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15th ステージ
170 どうなっている!?
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その日。続々と転移門を通って各国の王や代表達がやって来た。
そこから会議室となる場所までに案内されたのは、広大で美しく実った農耕地だ。王侯貴族は、迷宮内にそのようなところがある事など見たことがないのが普通だ。思わずポカンと口を開けて立ち止まってしまうのは仕方がないだろう。
「なっ、どうなっている!?」
「太陽? いや、魔石? 空が見える!?」
「なんて立派な食物……これほどの豊作が迷宮内では可能なのか……」
各々、衝撃の受ける所は違うようだが、この異常ともいえる現状を受け入れるのに必死だった。
視界に見える半分は麦畑。残りの半分は芋や豆類が植っており、青々としていた。全て、リンディエールとヒストリアの成果だ。ヒストリアは完全否定することもないかと考えた結果、リンディエールから促進魔法を教わり、無理のないようにそれを改良したのだ。一気にではなく、おおよそひと月分の成長を一日で促すという具合に抑えていた。
これにより、土の疲弊も酷くはならないだろうという結論に至った。もちろん、これは魔力や魔素を土が吸収する迷宮の環境でならばというものだ。地上でやったならもう少し調整が必要だろう。
まさかこれが数日で出来たものだとは思わない。だから、まだ迷宮との違い受け入れるだけで良いのは彼らとしては助かった所だった。
案内の者達が、頃合いを見て先へと促す。
次にあったのは、家だった。それも、住宅街だ。
「……迷宮? だよな?」
「家? 家など迷宮にあるのですか?」
「まさか……建てたのか?」
「ここ、何階なの?」
「綺麗に並んでいるなあ……」
区画整備も完璧な理想的な住宅街は、中央に公園もあったりする。それも噴水付きだった。
「ここにも太陽が……迷宮内だとは思えない……」
「これが可能な迷宮というのは羨ましい……」
「確かに。私の所では、森のような場所が広がっている階層が多いと聞いている」
「うちは水辺が多いと……」
「あの様な農耕地もあり、住居を建てる技術や時間があるのは羨ましいですな……まだ我が国では十階層までしか探索が終わっていないので……」
「ここまでの余裕があるならば、聖皇国はもっと我々を援助すべきでは?」
「ええ。そこのところは訴えるべきところでしょうなあ」
案内に付いている神官達が弱った顔をしているのに気付きながらの苦言だ。しっかり聞いておけということなのだろう。そこは神官達も手伝いたいと思っているため、口にはしないが落ち着いた様子を崩さないように気をつけていた。
「どうぞ、こちらが会議場になります」
「「「「「おおっ……」」」」」
空があり、周りには美しい花々が咲いている。どこからともなく穏やかな風が吹いており、室内の様に安定した温度。明るさも丁度良い具合で、こちらは最適な気温や天気の時にピクニックにでも来たような、そんな心地よさがあった。
中央には大きな輪になったテーブル。中央にはなにやらどこかの美しい風景の映像が映し出されている。
それぞれの席に案内され、飲み物や軽食が配られる。始まる時間まではまだ余裕があるため、ここまで見て来た事や思ったことを咀嚼しながら、穏やかに歓談が続いた。
「このような会議場まで迷宮内に作れるとは……」
「我々の国でも出来るのでしょうか……」
「確か、全ての階層を攻略することで、魔獣が現れなくなるとは聞いていますが……」
「いつになることでしょう……やはり、ここの神官達を派遣していただいて、どうにかすべきですね」
「そうですなあ。中々、冒険者達は上手く動かんので、困ったおります」
「協力的ではない者が多くて辟易していますよ」
愚痴大会になっていくのはもはや止められそうになかった。
そこに、教皇ソルマルトやヘルナ達がやって来た。いよいよ、会議が始まる。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
そこから会議室となる場所までに案内されたのは、広大で美しく実った農耕地だ。王侯貴族は、迷宮内にそのようなところがある事など見たことがないのが普通だ。思わずポカンと口を開けて立ち止まってしまうのは仕方がないだろう。
「なっ、どうなっている!?」
「太陽? いや、魔石? 空が見える!?」
「なんて立派な食物……これほどの豊作が迷宮内では可能なのか……」
各々、衝撃の受ける所は違うようだが、この異常ともいえる現状を受け入れるのに必死だった。
視界に見える半分は麦畑。残りの半分は芋や豆類が植っており、青々としていた。全て、リンディエールとヒストリアの成果だ。ヒストリアは完全否定することもないかと考えた結果、リンディエールから促進魔法を教わり、無理のないようにそれを改良したのだ。一気にではなく、おおよそひと月分の成長を一日で促すという具合に抑えていた。
これにより、土の疲弊も酷くはならないだろうという結論に至った。もちろん、これは魔力や魔素を土が吸収する迷宮の環境でならばというものだ。地上でやったならもう少し調整が必要だろう。
まさかこれが数日で出来たものだとは思わない。だから、まだ迷宮との違い受け入れるだけで良いのは彼らとしては助かった所だった。
案内の者達が、頃合いを見て先へと促す。
次にあったのは、家だった。それも、住宅街だ。
「……迷宮? だよな?」
「家? 家など迷宮にあるのですか?」
「まさか……建てたのか?」
「ここ、何階なの?」
「綺麗に並んでいるなあ……」
区画整備も完璧な理想的な住宅街は、中央に公園もあったりする。それも噴水付きだった。
「ここにも太陽が……迷宮内だとは思えない……」
「これが可能な迷宮というのは羨ましい……」
「確かに。私の所では、森のような場所が広がっている階層が多いと聞いている」
「うちは水辺が多いと……」
「あの様な農耕地もあり、住居を建てる技術や時間があるのは羨ましいですな……まだ我が国では十階層までしか探索が終わっていないので……」
「ここまでの余裕があるならば、聖皇国はもっと我々を援助すべきでは?」
「ええ。そこのところは訴えるべきところでしょうなあ」
案内に付いている神官達が弱った顔をしているのに気付きながらの苦言だ。しっかり聞いておけということなのだろう。そこは神官達も手伝いたいと思っているため、口にはしないが落ち着いた様子を崩さないように気をつけていた。
「どうぞ、こちらが会議場になります」
「「「「「おおっ……」」」」」
空があり、周りには美しい花々が咲いている。どこからともなく穏やかな風が吹いており、室内の様に安定した温度。明るさも丁度良い具合で、こちらは最適な気温や天気の時にピクニックにでも来たような、そんな心地よさがあった。
中央には大きな輪になったテーブル。中央にはなにやらどこかの美しい風景の映像が映し出されている。
それぞれの席に案内され、飲み物や軽食が配られる。始まる時間まではまだ余裕があるため、ここまで見て来た事や思ったことを咀嚼しながら、穏やかに歓談が続いた。
「このような会議場まで迷宮内に作れるとは……」
「我々の国でも出来るのでしょうか……」
「確か、全ての階層を攻略することで、魔獣が現れなくなるとは聞いていますが……」
「いつになることでしょう……やはり、ここの神官達を派遣していただいて、どうにかすべきですね」
「そうですなあ。中々、冒険者達は上手く動かんので、困ったおります」
「協力的ではない者が多くて辟易していますよ」
愚痴大会になっていくのはもはや止められそうになかった。
そこに、教皇ソルマルトやヘルナ達がやって来た。いよいよ、会議が始まる。
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