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15th ステージ

171 そんなバカな!

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大氾濫まで二年を切った。そのことをしっかりと自覚させるよう、魔法師長のケンレスティンと教皇ソルマルトが改めて大氾濫について説明する。

その後、それぞれの国の迷宮の攻略の進み具合の報告が行われ、次に、各国の王達が聞きたがっていたこの迷宮内の住宅地や農耕地、何よりもこの場所についての説明が始まった。

これは、ヒストリアが前に立った。

「迷宮内には、地上よりも遥かに濃い魔素があるのは知っているだろう。濃い魔素であるにも関わらず、それは魔素だまりを作ることなく、この迷宮内を絶えず巡回している」

誰もヒストリアの正体が竜人族だなどとは思わないだろう。静かにその説明を聞いている。

堂々としたその姿から、王族に次ぐ立場ある人だろうと勝手に思い込んでいるようだ。

大氾濫についての説明を改めて聞いたことで、いい具合に危機感を持ったらしく、更には、誰の目から見ても羨ましいと思える農耕地を見れば、真剣にもなるだろう。

「魔素によって、あの人工太陽が生まれ、その光や土には魔素が綺麗に混ざっている。これにより、魔素に強い品種は、地上よりも育ちが早く、できた作物には魔素が込められているため、それを食べることで、魔力の回復薬よりも確かな吸収力が生まれることが確認されている」
「っ、魔力回復薬が……要らないということか……?」
「魔力の回復が早いということは、肉体も活性化する。よって、体力の回復も見込める」
「はっ、だから、迷宮内の作物や薬草の効能が高いのか……」

ヒストリアの説明で、密かに疑問に思っていたことも解決したようだ。

ここまでは、なるほどと納得できる話である。しかし、ここで使われたものの説明はこれで全てではない。

「迷宮の攻略が思うように進んでいない所は、この農耕地まで整える段階まで持って行けるだろうかと不安だろう。そこで朗報だ。ここに来るまでに見た農耕地は、作付けしてから一週間ほどしか経っていない」
「「「「「はあ!?」」」」」
「そんなバカな!」

驚くのも無理はない。だが、嘘など吐いていない。

「迷宮の品種は、多少は実るまでの期間が短いが、今回のものは、先日開発された『促進魔法』を使用している」
「そくしん……促進?」
「そうだ。地上で使えば、半月ほどの時間が一日で済む。この迷宮内では、ひと月が一日だ」
「「「「「……っ……」」」」」

そんなことが本当にあるのかと、王族達は絶句した。本当ならば画期的で、知ってしまえば使わないなんてことは無理だ。

「ただし、迷宮の作物は回復力が高いために問題はないが、地上でこの魔法を乱用した場合は、一年ほどで土地の力がなくなり荒廃したものになるだろう。農地として再び使うには、土の改良などをしてまた一年ほどは調整が必要になってくる。よって、地上では使わないことだ」
「「「「「……」」」」」
「で、ですが、迷宮内ならば問題ないのですよね? でしたら……教えていただけるのでしょうか。もちろん、迷宮攻略を終えなければ使えませんが……」

王族達は、期待の眼差しを向ける。これに、ヒストリアは頷く。

「もちろんだ。そのために開発、改良したものだからな」
「「「「「おおっ」」」」」

思わず歓声が上がった。

促進魔法の可能性に興奮する一同。しばらくの間、休憩の時間となった。神官達の案内で迷宮内を見て回る者もいた。

それから再び集まったのだが、彼らは攻略済みの迷宮を実際にみる事になったため、未だ、攻略の目処が立たない国々は不満を感じたようだ。

「そもそも、今回の問題のきっかけは聖皇国の行った聖女召喚の儀式を強行したためでしょう」
「そうですっ。そのようなことをした者達に責任を取っていただきたい」
「教皇。あなたは被害者側であることは分かっているが、納得できないこともある」
「愚かな事をしでかした者達に、攻略させるのが筋ではないか?」

そんな意見で盛り上がっていく。

そこに、リンディエールが一人の壮年の男を連れて現れたのだ。

「話は聞かせてもらったで!!」
「「「「「!?」」」」」

子どもがなぜと、リンディエールを知らない国の者達は眉を顰め、知る者達は目を瞬かせた。何をやらかす気だろうかと、一部は期待してもいた。

リンディエールはそんな期待を裏切りはしない。







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読んでくださりありがとうございます◎

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