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7th ステージ
073 吸収率がええんよ
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ヒストリアは落ち着いた声で伝える。
《あり得ない訳ではない。だが……まあ、人族ではそこまで根気よく強く上げられる者はいなかったな。三百前後までが限度だと思われていたはずだ。そこから、特に上がりにくくなるからというのもある。何より、体にも変化が起きる》
「体に?」
ヘルナが前のめりになっていた。チラリとリンディエールへ心配そうに一同が目を向けるが、当の彼女は、呑気に紅茶を飲んでいた。
それがどうしたと言わんばかりのリンディエールの態度に、ヒストリアはフッと笑って続けた。
《これは、昔の研究だが……レベルが上がるということは、肉体が長く保たれるということだ。それだけ長く生きられるようになる。だから、成長が一気に遅くなると予想される。恐らく、間違ってはいないだろう》
《成長が……》
実際、プリエラの故郷である『不剛の迷宮』で実証されている。女性の年齢を明かすことは紳士としてやってはならないので、プリエラがとうにヘルナの年齢を軽く通り越していることも口にはしなかった。
再びリンディエールへ視線が集まる。そして、ヘルナが気付いた。
「……今でも、十歳にしては少し小さいかもしれないわね……リンちゃん、今レベルいくつ?」
「289や。あと一つでキリが良いんやけどなあ。もどかしいわ~」
人生甘ないわと、大袈裟に肩をすくめて見せるリンディエール。王族組やベンディは先日知らされていたが、ヘルナ達は初耳だ。
「ッ、に、二百!? もうすぐ三百ですって!?」
「おいおい、リン! どこでどうやって、そんなんになるんだ!?」
ヘルナとファルビーラが、思わず立ち上がって騒ぐ。他は、そんな二人の様子を見て呆然としていた。実感が湧かないのだ。
だが、クイントが気付いた。
「つい数日前に286と言っていませんでしたか? そんなにすぐ上がるものなのですか?」
「そういえばそうだなあ。二日か三日で一つ上げたのか?」
ブラムレース王もそんなものなのかと首を傾げた。冒険者でもなければ、レベルなどほとんど気にしないものだ。周りに強い者が居れば問題ないのだから。
「「……」」
これにヘルナとファルビーラ止まりそうになる思考を必死で動かすように目をキョロキョロさせる。信じられないことを聞いたのだ。
「一桁のレベルならまだしも……二日、三日でレベルなんて上がらないわよ……ね……?」
「下手したら年単位だよ……な? え? 違ったか? いやいや、百越えた所から一年とか掛かってただろ?」
お互い、顔を見合わせて確認する。この間、中腰のままだ。動揺具合がよく分かる。
《だよな? 普通は上がり難くなるはずだ。それは平等だと思っていたんだが……どうやら、リンは特殊らしくてな……》
「リンちゃん? どういうこと?」
ヘルナが少し不安そうな色を見せながら目を向けてきた。だが、これにもなんて事ないように答える。
「一般的にレベルが上がるんは、戦闘時やんなあ」
「ええ……倒すことでって聞いたけど……」
この場でこれに詳しそうなのはと、ヘルナは無意識にファシードを見ていた。
それを受けて、ファシードが説明する。
「魔獣や~、魔物を倒すことによって~、その命に蓄えられていた力が~、わずかに近くに居た者の体に吸収される~って言われてるわねぇ」
魔法で倒した場合、遠距離でもそれが適応するのは、魔力の道が出来ているから。だが、途中で多少は散る。よって、直接攻撃によるものの方が、吸収されやすいという。
「ウチは、戦闘中にもそれを吸収しとるらしゅうてな。もちろん、一般的にも熟練度という形で、広がった器を埋めるために無意識に周りから吸収しとるんよ? まあ、微々たるもんやけど。ウチは特に吸収率がええんよ」
熟練度が上がり、増えた余白を、リンディエールはすぐに空気中の魔素から還元し、埋めてしまう。
「器っちゅうんは、満タンにならんと、次の余白が出来んのよ。けど、ウチはすぐ埋められんねん。だから、すぐに次の余白が出来る。それを繰り返していけば、微々たるもんでも大きゅうなるやろ?」
塵も積もればなんとやらだ。
「鍛錬中もウチはコレが起きるよって、人の何倍も効率よくレベルアップできるゆうことや。アレや。特異体質ゆうヤツや」
「「………」」
これは、もしかしたらと一つの可能性がヘルナとファルビーラ、それとファシードの頭にはよぎった。
『目覚め人』特有のものではないかと。過去、『目覚め人』が重宝されたのは、高レベルの者という付加価値もあったのだ。
羨ましいとも言える。だが、ヘルナもファルビーラは、あと何十年生きられるかと考える歳になっているから思うことがある。
きっと、リンディエールは何人もの友人たちに置いていかれるということ。直近で問題になるのは成長速度だろう。
「リンちゃん……幼女のまま何十年も過ごすことにならない?」
「ヤバいだろ、それ! 変に思われるぞ」
同世代が大人になっても、幼女のままの可能性が大だ。
《だよなあ……俺も、散々それは言ったんだ。もっと大人になってからで良いと……》
ヒストリアは、リンディエールが困ったことになるのは嫌だった。特に、あと数年で学園入学という、同年代こ子ども達との集団生活が始まる。だから、レベル上げも今ではなく、大人になってからで良いと言っていたのだ。
しかし、それでもリンディエールは余裕の表情だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回は一週空けます!
