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15th ステージ
160 健全や
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ヒストリアの封印が解けてから、半年が過ぎようとしていた。
未だ隣のケフェラルの地下迷宮の攻略は終わっていない。同時に、シーシェの方も攻略を始めたのだが、どちらも難易度の高い迷宮のため、入れる者は限られる。
それでも、数でなんとか進めているという状況だ。どちらの国でも、貴族達を鍛えようと、その国に所属している高ランクの冒険者達に頭を下げて指導をお願いしていた。
そんな中、リンディエールとヒストリアは、訓練の邪魔にならないよう、少し迷宮内の魔獣や魔物を間引くなど、協力という形で遊んでいる。マッピングも請け負っていた。
それぞれの国の離宮に転移門が設置されたことで、その日の気分によってどちらかの迷宮へと遊びにいっていた。更に時折、剣聖のエリクイールも仲間に入っている。
この日も、朝から雨が降り、農作業ができないということもあって、エリクイールから同行したいと連絡が来た。リンディエールの居場所を確認した彼は、次の瞬間にはそこに転移して来る。
この一年ほどで、貴族達を鍛えるだけでなく、エリクイールもレベルを上げていた。大賢者と呼ばれるイクルスやケンレスティンから魔法を教わり、レベルが百を超えていたこともあって、それをどんどん吸収した。よって、転移もお手のものだ。
エリクイールを連れて、その日は隣のケフェラルの地下迷宮にリンディエールとヒストリアは来ていた。
「ひゃ~っ、これは芸術やな!」
「これは凄い!」
「……本物みたい……」
三人が顔色を変えたのは、迷宮の地下五十階。広い場所に出たと思えば、その中心には精巧に作られた石像が並べられていた。それも、見知った顔ばかりだ。
「アレ! アレ見てや! あそこ! ヘルナばあちゃんやない!? 隣はバーグナーのおじいや!」
「見たことのある顔ばかり……というか、ここに入った事のある者を模しているのか……」
その石像は、どれも正装した姿。楽しそうにダンスを踊る様子を模しており、ここはダンスホールというわけだ。
しかし、違う所もあった。
「……背中に翼が……」
「細かいな……羽の一つ一つまで精巧だ……」
大きな翼が折り畳まれ、背中に付いていたのだ。
「あの大きさなら飛べそうやなっ」
「確かに、人が飛べるとすれば、あれくらい……」
「……飛ぶ……」
その時、石像が動いた。ペアで組んでいた手が動き、全員がこちらを向いた。
「……まさか……え? ほんまに?」
「……そのまさかみたいだな……」
「……アレと戦う……壊す……?」
「「もったいないな……」」
「……うん……」
石像のはずなのに、動きが滑らかで、どちからといえば、粘土でできているのではないかと思える艶が見えた。そして、男性像は腰にあった飾り剣を、女性像は、腰の裏や胸元に隠してあったらしい扇子やナイフを取り出して構えた。
「あないな所に武器を隠し持っとったん!? 参考にするわ!」
「リン! そうじゃない!」
「……」
「せやかてっ、ドレスの下しか思いつかんかったんやもん! アレはなあ、色っぽい姉ちゃんがやるからええねん!」
「……見せるの前提か?」
「……」
「幼女の太もも見て喜ぶんは、変態やろ!」
「うっ、んんん~……いや、だから、見せるつもりだったのか?」
「思わず見てまうやろ!? それも武器やねん! 敵の目線を下げるのも、立派な作戦っ……エリィちゃんどないしたん?」
「……っ……別に……」
エリクイールが真っ赤な顔になって顔を横に背けていた。それを見て、リンディエールは察する。
「あっ、なんや。エリィちゃん、女に興味あったん?」
「っ!! なっ」
「あ~、良かったわ。健全や。大丈夫や。うんうん。オススメできる色っぽい姉ちゃん探しとくわ」
「っ、そっ、そんなのはいらないっ」
「えー」
武器を構えている石像を気にせず、そんな会話をしているリンディエール達。そろそろ翼を広げて前のめりになり出したのは確認している。
「だっ、大氾濫が終わってから……でいい……」
「ん? なんや? 聞こえんかった」
「っ……」
照れるように、また目を逸らされた。それに首を傾げて問いかけようとしたが、敵の方が早かった。
「リン! 来るぞ!」
「っ、せやった! 戦闘開始やで! エリィちゃん!」
「っ……ああ……」
そうして、戦闘が開始された。お陰で、この話は有耶無耶になったのだが、ヒストリアだけは理解していた。
「まったく、リンは鈍いな……」
