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ミッション8 王都進出と娯楽品
274 猛省しろ
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ミラナから聞いているギルド長の性格ならば、こうなるとは思っていた。
「ふざけた事をぬかすな。教会が後ろ盾だからと良い気になりやがって。ガキが商売の真似事をしているだけでも不愉快だと言うのにっ」
「はっ! 見た目と権力で人を測るしか能がない奴は、言うことが違うなあ」
「っ、なんだと!!」
「あ~あ、これで反論しようとするってことは、図星ってことじゃん。そんな事も分かんねえの?」
馬鹿じゃんと言葉にしなくてもそう伝わるよう鼻で笑ってやるフィルズ。
傍に居るキラーリは、それを見て唖然としていた。ここまでギルド長相手に食ってかかる子どもなどいないだろう。
そんなキラーリにも、フィルズは鋭い一瞥を向ける。そして、自身の横を手で示した。
「言葉で言っても理解できないお前らにも、分かりやすいようにしてやろう。ここに、誰が居るか分かる奴は?」
これに、キラーリが眉根を寄せて不審に思いながらも口を開く。
「……なんのおふざけだ?」
「俺がふざけるなら、もっと笑かしてんよっ。言ったろ? 加護は消える事もある。神がその生き方に相応しくないと判断すれば、加護は消える。だから、お前達には視えないんだ」
「……意味が……」
分からないと伝えながらも、キラーリの目は泳いでいる。察しているのだ。フィルズとフィルズが指す空間を見比べる。神官が礼を尽くしていたのだ。フィルズが神の事で嘘は吐かないだろうと、彼は無意識の内にも判断していた。
ギルド長よりも話は通じるらしいキラーリ。ならばとフィルズは彼に向き直る。
「あんたは、商業神の加護があったから、商人になったんじゃないのか?」
「……ああ。代々続く商家だ。祝福の儀でサウル神様の加護をいただけた……」
「そうか……祝福の儀で確認できるのは、素質と期待だ。それが加護として与えられている。だが……その期待を裏切れば、神は加護を取り上げることが出来る」
「っ、それは……本当なのか……?」
キラーリだけでなく、他の居合わせた商人やギルドの職員達も真剣に耳を傾ける。そんな中にあっても、ギルド長は口を閉じてはいても、不貞腐れたような不快を示す表情を隠しもしないでこちらに向けている。
それは置いておいて、フィルズは続けた。
「本当だ。素質があっても、努力しなければその才能は眠ったままだ。この場合、加護は指標でしかない。だが、努力しないなら、期待を裏切るなら、加護なんてあっても意味ないだろ? だから取り上げる」
「っ……そんな事が……」
「そうだ。それでお前達は……期待を裏切った」
「っ、どういう……っ」
「視えないんだろ? 加護持ちには視えるように顕現しているのに、あの三人以外、目を向けなかった。それが証拠だ」
「っ、まさかっ、今ここに神がっ!?」
ようやく気付いた。ざわりと他の者達も騒然とし、そこに視線を向ける。だが、彼らの目には映らない。
そこに、ギルド長が我慢ならないというように怒鳴る。
「大人を揶揄うのもいい加減にしろっ! 警備官! このガキを追い出せ!」
そう怒鳴るが、警備の者が動くことはない。彼らも分かっていた。神官の態度と照らし合わせれば、神の事でフィルズは嘘を吐いていないと。
そんな中、さすがのサウルも苛立ちを抑え切れなかったようだ。
「ここまでの愚か者に、加護を与えていたとはな……」
その場に誰にでも視えるよう顕現する。そうすると、神気がこの場に満ちた。
「「「「「っ!!」」」」」
「サウル。神気は仕方ないにせよ、殺気はやめてやってくれ」
「これはすまん」
「「「「「っ……」」」」」
フィルズ以外は、感じた事のない圧迫感に、息を無意識に止めていたようだ。殺気がなくなったことで、少しだけ緩んだ空気を感じて、誰もがその場でへたり込む。
それをゆっくりと睥睨し、サウルは失望の色を目に宿して口を開いた。
「残念だ……」
「「「「「っ……!!」」」」」
そうして、サウルは目を伏せ、姿を消した。フィルズはこの場からサウルが消えたのを確認してから苦笑し、未だに立ち上がれずに居る者達に冷たい視線を向けた。
「神を失望させたんだ。猛省しろ。バカ共がっ」
「「「「「……っ」」」」」
それだけ言って、フィルズは商業ギルドを後にした。
しばらく愕然としながら座り込んでいた者達は、キラーリがゆっくりと立ち上がったことで、止まっていた思考を再開する。
肩を落とした様子のまま、キラーリが誰にともなく呟いた。
「……私は、これから教会に行って、加護を確認してもらってくる……後で報告に来よう……」
すると、一人の職員が手を挙げた。
「わ、私もお供させてください。これが本当ならば私たちは……後一人、一緒に確認を」
「そうだな……確認しよう」
「はいっ」
キラーリ一人だけでは確証がない。だから、サウルの加護を持っている二人の職員と、居合わせた商人の二人が一緒に向かうことになった。
そして、教会でそれは証明された。
「っ……私は、なんてことを……っ」
