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15th ステージ
163 間抜けやなあ
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一日遅れですみません。
**********
報せを聞いた翌日、ファシードが魔法師長のケンレスティンと共に、ヒストリアの屋敷までやって来た。
「どうもねえ~、あの~、なんて言ったかしらん? 次男以降を連れて行っちゃう子達~」
「ん? あ~、ブランシェレルやったか?」
「それそれ~ぇ。その子達が~、一気に子ども達を連れ去ったみた~い」
「追い出さんかったん? 忠告は行っとったはずやろ?」
北のシーシェでもほんの数人、組織の人間を確認出来たらしい。そして、隣のケフェラルには多かったと聞いている。それらは摘発し、捕らえられたようだ。しかし、他国にはまだまだ居るらしい。
そのような組織が暗躍しているから注意すべきだと話は発信できていたはずだった。
ケンレスティンが首を横に振りながら、話を引き継ぐ。
「他国には、貴身病の治療法と共に、あの組織についての情報も公開し、忠告していましたが、上手く両方の対処が出来なかった国があったようです」
同席していたヒストリアが眉を顰める。
「それは、あれか? 長男が治療されて快癒が見込めたことで、喜んでいる間に、次男以降の対応を忘れたということか?」
「はい……貴族の数がそもそも減っており、これ以上は、先の未来で国の政務に影響さえ及ぼすかもしれないと危惧していた国は多かったようなのです……それが解決したとなれば……」
「お祭り騒ぎになるわなあ。盛大な快気祝いのパーティとか開きそうや」
「……やったそうです……そのパーティの最中、子ども達が消えたのです……」
「間抜けやなあ」
貴身病にならなかった次男以降の者達も、傷付いただろう。予備の子として厳しく教育されているのに、両親からの愛情を感じることもない。頑張って、努力して認められようとして、それなのに突然、もう大丈夫たからと言われるのだ。
「子どもは健気に頑張ったやろうに……」
それを褒めるでもなく、ずっと両親に気にかけられて、心配させてきた長男が、普通に動けるようになったからと盛大なパーティを開く。それがどれほど子どもたちを傷付けるだろう。
「子ども達の方が見限ったってことやなあ」
「うんうん。それにぃ。そういう国ってねぇ。そうやって~ぇ、子どもが少なくなってるって~ぇ、分かってるのにぃ、貴族としての矜持と選民意識が~ぁ、とにかく高いのよぉ。子どもは大事にすべきよねぇ?」
これに、リンディエールは即答する。
「それは国が滅びても文句言えんやん」
「そうよね~」
「……はい……」
ケンレスティンは、これから苦労することになるその国の民達を思った。もっと、その国へ何か出来なかっただろうかと考えているようだ。
しかし、ファシードからすれば、先を見通す頭もない者達が治める国など、存続していくのも迷惑で、周りの国が気の毒だと思っていた。
「あの国の民たちは~ぁ、きっと散り散りになるわね~ぇ」
「そんな国やったら、上がゴタゴタするん、民達が気付くんは、もう少し先やない?」
今はまだ、その国の上層部もこの、事の大きさを理解していないだろう。
「噂が流れているようです。貴族社会を支える、補佐となるべき子ども達が消えたと……」
「貴族よりぃ、庶民の方がぁ、現実をよく見ているわ~」
「以前から、下町で貴族家の様子が、囁かれていたようです……病気の長男にばかり構う貴族……きっとその両親を、努力家な次男以降の子ども達は見捨てる時が来るだろう……と」
「あ~、流れてもしゃあない噂やなあ」
使用人達は、客観的に貴族家の現状を見ているだろう。健気に努力する子どもには、胸を打たれるものだ。現状を変えられなくても、味方になってあげたいと思うのが自然だろう。
「そこを突くのが、あの組織だな」
ヒストリアが冷静に分析していた。
「ジェルラスも危なかったんや……子どもらにしても不満は溜まっとるって」
「最早、なるべくして成ったものだな」
「せやなあ……けど、貴族が少なくなる現状はマズいで。その上に、民達も散り散りになるとなると……大氾濫の影響がモロに出る」
「冒険者は、そんな上が瓦解寸前の国など、真っ先に見限るだろうからな」
「そうなると……おばば、二年も保たんわ」
「あらぁ。大変ね~ぇ」
完全に他人事だ。
「あかんて。二つ隣の国やろ?」
「そうねえ?」
「ただでさえ、ちっさい氾濫は起きとる。人が居なくなるゆうことは、それだけ手を入れる人が居らんくなるゆうことや」
「……放置された場合、どうなるのです……?」
ケンレスティンが、顔色を悪くして尋ねてきた。良い結果にならないのは想像できるだろう。
ヒストリアが難しい顔をして答えた。
「魔獣や魔物が集まると、魔素が溜まるそして、魔素溜まりが出来る。そうなるとどうなるか……分かるだろう」
「っ、氾濫が……氾濫を呼ぶことになるのですね……」
「ああ。その対応をするのは、隣の国になるだろう。そして、難民が押し寄せてくる。その対応にも追われる事になる」
「……間違いなく、こちらにも影響が来ますね……国王に、対策会議をお願いして参ります」
「それが良いだろうな……」
「……」
少し雰囲気が暗くなった部屋。だからだろう。リンディエールは明るい声を上げる。
「ええやんっ。演習場所が増えるんやで!? どの国にも大氾濫の時、傍観者にはさせん! というかなれんっ。大体、ブランシェレルも、この時期に何がしたいんや?」
「……調べるか」
「せやな。ほんで……っ、躾直して、大氾濫にも向き合わせたるわ……っ、ふっふっふっ。腕が鳴るなあ」
「……」
「……」
「あらあら……」