よろしくお願いします◎
《あり得ない訳ではない。だが……まあ、人族ではそこまで根気よく強く上げられる者はいなかったな。三百前後までが限度だと思われていたはずだ。そこから、特に上がりにくくなるからというのもある。何より、体にも変化が起きる》
「体に?」
ヘルナが前のめりになっていた。チラリとリンディエールへ心配そうに一同が目を向けるが、当の彼女は、呑気に紅茶を飲んでいた。
それがどうしたと言わんばかりのリンディエールの態度に、ヒストリアはフッと笑って続けた。
《これは、昔の研究だが……レベルが上がるということは、肉体が長く保たれるということだ。それだけ長く生きられるようになる。だから、成長が一気に遅くなると予想される。恐らく、間違ってはいないだろう》
《成長が……》
実際、プリエラの故郷である『不剛の迷宮』で実証されている。女性の年齢を明かすことは紳士としてやってはならないので、プリエラがとうにヘルナの年齢を軽く通り越していることも口にはしなかった。
再びリンディエールへ視線が集まる。そして、ヘルナが気付いた。
「……今でも、十歳にしては少し小さいかもしれないわね……リンちゃん、今レベルいくつ?」
「289や。あと一つでキリが良いんやけどなあ。もどかしいわ~」
人生甘ないわと、大袈裟に肩をすくめて見せるリンディエール。王族組やベンディは先日知らされていたが、ヘルナ達は初耳だ。
「ッ、に、二百!? もうすぐ三百ですって!?」
「おいおい、リン! どこでどうやって、そんなんになるんだ!?」
ヘルナとファルビーラが、思わず立ち上がって騒ぐ。他は、そんな二人の様子を見て呆然としていた。実感が湧かないのだ。
だが、クイントが気付いた。
「つい数日前に286と言っていませんでしたか? そんなにすぐ上がるものなのですか?」
「そういえばそうだなあ。二日か三日で一つ上げたのか?」
ブラムレース王もそんなものなのかと首を傾げた。冒険者でもなければ、レベルなどほとんど気にしないものだ。周りに強い者が居れば問題ないのだから。
「「……」」
これにヘルナとファルビーラ止まりそうになる思考を必死で動かすように目をキョロキョロさせる。信じられないことを聞いたのだ。
「一桁のレベルならまだしも……二日、三日でレベルなんて上がらないわよ……ね……?」
「下手したら年単位だよ……な? え? 違ったか? いやいや、百越えた所から一年とか掛かってただろ?」
お互い、顔を見合わせて確認する。この間、中腰のままだ。動揺具合がよく分かる。
《だよな? 普通は上がり難くなるはずだ。それは平等だと思っていたんだが……どうやら、リンは特殊らしくてな……》
「リンちゃん? どういうこと?」
ヘルナが少し不安そうな色を見せながら目を向けてきた。だが、これにもなんて事ないように答える。
「一般的にレベルが上がるんは、戦闘時やんなあ」
「ええ……倒すことでって聞いたけど……」
この場でこれに詳しそうなのはと、ヘルナは無意識にファシードを見ていた。
それを受けて、ファシードが説明する。
「魔獣や~、魔物を倒すことによって~、その命に蓄えられていた力が~、わずかに近くに居た者の体に吸収される~って言われてるわねぇ」
魔法で倒した場合、遠距離でもそれが適応するのは、魔力の道が出来ているから。だが、途中で多少は散る。よって、直接攻撃によるものの方が、吸収されやすいという。
「ウチは、戦闘中にもそれを吸収しとるらしゅうてな。もちろん、一般的にも熟練度という形で、広がった器を埋めるために無意識に周りから吸収しとるんよ? まあ、微々たるもんやけど。ウチは特に吸収率がええんよ」
熟練度が上がり、増えた余白を、リンディエールはすぐに空気中の魔素から還元し、埋めてしまう。
「器っちゅうんは、満タンにならんと、次の余白が出来んのよ。けど、ウチはすぐ埋められんねん。だから、すぐに次の余白が出来る。それを繰り返していけば、微々たるもんでも大きゅうなるやろ?」
塵も積もればなんとやらだ。
「鍛錬中もウチはコレが起きるよって、人の何倍も効率よくレベルアップできるゆうことや。アレや。特異体質ゆうヤツや」
「「………」」
これは、もしかしたらと一つの可能性がヘルナとファルビーラ、それとファシードの頭にはよぎった。
『目覚め人』特有のものではないかと。過去、『目覚め人』が重宝されたのは、高レベルの者という付加価値もあったのだ。
羨ましいとも言える。だが、ヘルナもファルビーラは、あと何十年生きられるかと考える歳になっているから思うことがある。
きっと、リンディエールは何人もの友人たちに置いていかれるということ。直近で問題になるのは成長速度だろう。
「リンちゃん……幼女のまま何十年も過ごすことにならない?」
「ヤバいだろ、それ! 変に思われるぞ」
同世代が大人になっても、幼女のままの可能性が大だ。
《だよなあ……俺も、散々それは言ったんだ。もっと大人になってからで良いと……》
ヒストリアは、リンディエールが困ったことになるのは嫌だった。特に、あと数年で学園入学という、同年代こ子ども達との集団生活が始まる。だから、レベル上げも今ではなく、大人になってからで良いと言っていたのだ。
しかし、それでもリンディエールは余裕の表情だった。
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