の方へ向かって行った。それを見て、フィルズは苦笑する。
「宝石に釣られて捕まりそうだな……」
一刻も早く変態はともかく『撃退する輪くん』を作る必要がありそうだ。
「エン達やビズのも作るか。気の重くなるような話をしなきゃならんしな。息抜きは必要だな~」
そうして作業に没頭したフィルズに、昼食も食べないのはいけませんとこの王都の屋敷を管理する執事クマのガンナが部屋に突撃してくるのだが、それはある意味いつもの事だった。
そして、夕方になってファスター王とリゼンフィアがやってきた。
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