リンディエールの、かつてないやる気に満ちた様子を見て、ヒストリア達は揃ってブランシェレルを気の毒に思った。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
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報せを聞いた翌日、ファシードが魔法師長のケンレスティンと共に、ヒストリアの屋敷までやって来た。
「どうもねえ~、あの~、なんて言ったかしらん? 次男以降を連れて行っちゃう子達~」
「ん? あ~、ブランシェレルやったか?」
「それそれ~ぇ。その子達が~、一気に子ども達を連れ去ったみた~い」
「追い出さんかったん? 忠告は行っとったはずやろ?」
北のシーシェでもほんの数人、組織の人間を確認出来たらしい。そして、隣のケフェラルには多かったと聞いている。それらは摘発し、捕らえられたようだ。しかし、他国にはまだまだ居るらしい。
そのような組織が暗躍しているから注意すべきだと話は発信できていたはずだった。
ケンレスティンが首を横に振りながら、話を引き継ぐ。
「他国には、貴身病の治療法と共に、あの組織についての情報も公開し、忠告していましたが、上手く両方の対処が出来なかった国があったようです」
同席していたヒストリアが眉を顰める。
「それは、あれか? 長男が治療されて快癒が見込めたことで、喜んでいる間に、次男以降の対応を忘れたということか?」
「はい……貴族の数がそもそも減っており、これ以上は、先の未来で国の政務に影響さえ及ぼすかもしれないと危惧していた国は多かったようなのです……それが解決したとなれば……」
「お祭り騒ぎになるわなあ。盛大な快気祝いのパーティとか開きそうや」
「……やったそうです……そのパーティの最中、子ども達が消えたのです……」
「間抜けやなあ」
貴身病にならなかった次男以降の者達も、傷付いただろう。予備の子として厳しく教育されているのに、両親からの愛情を感じることもない。頑張って、努力して認められようとして、それなのに突然、もう大丈夫たからと言われるのだ。
「子どもは健気に頑張ったやろうに……」
それを褒めるでもなく、ずっと両親に気にかけられて、心配させてきた長男が、普通に動けるようになったからと盛大なパーティを開く。それがどれほど子どもたちを傷付けるだろう。
「子ども達の方が見限ったってことやなあ」
「うんうん。それにぃ。そういう国ってねぇ。そうやって~ぇ、子どもが少なくなってるって~ぇ、分かってるのにぃ、貴族としての矜持と選民意識が~ぁ、とにかく高いのよぉ。子どもは大事にすべきよねぇ?」
これに、リンディエールは即答する。
「それは国が滅びても文句言えんやん」
「そうよね~」
「……はい……」
ケンレスティンは、これから苦労することになるその国の民達を思った。もっと、その国へ何か出来なかっただろうかと考えているようだ。
しかし、ファシードからすれば、先を見通す頭もない者達が治める国など、存続していくのも迷惑で、周りの国が気の毒だと思っていた。
「あの国の民たちは~ぁ、きっと散り散りになるわね~ぇ」
「そんな国やったら、上がゴタゴタするん、民達が気付くんは、もう少し先やない?」
今はまだ、その国の上層部もこの、事の大きさを理解していないだろう。
「噂が流れているようです。貴族社会を支える、補佐となるべき子ども達が消えたと……」
「貴族よりぃ、庶民の方がぁ、現実をよく見ているわ~」
「以前から、下町で貴族家の様子が、囁かれていたようです……病気の長男にばかり構う貴族……きっとその両親を、努力家な次男以降の子ども達は見捨てる時が来るだろう……と」
「あ~、流れてもしゃあない噂やなあ」
使用人達は、客観的に貴族家の現状を見ているだろう。健気に努力する子どもには、胸を打たれるものだ。現状を変えられなくても、味方になってあげたいと思うのが自然だろう。
「そこを突くのが、あの組織だな」
ヒストリアが冷静に分析していた。
「ジェルラスも危なかったんや……子どもらにしても不満は溜まっとるって」
「最早、なるべくして成ったものだな」
「せやなあ……けど、貴族が少なくなる現状はマズいで。その上に、民達も散り散りになるとなると……大氾濫の影響がモロに出る」
「冒険者は、そんな上が瓦解寸前の国など、真っ先に見限るだろうからな」
「そうなると……おばば、二年も保たんわ」
「あらぁ。大変ね~ぇ」
完全に他人事だ。
「あかんて。二つ隣の国やろ?」
「そうねえ?」
「ただでさえ、ちっさい氾濫は起きとる。人が居なくなるゆうことは、それだけ手を入れる人が居らんくなるゆうことや」
「……放置された場合、どうなるのです……?」
ケンレスティンが、顔色を悪くして尋ねてきた。良い結果にならないのは想像できるだろう。
ヒストリアが難しい顔をして答えた。
「魔獣や魔物が集まると、魔素が溜まるそして、魔素溜まりが出来る。そうなるとどうなるか……分かるだろう」
「っ、氾濫が……氾濫を呼ぶことになるのですね……」
「ああ。その対応をするのは、隣の国になるだろう。そして、難民が押し寄せてくる。その対応にも追われる事になる」
「……間違いなく、こちらにも影響が来ますね……国王に、対策会議をお願いして参ります」
「それが良いだろうな……」
「……」
少し雰囲気が暗くなった部屋。だからだろう。リンディエールは明るい声を上げる。
「ええやんっ。演習場所が増えるんやで!? どの国にも大氾濫の時、傍観者にはさせん! というかなれんっ。大体、ブランシェレルも、この時期に何がしたいんや?」
「……調べるか」
「せやな。ほんで……っ、躾直して、大氾濫にも向き合わせたるわ……っ、ふっふっふっ。腕が鳴るなあ」
「……」
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