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第七章 秘伝と任されたもの
365 盛大にやりましょう
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学芸会の本番の日がやって来た。
高耶は美咲と樹、そして、俊哉と統二、修と修の母である月子、それと、なぜか行くと言ってついて来たエルラントも連れて小学校にやって来た。
「エルラントさん良いんですか? 席が外になりますけど」
「いいんだよ。優希ちゃんや小さなレディ達の晴れ舞台が見られるなら構わないさ」
「優希達も喜ぶと思いますけどね……」
エルラントは、高耶の妹である優希を可愛がってくれていた。その友達の可奈と美由もだ。時に瑠璃と共にダンスのレッスンも見てくれるらしい。
「けど、外にまで席を作るってか、モニターを用意するとかすげえよなっ」
俊哉が、見えて来た運動場に作られた大きなモニターを確認して目を輝かせていた。
学芸会では、子ども達が全員他の学年のものも鑑賞する。自分たちの教室から、いつも使っている椅子を運び並べれば、体育館の前三分の一が埋まる。
その後ろに保護者用のパイプ椅子を目一杯敷き詰めるのだが、大人と子どもでは使う幅も違うので、かなり圧迫感がある。
そして、その範囲に収めるには、人数も絞る必要があった。ただ、やはり子ども達の成長は多くの保護者に見てほしいものだ。だから、今回は高学年と低学年の三学年ずつ、前半と後半で保護者達を分たようだ。それも、生徒一人につき保護者二人までとの制限もつけた。
校長である那津は、せっかくお休みの日にわざわざ学校に来てくれるのだから、できれば全学年のものを保護者の人たちにも見てもらいたいと言っていた。
『今までは、保護者の方々にはニ学年ごとで入れ替えて見ていただいていたんです。それで、ご両親だけでなく、祖父母の方々にも来てもらいたいと……ですが、そうすると入れ替えに時間もかかってしまって』
子ども達も待ち時間で飽きて来るし、落ち着かないという問題があったらしい。
それを聞いた房田社長が、それならばと今回の事を提案してくれた。
『でしたら、外にモニターを出しましょうか。天気によっては、テントをいくつか張る必要もありますが……高耶君ならそこもどうにかできるだろう?』
『え!? 御当主ったら、天気までどうにかできるの!?』
『……今回は手を出さなくても、土地神様が調整されますよ』
『天気までどうにか出来るのね!!』
『……ですから、土地神様に頼めばです……』
決して、高耶自身の力でではないと説明しても、那津や時島には頼めるのも高耶の力だろうと思ったらしい。
『とりあえず、天気については問題なさそうですし、地域の人たちにも見てもらったらどうです? 音も出しますから、近所の方々へお伝えする必要もあるでしょう』
『そうですわねっ。音や声も、何をやっているか実際に見ないから、煩い騒音として認識されますものっ。是非観ていただきたいわっ』
『ウチの職員達も楽しみにしてるんで、警備や会場整理も任せてください』
『そんなっ。そこまでしていただくなんてっ、申し訳ないわっ』
『こちらも、子ども会の方々とか……相談してみましょう』
『そうねっ。地域の方々との関係も大事ですし。守り隊の方々にも、こうした子ども達の行事を観ていただきたいと思っていたんです』
子どもや孫が通っていなくても、子ども達を見守ってくれる町内の人たちもいる。そんな人たちへの御礼になるのではないかと考えたのだ。
普段、小学校は、子ども達の安全のため、保護者として関係がない人は入れなくなっている。だが、地域の人たちを関係がないからと完全に排除するのは逆に子ども達を守るための目を無くすことになるかもしれない。
近隣の人たちとも上手く付き合っていくべきだろうと那津は考えていた。
そんな話し合いの結果、今回の学芸会は地域の人たちも、外でだが鑑賞できるようにしたというわけだ。
近隣の人たちも、何か手伝えないかと、朝から車で来た人たちの誘導を行ったり、自分たちの家の庭にも車を停めてくれて良いと声がけしたりと、協力してくれていた。
ただし、体育館に入れるのは、子どものいる保護者達だけ。低学年の子どもがいる保護者は午前中の一、二、三年の発表の間、体育館に入れ、午後の高学年の四、五、六年の発表の間は外のモニターで観る事になる。
そうして午前と午後で譲り合って観てもらうことになったようだ。
「高耶は、修さんとずっと中だっけ?」
「ああ。来賓の人たちと一緒に席を用意してくれたらしい」
「なら、エルさんは、俺や統二、月子さん達と一緒だな。月子さんも大丈夫っすか?」
「ええ。それにしても、今日は暑過ぎなくて丁度良い陽気で良かったわよねえ」
「そうそうっ。何? このベストな感じ。昨日までちょい寒い感じだったのに」
そんな俊哉の言葉に、高耶は少しビクっとする。しかし、答えたのはエルラントだった。
「神が祝福しているんだよ」
「へえ。けどそういえば、土地神様が楽しみにしてたんだよな~。さすが神様。ありがとうございます!」
普通に御礼を言う俊哉。それに土地神が笑っているのが高耶にはわかった。多くの人々が、自分たちで考えて協力しようとするその姿に、土地神はとても喜んでいるようだ。
