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ミッション8 王都進出と娯楽品

290 迎え討ちましょう!

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リュブランの心配を、正しく察したフィルズは苦笑する。

「まあな。だから、隠密ウサギ達にも裏取りさせて、奴らの被害者を調べた。そしたら、大半が相手も結構なクズでさ。同業者同士の自滅とかもあったんだよ」
「……そういえば、フィルさん、前に言ってましたね。裏の人達が裏の人達とやり合うんなら、寧ろ社会貢献だと……」

以前、盗賊同士で潰し合っている所に出会した時に、そんな話をしたのだ。

「そういうこと。クズ同士の潰し合いなんて大いに推奨するよ。一般人を巻き込まずのそこでの殺し合いは、理不尽なものじゃない。身から出た錆。自業自得ってやつでしかないだろ」

自分達で招いた結果だ。その命を一方的に弄び、略奪するわけではない。殺し合うことで、事の決着を図ろうとする。解決法がちょっと野蛮なそれなだけだ。

「だから、神もそういう生き方を選んだってことで認めてる。冒険者が魔獣と戦って殺し合うのと同じだ。冒険者を殺した魔獣を罪に問うか? 魔獣を殺した冒険者に、それは罪だと言えるか?」
「……一緒なの?」
「生き方……ですか……」
「まあ、冒険者と魔獣の事は同じとは言わないが、覚悟はしてるだろ? 同じ様にやられるかもしれないって覚悟」
「……してる」
「戦争でもそうだ。神はそこでの罪は問わない。正当防衛の時もな。だから、罪にカウントされない。それやったら、盗賊退治する俺らも罪として出ちまうだろ?」
「「あっ……」」

襲って来た盗賊を返り討ちにしたことで、人殺しとして記録されたのでは、国を守る騎士や英雄なんかはもっと酷い極悪人になってしまう。

「処刑人なんて、それが仕事なのに罪にカウントされたら堪んねえだろ?」
「そ、そうだね……」
「それを罪として裁かれたら困ります……」

裁く側が、正しく裁いているのにそれを罪としてカウントされてはたまらない。

「ってことで、雇った奴らはとりあえず、同士討ち、悪人を始末してたってことで、神からのお咎めも無しだ」
「それなら良いけど……」
「危ない人じゃなければ……」

リュブランとマグナの答えに頷いた時、玄関ホールを見下ろせる場所に着いた。

その下には、既に十数名の測量部隊が配置についていた。

「あ、鳥さん達は階段の手摺りの所に避難してるんだね」
「でも、もっと上の……この辺に来てもらった方が安全なんじゃ……」
「いいんだよ。距離的にはあれでな」

フィルズは緊張感漂う階下の者達を見下ろし、手摺りに肘をついて、のんびりと見物するつもりだ。それを見て、リュブランとマグナが二度見する。

「え? ちょっ、フィル君っ。そんなのんびりしていていいの?」
「こ、これから攻めてくるんじゃ……」

二人は動揺しながら指摘する。しかし、フィルズの態度は変わらなかった。まるで鼻歌でも歌い出しそうなくらい気楽に見える。

「問題ねえよ。あいつらに任せる。けど、そうだな……ガンナ、規約第三条の確認を」
《承知しました!》

ガンナが階段の一番上に立ち、ステッキを片手で掲げて声を張り上げた。屋敷の中は防音の魔法陣が発動しているため、この声は外には聞こえない。ただ、この魔法陣は、完全に音を防ぐわけではない。演奏会で、ホールから微かに聞こえてくる程度の効果だ。

とはいえ、彼らが大声を出した所でまず聞こえない。

《測量・諜報部隊規約、第三条!》
「「「「「っ、対峙する相手を殺す選択をしてはならない! 無力化せよ!」」」」」
《よろしい! では、迎え討ちましょう!》
「「「「「はっ!!」」」」」

揃って指揮官へと敬礼するように、右手を胸に当てて返事をした。

そして、彼らが玄関の扉をくるりと振り返る。二人が扉に張り付き、一拍おいて扉を勢いよく開け放った。

そこには、今まさに扉に手を掛けようとしていた黒いフードを被った者達とその後ろにも三十数人がビクリと一瞬体の動きを止めていた。

そんな彼らに、ガンナの号令とほぼ同時に掴みかかっていく。

《掛かれ!!》
「はっ!」
「ふっ!」
「うらっ!」
「しっ!」
「らあっ!」

柔軟な体をしている測量部隊の者達は、流れるような動きで、敵を無力化していく。武器を蹴り飛ばし、腕を捻り上げ、クマやファリマス直伝の体術で綺麗に投げ飛ばしていった。

「ぐっ!」
「ぐはっ」
「ひっ」
「うぐっ」
「があっ」

呻き声を上げながら、倒れていくが、人数差があった。ただの荒くれ者も雇ったのだろう。その後ろから更に三十名程が剣や棍棒のようなものを振り上げながらやって来たのだ。

それを見ていたリュブランとマグナが慌てる。

「まだ来るよ! 僕らも!」
「そ、そうですね!」

そんな二人を、フィルズは止めた。

「まあまあ、待て。問題ねえって」
「「でも!」」

確かに圧倒しているが、人数差は埋められない。そんな時だ。小鳥達が鳴いて翼を広げた。

《ピィー!!》
「え?」
「なに?」

唐突に玄関ホールに響いた甲高い鳴き声。そんな小鳥の前に、白い光の渦が出来、その中へと小鳥が飛び込んでいく。

そして、その渦を通り抜けると、そこから出て来たのは小鳥よりも十数倍は大きくなった立派な鳥だった。

《ビィィィー!!》
「へ!? ちょっ、あれ……っ、イーグルレイ……っ、森の監視者!?」

イーグルレイは、大きな鷹の姿をした魔獣だ。【森の監視者】という異名もある。縄張り意識が高く、敵と判断されたならどこまでも追いかけて来てその鋭い爪や嘴で刺し貫いてくる。しかし、その本質としては武人に近く、逃げるのではなく正々堂々と勝負をすれば、見逃してくれたりする。引き分けた場合はその羽を一枚、友好の証としてくれると言う。それなりに魔獣避けの効果もあるその羽は、時折高く取引されていた。

そんなイーグルレイが成体に変身したのを見て、マグナはその考えに至った。

「……っ、ふぃ、フィルさん……っ、まさか、魔導人形だったり……?」
「正解!」
「「……」」

イーグルレイは、槍のように敵の頭を刈り上げ、武器を持つ手を刺し、別のイーグルレイが取り落としそうになった武器を掴んで持っていく。仲間同士の連携もバッチリだ。

その様を見て、フィルズは笑う。

「あれじゃあ、ハゲタカだなあ。あははっ」
「「こわい……」」

一気に騒がしくなる。主に、髪を刈り上げられた者達の悲鳴が大半だった。







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読んでくださりありがとうございます◎
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