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ミッション9 学園と文具用品
329 喋らないと不安?
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デクサルヒードルの処理も終わった翌日。冒険者達も引き連れ、フィルズは坑道内を探索していた。
「どうするんだ?」
数人の冒険者と一緒に来たのは、デクサルヒードルが通って来たトンネルの先だ。森を恐々と眼下に見ながら、冒険者達が先ほどから何やら作業をしているフィルズを見た。
「またあんなの来たらやべえぞ?」
「ここまでの穴を完全に塞ぐには、時間がかかるでしょう? どうするの?」
「いくら、あの鉱石が苦手でも、あいつらここを通っては来たしなあ」
森に繋がるトンネルが存在するというのは不安だ。だが、フィルズは気楽な様子で答える。
「通過するくらいなら我慢できるみたいだしなあ」
不快な感じがするなと思いながら通過するようだ。寧ろ、立ち止まるのは嫌だと考えるのだろう。クロス鉱石は、まだこの鉱山内に結構な量があると、ジュエルが感じとっていたので確かだ。
「うへっ。なあに? フィル。もう研究済み?」
「そういうの欠かさねえよなあ」
「フィルは勤勉よね~」
呆れたような視線が冒険者達から送られた。フィルズは、闘った魔獣や魔物の情報を自身でまとめ直す。今までの冒険者ギルドが保有する資料よりも遥かに詳しい情報を得ているというのは、冒険者達の中では有名だった。
その資料も分かりやすくまとめ直して、ギルドに定期的に渡してもいたが、冒険者達の中には、無駄な事をと思う者もいる。しかし、一度でもその資料を見た冒険者ならば、その有用性を理解している。とはいえ、自分たちにはそこまでの事をするのは無理だとも思って、フィルズの行動に呆れてもいた。
「ちゃんと褒めてくれていいんだぜ? なんでそんな目で見んの? そういうの、大事じゃん?」
「「「はいはい」」」
「「「大事、大事~」」」
「ふんっ」
態度に納得はいかないが、この話はここまでだろう。冒険者達が話を変える。
「で? どうすんだ? この穴」
「どうって、塞ぐぜ? 結界の魔導具とゴーレムで」
「「「ああ。ゴーレムか……」」」
「それも謎なのよね~。ゴーレムがなんで、フィルの言うこと聞いてんの?」
「そうだよなあ。こんな近くで大人しくされるとか、あり得ねえんだけど……」
「これだけ近付いたら、ガンガン殴り掛かってくるよなあ」
すぐ側に、ゴーレムが大人しく座り込んでいたのだ。人がいればすぐさま殴り掛かってくるはずのゴーレムが、こちらを見て頷いたり、首を傾げたりする。
「首傾げるの可愛いわ……」
「狭そうなのかわいそう」
「座り込んでも頭が天井に着いてるもんなあ」
昨日から、このゴーレムはここで待機させていたのだ。その少し向こうにも同じサイズのがもう一体控えている。
「この子達で塞ぐって……いいのかしら」
「二人ぼっちでずっと居る事になるってことよね? かわいそう」
「おいおい。完全に情が湧いてるじゃんか」
ここにずっと置いておくのはかわいそうだと、他の冒険者達も頷いていた。
「いや。なんか、フィルが作ったものみたいに思えるもんよ」
「フィルの言う事聞くしなあ」
「「「うん」」」
「作ってねえよ……改造はしたけど」
「「「してんじゃんっ!」」」
思わずツッコむ冒険者達。
そんな彼らを、作業を終えたフィルズは立ち上がってトンネルの向こう側へと少し足を踏み入れて手招く。
「そんなことより、運ぶの手伝ってくれ」
「何をだ?」
フィルズが警戒することなく数歩進んで行くのを見て、危険はなさそうだと冒険者達も一歩踏み出した。
その十メートルほど先に大きな檻があった。
「ん? 人? 犯罪者か?」
檻の中、それも中央に肩を寄せ合いながら固まる十人ほどの人が見えた。それを見て、冒険者達は察した。
「……こんな所で一晩明かしたんか……」
「間違いなくフィルの作った檻だから、安心だろうけど……ここで一晩とかないわ……」
「それも、ウサギ様に見守られながら?」
「尋問されたんじゃない?」
「よく喋りそうね」
「「「だな……」」」
隠密ウサギが、その檻を囲んでいたのだ。その怖さは想像できた。
「えっ。よく分かったなあ。いやあ、今朝からめっちゃよく喋るってさ」
「そりゃあ、喋るだろ……」
「喋るわね……」
「寧ろ、喋らないと不安?」
「「「分かる~」」」
そうして冒険者達が近付いて行くと、檻の中にいた者達が涙を流した。それを見て、冒険者達は今回の騒動の犯人であっても、同情せずにはいられなかったようだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「どうするんだ?」
