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ミッション9 学園と文具用品

330 何の罰ゲームだ?

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ゴーレムと結界の魔導具で穴は塞がれ、冒険者達に坑道内の見回りの依頼をした後、捕らえられた犯罪者達は、公爵領の領都にある騎士団の下まで連行された。

「おいおい……どうしたらこんな事になるんだ?」

ヴィランズ団長が牢に入れた彼らを前にしてフィルズに尋ねる。酷く外に怯えており、地下牢の中に入れたことをとても喜んでいたのだ。

「ん? 一晩、自分たちが町を襲わせた魔獣や魔物に鉄格子の外から挨拶されてただけだが?」
「それ、どんな状況?」
「あ、写真見る? カメラ作ったんだよ。やっぱ、映像より先にカメラだよなっ」
「……あ~っと……?」

お試しで、隠密ウサギ達に持たせたカメラ。映像記録できるから必要ないだろうと、隠密ウサギ達も感じたようだが、あまりにも犯人達の様子が滑稽で、思わず撮ったということだった。ヴィランズに、その写真を渡す。

因みに、屋敷の地下には隠密ウサギ達が待機する部屋がある。そこに、今回の写真が飾られたようだ。ベストショットがあったらしい。それは提出を拒まれた。それ以降も、国内だけでなく、国外にも散らばった隠密ウサギ達は、その日のベストショットを撮り、厳選して部屋に飾っていくことになる。

綺麗な景色や、心温まる一枚もあるらしいが、何よりも力を入れるのは、いかに一枚で笑える瞬間を捉えるかだという。変な趣味に目覚めさせてしまったかもしれない。だが、趣味だと言われれてしまえば、フィルズに止めることはできなかった。

フィルズが今回もらった写真には、大きな鉄格子の箱の中で、むさい男達が手を取り合って中央に固まり、震えている様子があった。その鉄格子の周りには、デクサルヒードルやウルフ系、クマ系の魔獣が集まって鉄格子に取り付いている。

「夜でもこの写りの良さ! マジで頑張った甲斐があったわ!」

夜景も綺麗に撮れる。星まで撮れるよう魔法陣を組んだのだ。賢者の資料でもカメラはあったのだが、夜景までとはいかないものだった。そこはフィルズと神達との共同研究の成果だ。

ヴィランズは、その写真を見て真顔になる。

「……なんの罰ゲームだ?」
「ちょっとしたナイトサファリ体験じゃん。鉄格子だけじゃなくて、目の細かい金網も内側に貼ってるから、蛇系にも強いぜ?」
「一応聞くが、何のために作ったんだ?」
「え? ナイトサファリできるようにだけど?」
「これを想定してってことかよっ」
「因みに、上にもドア付けてるんだよ。ここまで囲まれたら出れねえけどっ」
「笑い事じゃねえよ……」

ツッコむだけ疲れると、ヴィランズは肩を落として見せた。

「で? こいつらは誰から依頼されたって?」
「良く分からん。けど、掘り出した鉱石を運び込んだ先は一つ向こうの伯爵領だ。そこは確認した。ただ、使ってた魔除けの香が、この国では見ないやつだった」
「へえ……ドラスリールか?」
「あそこも独自のがあったが、違う」
「魔除けの香は、国や地域によって結構違うって聞くからな……そこから辿るか」

国によって、棲息する魔獣や魔物は違う。そこから、独自の魔除けの香が出来上がるのだ。使う薬草も、その地域で採れるものを使うため、特色も出やすい。世界を回る特級の冒険者などは、その棲息する魔獣や地域によって香を使い分ける。

「一応、冒険者ギルドに照会は頼んだ。魔寄せの方もな。そっちと合わせれば、ある程度は特定できるだろう」
「そこから繋がりを探すか……こいつら、本当に依頼人を知らねえのか?」
「多分な。だろ?」
《指示役も何度か変わったそうです》

フィルズが確認するように足元を見ると、隠密ウサギがぴょんとやって来て告げる。それを見て、牢の中の男達が飛び上がるほど驚いた様子で慌てて壁際へと身を寄せる。

「「「「「ひっ」」」」」
「「「「「うわぁぁあっ」」」」」

その怯えようは異常だった。

「おい。こいつに助けられただろうに」
《そうですね。心外です》
「いや。この写真からでも、怯えるの分かるぞ? 中にも見張りで居たんだろ」
《話を聞いただけです。寧ろ、恐怖を和らげる話し相手になったと言っても過言ではありません》
「首振ってるけど?」

横に小さく首を振って、隠密ウサギを涙目で見る男達をヴィランズが見ろと指さす。

《よく喋っていましたけどね? 涙を流しながら》
「嬉しくてとかじゃねえからな? きっと、恐怖でだからな?」

ヴィランズは隠密ウサギを諭すように言う。

《懺悔し、反省したことからの後悔の涙であったかと。教会で見ました。一点を見つめてよく喋る感じも同じです》
「いや、多分違えよ。外見たくなかったんだよ。そんで、喋らないと怖かったんだろ。ほら、すげえ頷いてるだろっ」
《ふむ……これは何度か検証が必要そうです。主様、機会をいただいても?》

それまで面白そうにニヤつきながら、ヴィランズと隠密ウサギの様子を見ていたフィルズは、そのまま頷いた。

「いいぜ。好きなだけ検証しろ。尋問も経験が必要だしな」
《効率的な尋問方法も研究してみます》
「そうしてくれ」
「フィルは分かってんじゃんっ!」
「ん? 俺が分かってても、こいつらが自分で学習して覚えていくことが必要なんだよ。可愛い子どもには経験が大事だろ?」
「カワイイコドモ……」

ヴィランズはその言葉を理解することを放棄したような複雑そうな顔をしていた。

「とりあえず、調べは進めるが、コイツらと鉱山の方は親父が対応するだろう。そっちの指示に従ってくれ。俺は王都に行く」
「ああ……こっちは任せてくれ」
「頼んだ。エン達も連れて行くかな」

そうして、今度はエン達も連れて王都へと向かった。学園に売店を出す許可が王から出たのだ。








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読んでくださりありがとうございます◎


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