そうして、陽気も良い上に多くの人々が協力しているということで、かなりの人々が楽しそうに小学校に集まったのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
高耶は美咲と樹、そして、俊哉と統二、修と修の母である月子、それと、なぜか行くと言ってついて来たエルラントも連れて小学校にやって来た。
「エルラントさん良いんですか? 席が外になりますけど」
「いいんだよ。優希ちゃんや小さなレディ達の晴れ舞台が見られるなら構わないさ」
「優希達も喜ぶと思いますけどね……」
エルラントは、高耶の妹である優希を可愛がってくれていた。その友達の可奈と美由もだ。時に瑠璃と共にダンスのレッスンも見てくれるらしい。
「けど、外にまで席を作るってか、モニターを用意するとかすげえよなっ」
俊哉が、見えて来た運動場に作られた大きなモニターを確認して目を輝かせていた。
学芸会では、子ども達が全員他の学年のものも鑑賞する。自分たちの教室から、いつも使っている椅子を運び並べれば、体育館の前三分の一が埋まる。
その後ろに保護者用のパイプ椅子を目一杯敷き詰めるのだが、大人と子どもでは使う幅も違うので、かなり圧迫感がある。
そして、その範囲に収めるには、人数も絞る必要があった。ただ、やはり子ども達の成長は多くの保護者に見てほしいものだ。だから、今回は高学年と低学年の三学年ずつ、前半と後半で保護者達を分たようだ。それも、生徒一人につき保護者二人までとの制限もつけた。
校長である那津は、せっかくお休みの日にわざわざ学校に来てくれるのだから、できれば全学年のものを保護者の人たちにも見てもらいたいと言っていた。
『今までは、保護者の方々にはニ学年ごとで入れ替えて見ていただいていたんです。それで、ご両親だけでなく、祖父母の方々にも来てもらいたいと……ですが、そうすると入れ替えに時間もかかってしまって』
子ども達も待ち時間で飽きて来るし、落ち着かないという問題があったらしい。
それを聞いた房田社長が、それならばと今回の事を提案してくれた。
『でしたら、外にモニターを出しましょうか。天気によっては、テントをいくつか張る必要もありますが……高耶君ならそこもどうにかできるだろう?』
『え!? 御当主ったら、天気までどうにかできるの!?』
『……今回は手を出さなくても、土地神様が調整されますよ』
『天気までどうにか出来るのね!!』
『……ですから、土地神様に頼めばです……』
決して、高耶自身の力でではないと説明しても、那津や時島には頼めるのも高耶の力だろうと思ったらしい。
『とりあえず、天気については問題なさそうですし、地域の人たちにも見てもらったらどうです? 音も出しますから、近所の方々へお伝えする必要もあるでしょう』
『そうですわねっ。音や声も、何をやっているか実際に見ないから、煩い騒音として認識されますものっ。是非観ていただきたいわっ』
『ウチの職員達も楽しみにしてるんで、警備や会場整理も任せてください』
『そんなっ。そこまでしていただくなんてっ、申し訳ないわっ』
『こちらも、子ども会の方々とか……相談してみましょう』
『そうねっ。地域の方々との関係も大事ですし。守り隊の方々にも、こうした子ども達の行事を観ていただきたいと思っていたんです』
子どもや孫が通っていなくても、子ども達を見守ってくれる町内の人たちもいる。そんな人たちへの御礼になるのではないかと考えたのだ。
普段、小学校は、子ども達の安全のため、保護者として関係がない人は入れなくなっている。だが、地域の人たちを関係がないからと完全に排除するのは逆に子ども達を守るための目を無くすことになるかもしれない。
近隣の人たちとも上手く付き合っていくべきだろうと那津は考えていた。
そんな話し合いの結果、今回の学芸会は地域の人たちも、外でだが鑑賞できるようにしたというわけだ。
近隣の人たちも、何か手伝えないかと、朝から車で来た人たちの誘導を行ったり、自分たちの家の庭にも車を停めてくれて良いと声がけしたりと、協力してくれていた。
ただし、体育館に入れるのは、子どものいる保護者達だけ。低学年の子どもがいる保護者は午前中の一、二、三年の発表の間、体育館に入れ、午後の高学年の四、五、六年の発表の間は外のモニターで観る事になる。
そうして午前と午後で譲り合って観てもらうことになったようだ。
「高耶は、修さんとずっと中だっけ?」
「ああ。来賓の人たちと一緒に席を用意してくれたらしい」
「なら、エルさんは、俺や統二、月子さん達と一緒だな。月子さんも大丈夫っすか?」
「ええ。それにしても、今日は暑過ぎなくて丁度良い陽気で良かったわよねえ」
「そうそうっ。何? このベストな感じ。昨日までちょい寒い感じだったのに」
そんな俊哉の言葉に、高耶は少しビクっとする。しかし、答えたのはエルラントだった。
「神が祝福しているんだよ」
「へえ。けどそういえば、土地神様が楽しみにしてたんだよな~。さすが神様。ありがとうございます!」
普通に御礼を言う俊哉。それに土地神が笑っているのが高耶にはわかった。多くの人々が、自分たちで考えて協力しようとするその姿に、土地神はとても喜んでいるようだ。
そうして、陽気も良い上に多くの人々が協力しているということで、かなりの人々が楽しそうに小学校に集まったのだった。
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