数人の冒険者と一緒に来たのは、デクサルヒードルが通って来たトンネルの先だ。森を恐々と眼下に見ながら、冒険者達が先ほどから何やら作業をしているフィルズを見た。
「またあんなの来たらやべえぞ?」
「ここまでの穴を完全に塞ぐには、時間がかかるでしょう? どうするの?」
「いくら、あの鉱石が苦手でも、あいつらここを通っては来たしなあ」
森に繋がるトンネルが存在するというのは不安だ。だが、フィルズは気楽な様子で答える。
「通過するくらいなら我慢できるみたいだしなあ」
不快な感じがするなと思いながら通過するようだ。寧ろ、立ち止まるのは嫌だと考えるのだろう。クロス鉱石は、まだこの鉱山内に結構な量があると、ジュエルが感じとっていたので確かだ。
「うへっ。なあに? フィル。もう研究済み?」
「そういうの欠かさねえよなあ」
「フィルは勤勉よね~」
呆れたような視線が冒険者達から送られた。フィルズは、闘った魔獣や魔物の情報を自身でまとめ直す。今までの冒険者ギルドが保有する資料よりも遥かに詳しい情報を得ているというのは、冒険者達の中では有名だった。
その資料も分かりやすくまとめ直して、ギルドに定期的に渡してもいたが、冒険者達の中には、無駄な事をと思う者もいる。しかし、一度でもその資料を見た冒険者ならば、その有用性を理解している。とはいえ、自分たちにはそこまでの事をするのは無理だとも思って、フィルズの行動に呆れてもいた。
「ちゃんと褒めてくれていいんだぜ? なんでそんな目で見んの? そういうの、大事じゃん?」
「「「はいはい」」」
「「「大事、大事~」」」
「ふんっ」
態度に納得はいかないが、この話はここまでだろう。冒険者達が話を変える。
「で? どうすんだ? この穴」
「どうって、塞ぐぜ? 結界の魔導具とゴーレムで」
「「「ああ。ゴーレムか……」」」
「それも謎なのよね~。ゴーレムがなんで、フィルの言うこと聞いてんの?」
「そうだよなあ。こんな近くで大人しくされるとか、あり得ねえんだけど……」
「これだけ近付いたら、ガンガン殴り掛かってくるよなあ」
すぐ側に、ゴーレムが大人しく座り込んでいたのだ。人がいればすぐさま殴り掛かってくるはずのゴーレムが、こちらを見て頷いたり、首を傾げたりする。
「首傾げるの可愛いわ……」
「狭そうなのかわいそう」
「座り込んでも頭が天井に着いてるもんなあ」
昨日から、このゴーレムはここで待機させていたのだ。その少し向こうにも同じサイズのがもう一体控えている。
「この子達で塞ぐって……いいのかしら」
「二人ぼっちでずっと居る事になるってことよね? かわいそう」
「おいおい。完全に情が湧いてるじゃんか」
ここにずっと置いておくのはかわいそうだと、他の冒険者達も頷いていた。
「いや。なんか、フィルが作ったものみたいに思えるもんよ」
「フィルの言う事聞くしなあ」
「「「うん」」」
「作ってねえよ……改造はしたけど」
「「「してんじゃんっ!」」」
思わずツッコむ冒険者達。
そんな彼らを、作業を終えたフィルズは立ち上がってトンネルの向こう側へと少し足を踏み入れて手招く。
「そんなことより、運ぶの手伝ってくれ」
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フィルズが警戒することなく数歩進んで行くのを見て、危険はなさそうだと冒険者達も一歩踏み出した。
その十メートルほど先に大きな檻があった。
「ん? 人? 犯罪者か?」
檻の中、それも中央に肩を寄せ合いながら固まる十人ほどの人が見えた。それを見て、冒険者達は察した。
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「間違いなくフィルの作った檻だから、安心だろうけど……ここで一晩とかないわ……」
「それも、ウサギ様に見守られながら?」
「尋問されたんじゃない?」
「よく喋りそうね」
「「「だな……」」」
隠密ウサギが、その檻を囲んでいたのだ。その怖さは想像できた。
「えっ。よく分かったなあ。いやあ、今朝からめっちゃよく喋るってさ」
「そりゃあ、喋るだろ……」
「喋るわね……」
「寧ろ、喋らないと不安?」
「「「分かる~」」」
そうして冒険者達が近付いて行くと、檻の中にいた者達が涙を流した。それを見て、冒険者達は今回の騒動の犯人であっても、同情せずにはいられなかったようだ。
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