そうして、ようやくここで、神を失望させたことの罪の重さを理解したのだ。この話は即日、王都中に広まっていった。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
「ふざけた事をぬかすな。教会が後ろ盾だからと良い気になりやがって。ガキが商売の真似事をしているだけでも不愉快だと言うのにっ」
「はっ! 見た目と権力で人を測るしか能がない奴は、言うことが違うなあ」
「っ、なんだと!!」
「あ~あ、これで反論しようとするってことは、図星ってことじゃん。そんな事も分かんねえの?」
馬鹿じゃんと言葉にしなくてもそう伝わるよう鼻で笑ってやるフィルズ。
傍に居るキラーリは、それを見て唖然としていた。ここまでギルド長相手に食ってかかる子どもなどいないだろう。
そんなキラーリにも、フィルズは鋭い一瞥を向ける。そして、自身の横を手で示した。
「言葉で言っても理解できないお前らにも、分かりやすいようにしてやろう。ここに、誰が居るか分かる奴は?」
これに、キラーリが眉根を寄せて不審に思いながらも口を開く。
「……なんのおふざけだ?」
「俺がふざけるなら、もっと笑かしてんよっ。言ったろ? 加護は消える事もある。神がその生き方に相応しくないと判断すれば、加護は消える。だから、お前達には視えないんだ」
「……意味が……」
分からないと伝えながらも、キラーリの目は泳いでいる。察しているのだ。フィルズとフィルズが指す空間を見比べる。神官が礼を尽くしていたのだ。フィルズが神の事で嘘は吐かないだろうと、彼は無意識の内にも判断していた。
ギルド長よりも話は通じるらしいキラーリ。ならばとフィルズは彼に向き直る。
「あんたは、商業神の加護があったから、商人になったんじゃないのか?」
「……ああ。代々続く商家だ。祝福の儀でサウル神様の加護をいただけた……」
「そうか……祝福の儀で確認できるのは、素質と期待だ。それが加護として与えられている。だが……その期待を裏切れば、神は加護を取り上げることが出来る」
「っ、それは……本当なのか……?」
キラーリだけでなく、他の居合わせた商人やギルドの職員達も真剣に耳を傾ける。そんな中にあっても、ギルド長は口を閉じてはいても、不貞腐れたような不快を示す表情を隠しもしないでこちらに向けている。
それは置いておいて、フィルズは続けた。
「本当だ。素質があっても、努力しなければその才能は眠ったままだ。この場合、加護は指標でしかない。だが、努力しないなら、期待を裏切るなら、加護なんてあっても意味ないだろ? だから取り上げる」
「っ……そんな事が……」
「そうだ。それでお前達は……期待を裏切った」
「っ、どういう……っ」
「視えないんだろ? 加護持ちには視えるように顕現しているのに、あの三人以外、目を向けなかった。それが証拠だ」
「っ、まさかっ、今ここに神がっ!?」
ようやく気付いた。ざわりと他の者達も騒然とし、そこに視線を向ける。だが、彼らの目には映らない。
そこに、ギルド長が我慢ならないというように怒鳴る。
「大人を揶揄うのもいい加減にしろっ! 警備官! このガキを追い出せ!」
そう怒鳴るが、警備の者が動くことはない。彼らも分かっていた。神官の態度と照らし合わせれば、神の事でフィルズは嘘を吐いていないと。
そんな中、さすがのサウルも苛立ちを抑え切れなかったようだ。
「ここまでの愚か者に、加護を与えていたとはな……」
その場に誰にでも視えるよう顕現する。そうすると、神気がこの場に満ちた。
「「「「「っ!!」」」」」
「サウル。神気は仕方ないにせよ、殺気はやめてやってくれ」
「これはすまん」
「「「「「っ……」」」」」
フィルズ以外は、感じた事のない圧迫感に、息を無意識に止めていたようだ。殺気がなくなったことで、少しだけ緩んだ空気を感じて、誰もがその場でへたり込む。
それをゆっくりと睥睨し、サウルは失望の色を目に宿して口を開いた。
「残念だ……」
「「「「「っ……!!」」」」」
そうして、サウルは目を伏せ、姿を消した。フィルズはこの場からサウルが消えたのを確認してから苦笑し、未だに立ち上がれずに居る者達に冷たい視線を向けた。
「神を失望させたんだ。猛省しろ。バカ共がっ」
「「「「「……っ」」」」」
それだけ言って、フィルズは商業ギルドを後にした。
しばらく愕然としながら座り込んでいた者達は、キラーリがゆっくりと立ち上がったことで、止まっていた思考を再開する。
肩を落とした様子のまま、キラーリが誰にともなく呟いた。
「……私は、これから教会に行って、加護を確認してもらってくる……後で報告に来よう……」
すると、一人の職員が手を挙げた。
「わ、私もお供させてください。これが本当ならば私たちは……後一人、一緒に確認を」
「そうだな……確認しよう」
「はいっ」
キラーリ一人だけでは確証がない。だから、サウルの加護を持っている二人の職員と、居合わせた商人の二人が一緒に向かうことになった。
そして、教会でそれは証明された。
「っ……私は、なんてことを……っ」
そうして、ようやくここで、神を失望させたことの罪の重さを理解したのだ。この話は即日、王都中に広まっていった。
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