上 下
84 / 182
8th ステージ

084 裏ワザで!

しおりを挟む
周りに人の気配が完全になくなったことを確認し、ベッドに並んで座る。

隷属の腕輪の力を過信しているのだろう。もう騒ぐこともないと、見張りさえ下げたようだ。

「ほんなら、本題や。その腕輪。それ、隷属の腕輪なんよ」
「っ、れ、れいぞく!? そ、それっ、奴隷とかっ……そういう!? ど、どうし、どうしたら!?」

着けているのが気持ち悪いとでもいうように、思いっきり顔を顰め、腕輪を遠ざけようとする天野悠あまのゆう

隷属という言葉から、自分の意思さえ操作されるようで怖いのだろう。その予想は外れていない。だが、騒いでも仕方ないのだ。

「まあまあ、落ち着きいて。どうにかするために、ウチが出てきてん」
「あ、そ、そうなんだ……どうにかできるんだ?」
「任せえ。そんなら、ちょい見してみ」
「うん……」

腕ごと差し出す。リンディエールは、魔石を確認し、今一度鑑定する。


----------
守護の腕輪(偽装/隷属の腕輪)

・主人の腕輪を外す
・魔力を限界まで注ぎ込む(10000)
・主人よりレベルを上げる
いずれかの条件で使用不可となる。
----------


リンディエールは小さく頷く。

それを見て、悠は不安そうに小さな声で尋ねる。

「大丈夫そう?」
「問題あらへんわ。一応、説明しとくか?」
「うん。お願い……」
「ん」

リンディエールは、鑑定で出た情報を彼女に伝えた。

「……一番可能性があるのは?」
「二つ目や。魔力を注ぎ込むやつな」
「魔力……一万って……どんな量なの? 簡単な量なら、付けてる人でも出来ちゃうよね? ってことは……結構な量だと思うんだけど……」

着けている者が、無理に壊そうとして、魔力を使うことは十分にあり得る。この世界だからこそ、腕力よりも魔力に頼るだろう。

「ああ。まあ、問題あらへん」
「……転生だもんね……チートだよね……察した」
「さよか。そういうことや」
「うん。ならよろしく」
「あ、まだ続きがあるんよ」

焦らないでくれと、手で制し、もう一つ、この腕輪に仕掛けられた裏ワザを教えた。

「魔力を一息に破壊可能な魔力量の五倍以上……五万以上を流し込んだ場合、主従が入れ替わるらしいんよ」
「……マジの裏ワザじゃん……」
「せやろ? これを知らんで使っとるあいつらが、かわいそうに思えてくるわ」
「あははっ。ざまあ~」

彼らが絶対の性能を信じているのは、周りから見張りが消えたことからも分かる。恐らく、この裏ワザ対応をした者たちも、それと気付かれないように気を付けてきたのだろう。

もしもの時に、同胞が同じように助かるように。

「ってことも踏まえて、どれにする?」
「もちろん、裏ワザで!」
「了解や!」

リンディエールは、魔力を注ぎ込んだ。現在の魔力量は七千万を超えているのだ。加減が難しいが、五万以上ならいいのだからと、少し多めの設定で注ぎ込んだ。

「っ、な、なんか光ってる……」

魔石に光が宿った。これが成功した証拠のはずだ。

「よし。これで大丈夫やろ。確認するわ」
「うん……」

鑑定する。


----------
守護の腕輪(偽装/隷属の腕輪/効果逆転)

対となる隷属の主の腕輪を着けた者を従えられる。
魔石に触れながら口にする。
同時に命じられるのは、二つまで。
明確にすること。
命令は上書きされていく。
----------

効果逆転の表示が出た。成功だ。使用方法も出ている。

「命じられるのは、二つまでや。それも、きちんと明確にせんとあかんらしい。簡潔に考えんとな」
「う~ん……なら、私に危害を加えないとか?」
「せやな。それは重要や」
「だよね……ちょっと考えてみる。あ、かけ直したりとかできる?」
「二つまでで、上書きされるみたいや」
「そっか……で、これをバレないようにしないとダメなんだよね……ちょっと考えてみるよ。どうせ、あっちからの命令があるから、静かにしてても変じゃないしね」

ゆっくり考えることは出来るだろう。

「帰れないってのは、確かなんだよね……大会は……諦めるしかない……か」
「残念やって言葉で終わりたかないやろうけどな」
「うん……悔しい……けど……諦めるよ。ちゃんと、次の目標に向かわないとね」

さすがは運動部だと感心する。いつまでもクヨクヨしていない。無理やりにでも切り替えられる意思の強さはすごいと思う。

「その意気で頼むで。もう数日後には、ウチが華麗に、ここから盗み出してやるでな」
「……ん? あ、そういえば……そう言ってたね」
「言ったで。ウチは有言実行や。期待しとってや」
「ははっ。うん。待ってるよ」
「当日の衣装から全部、乞うご期待や!」
「衣装?」

首を傾げていたが、気にせずリンディエールは彼女の部屋を後にした。

「次はあっちの塔や!」

まだまだ、下調べは続くのだ。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
来週です!
よろしくお願いします◎

久しぶりに別作品も宣伝☆
キャラ、ライト文芸より
『秘伝賜ります』
お暇潰しに是非どうぞ!
しおりを挟む
感想 563

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

モブですが、婚約者は私です。

伊月 慧
恋愛
 声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。  婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。  待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。 新しい風を吹かせてみたくなりました。 なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉宙ニ
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

処理中です...