そう呟いて苦笑するのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
遅くなりました。
未だ隣のケフェラルの地下迷宮の攻略は終わっていない。同時に、シーシェの方も攻略を始めたのだが、どちらも難易度の高い迷宮のため、入れる者は限られる。
それでも、数でなんとか進めているという状況だ。どちらの国でも、貴族達を鍛えようと、その国に所属している高ランクの冒険者達に頭を下げて指導をお願いしていた。
そんな中、リンディエールとヒストリアは、訓練の邪魔にならないよう、少し迷宮内の魔獣や魔物を間引くなど、協力という形で遊んでいる。マッピングも請け負っていた。
それぞれの国の離宮に転移門が設置されたことで、その日の気分によってどちらかの迷宮へと遊びにいっていた。更に時折、剣聖のエリクイールも仲間に入っている。
この日も、朝から雨が降り、農作業ができないということもあって、エリクイールから同行したいと連絡が来た。リンディエールの居場所を確認した彼は、次の瞬間にはそこに転移して来る。
この一年ほどで、貴族達を鍛えるだけでなく、エリクイールもレベルを上げていた。大賢者と呼ばれるイクルスやケンレスティンから魔法を教わり、レベルが百を超えていたこともあって、それをどんどん吸収した。よって、転移もお手のものだ。
エリクイールを連れて、その日は隣のケフェラルの地下迷宮にリンディエールとヒストリアは来ていた。
「ひゃ~っ、これは芸術やな!」
「これは凄い!」
「……本物みたい……」
三人が顔色を変えたのは、迷宮の地下五十階。広い場所に出たと思えば、その中心には精巧に作られた石像が並べられていた。それも、見知った顔ばかりだ。
「アレ! アレ見てや! あそこ! ヘルナばあちゃんやない!? 隣はバーグナーのおじいや!」
「見たことのある顔ばかり……というか、ここに入った事のある者を模しているのか……」
その石像は、どれも正装した姿。楽しそうにダンスを踊る様子を模しており、ここはダンスホールというわけだ。
しかし、違う所もあった。
「……背中に翼が……」
「細かいな……羽の一つ一つまで精巧だ……」
大きな翼が折り畳まれ、背中に付いていたのだ。
「あの大きさなら飛べそうやなっ」
「確かに、人が飛べるとすれば、あれくらい……」
「……飛ぶ……」
その時、石像が動いた。ペアで組んでいた手が動き、全員がこちらを向いた。
「……まさか……え? ほんまに?」
「……そのまさかみたいだな……」
「……アレと戦う……壊す……?」
「「もったいないな……」」
「……うん……」
石像のはずなのに、動きが滑らかで、どちからといえば、粘土でできているのではないかと思える艶が見えた。そして、男性像は腰にあった飾り剣を、女性像は、腰の裏や胸元に隠してあったらしい扇子やナイフを取り出して構えた。
「あないな所に武器を隠し持っとったん!? 参考にするわ!」
「リン! そうじゃない!」
「……」
「せやかてっ、ドレスの下しか思いつかんかったんやもん! アレはなあ、色っぽい姉ちゃんがやるからええねん!」
「……見せるの前提か?」
「……」
「幼女の太もも見て喜ぶんは、変態やろ!」
「うっ、んんん~……いや、だから、見せるつもりだったのか?」
「思わず見てまうやろ!? それも武器やねん! 敵の目線を下げるのも、立派な作戦っ……エリィちゃんどないしたん?」
「……っ……別に……」
エリクイールが真っ赤な顔になって顔を横に背けていた。それを見て、リンディエールは察する。
「あっ、なんや。エリィちゃん、女に興味あったん?」
「っ!! なっ」
「あ~、良かったわ。健全や。大丈夫や。うんうん。オススメできる色っぽい姉ちゃん探しとくわ」
「っ、そっ、そんなのはいらないっ」
「えー」
武器を構えている石像を気にせず、そんな会話をしているリンディエール達。そろそろ翼を広げて前のめりになり出したのは確認している。
「だっ、大氾濫が終わってから……でいい……」
「ん? なんや? 聞こえんかった」
「っ……」
照れるように、また目を逸らされた。それに首を傾げて問いかけようとしたが、敵の方が早かった。
「リン! 来るぞ!」
「っ、せやった! 戦闘開始やで! エリィちゃん!」
「っ……ああ……」
そうして、戦闘が開始された。お陰で、この話は有耶無耶になったのだが、ヒストリアだけは理解していた。
「まったく、リンは鈍いな……」
そう呟いて苦笑するのだった。
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