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ミッション9 学園と文具用品
327 当たりかよ
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鞭はしっかりとボスの胴体に巻き付いた。
ボォォォォッッッ!
怒り狂っているのが分かる。抵抗力は先ほどよりも強い。
「ちっ、うっかり真っ二つにしちまったらどうすんだよっ。大人しくしろ!」
これを聞いていた冒険者が大きな声で尋ねてくる。
「おいっ。フィルっ。なんでそれでダメなんだよ!」
「当たり前だろ! コイツをすぐに殺しちまったら、そいつらが一斉に遺体を回収して巣に戻っちまう!」
「っ、あっ」
「そっか!」
「そうなるな……っ」
そうなれば、またいつやって来るか分からない。ヒードル種を討伐する場合は、こうして出て来た所でなるべく数を叩く必要があるのだ。
頭の良い種だ。トンネルとなってしまった場所を埋めるまで待ってはくれないだろう。寧ろそんな事をしようとするのを、デクサルヒードルは許さないはずだ。
そして、こちら側にこれだけの戦力があると知ったデクサルヒードルは、今回のように、ほぼ全ての勢力でやって来ることはなくなる。保険を充分にかけて、少数精鋭での行動になる。
「だから、おっちゃん達の方で、そいつらの数をもっと減らしてくれ。その間、俺はこいつを生かさず殺さず引きつけておく」
「分かった!」
ギリギリと、音がするはずがないのに、鞭が軋んでいるような気がする。
ボゥゥゥボォォォォ!!
ボスは鞭を巻き付けたまま飛び掛かってきた。
「ハッ、もう一つは潰させてもらうぞ」
腕を大きく振ってフィルズに襲い掛かるが、それを冷静に避けたフィルズは、喉元を剣で刺し貫いた。
グボォォォっ!
これも当たりだったらしい。
「おいおい。当たりかよ。本当に三つどころじゃないとかあるのか?」
心臓が三つ以上あるという仮説がもしかしたら現実にあるかもしれない。だが、だからといって、もう一つ潰すという賭けはできない。
「少しは動きが鈍ったか……」
大量に血液を無くしたことで、動きは鈍くなった。それでも、やはりまだ心臓は残っているのだ。鈍くなっただけで、弱ってはいない。
再び飛び掛かろうとして来たボス。その手に、転がっていた石が握られており、それがフィルズの顔目掛けて飛んできた。
「っ、へえ……」
頬を掠ったようだ。微かな痛みを感じた。恐らく切れただろう。しかし、そこで、外から雷が走ってきた。それがボスの腹の辺りに当たり、衝撃でひっくり返る。雷が来た先をフィルズは振り返った。
騎士達が出入りした割れ目からビズが顔を覗かせていた。
「ビズ……っ」
ビズが通ろうとしたのをジュエルが気付いたのだろう。割れ目が広がり、ビズがそこを通ってフィルズの方へやって来る。
そして、起きあがろうとしていたボスを、前足で思いっきり踏みつけた。
ヒヒィィィンっ!!
ボォォォォっ!?
どうやら、ビズはフィルズが傷付けられて怒っているらしい。
「あ~……ビズ、そのまましばらくそいつ押さえといてくれるか?」
フシュっと鼻を鳴らして、ビズは了承してくれた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
ボォォォォッッッ!
怒り狂っているのが分かる。抵抗力は先ほどよりも強い。
「ちっ、うっかり真っ二つにしちまったらどうすんだよっ。大人しくしろ!」
これを聞いていた冒険者が大きな声で尋ねてくる。
「おいっ。フィルっ。なんでそれでダメなんだよ!」
「当たり前だろ! コイツをすぐに殺しちまったら、そいつらが一斉に遺体を回収して巣に戻っちまう!」
「っ、あっ」
「そっか!」
「そうなるな……っ」
そうなれば、またいつやって来るか分からない。ヒードル種を討伐する場合は、こうして出て来た所でなるべく数を叩く必要があるのだ。
頭の良い種だ。トンネルとなってしまった場所を埋めるまで待ってはくれないだろう。寧ろそんな事をしようとするのを、デクサルヒードルは許さないはずだ。
そして、こちら側にこれだけの戦力があると知ったデクサルヒードルは、今回のように、ほぼ全ての勢力でやって来ることはなくなる。保険を充分にかけて、少数精鋭での行動になる。
「だから、おっちゃん達の方で、そいつらの数をもっと減らしてくれ。その間、俺はこいつを生かさず殺さず引きつけておく」
「分かった!」
ギリギリと、音がするはずがないのに、鞭が軋んでいるような気がする。
ボゥゥゥボォォォォ!!
ボスは鞭を巻き付けたまま飛び掛かってきた。
「ハッ、もう一つは潰させてもらうぞ」
腕を大きく振ってフィルズに襲い掛かるが、それを冷静に避けたフィルズは、喉元を剣で刺し貫いた。
グボォォォっ!
これも当たりだったらしい。
「おいおい。当たりかよ。本当に三つどころじゃないとかあるのか?」
心臓が三つ以上あるという仮説がもしかしたら現実にあるかもしれない。だが、だからといって、もう一つ潰すという賭けはできない。
「少しは動きが鈍ったか……」
大量に血液を無くしたことで、動きは鈍くなった。それでも、やはりまだ心臓は残っているのだ。鈍くなっただけで、弱ってはいない。
再び飛び掛かろうとして来たボス。その手に、転がっていた石が握られており、それがフィルズの顔目掛けて飛んできた。
「っ、へえ……」
頬を掠ったようだ。微かな痛みを感じた。恐らく切れただろう。しかし、そこで、外から雷が走ってきた。それがボスの腹の辺りに当たり、衝撃でひっくり返る。雷が来た先をフィルズは振り返った。
騎士達が出入りした割れ目からビズが顔を覗かせていた。
「ビズ……っ」
ビズが通ろうとしたのをジュエルが気付いたのだろう。割れ目が広がり、ビズがそこを通ってフィルズの方へやって来る。
そして、起きあがろうとしていたボスを、前足で思いっきり踏みつけた。
ヒヒィィィンっ!!
ボォォォォっ!?
どうやら、ビズはフィルズが傷付けられて怒っているらしい。
「あ~……ビズ、そのまましばらくそいつ押さえといてくれるか?」
フシュっと鼻を鳴らして、ビズは了承してくれた。
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