33 / 75
033 絆されて色々教えちゃったのよ
しおりを挟む
ファクラム・シェンカ
彼が宰相になったのは間違いなく、その時の王の気まぐれだった。
後にも先にも、平民が宰相に抜擢されたことはない。
酷い時代だったという。戦争ばかりで、人々は生き残ることに必死だった。そこで、まだ少年であったファクラムは同年代の王子であった王と出会ったのだ。
《ホント、あの時はマジでおバカなお坊ちゃんでさあ。戦場で迷子になってたんだよね~》
「そこでお助けになられ、友情が芽生えたと?」
ファクラムは輪郭を時折ぼやかせながらお茶会に参加していた。
そして、父や兄達が興奮気味に昔の話しを聞き出しにかかっていたのだ。
《違うよ? ってかアイツ、王位争いで消されそうでさあ。敵にも味方にも狙われるっていう楽しい状況だったんだよ。僕はさあ、その頃武術ってのを極めようと思って戦場を渡り歩いてたのね。だから、アイツの味方をすればもれなく全部が敵に回るって知って都合よかったんだよ》
別に助けたわけではない。ただ、ファクラムは自分が思うようにしたかっただけ。
「なるほど。それは面白そうな状況ですね」
「戦争などやるバカ共など全部敵だ」
《だよねっ。もうめちゃくちゃ楽しかったよっ》
これだけで、戦いの才能もあるとわかる。シェンカの一族がそれなりに強い理由の一端がこれだ。
《そんで、戦争も落ち着いちゃって、僕ももうほとんど敵もいなくなったし、今度は隠密能力を高めようと思ってね。丁度良いからこの国の貴族の不正の証拠とか、片っ端から集めてやったの。で、集めたらいっぱいあったし、アイツに最終的に丸投げしたんだ》
「一斉摘発ですね。不要なゴミは処理すべきです」
「証拠を残すような小物など、国に不要だ」
《その通りっ》
不正をした貴族達の摘発など、シェンカの一族にかかれば朝飯前だ。
《そしたらアイツが言ったんだよね。宰相になって国を自由にしてみない? って。面白そうだから飽きるまで良いよってなったのさ》
「魅力的なお誘いでしたね」
「飽きるまでという条件を付けるとは、抜け目がない」
《いやあ、それなりに楽しかったよ。あんなに長く続いたことってなかったし》
飽き性なところがあるというのは認めている。だからこそ、多方面に手を出すのだ。
その間に妻となる人とも出会い、人生を謳歌した。あまり話には出てこないが、夫であるファクラムを支える良い妻だったという。
《そんで、宰相辞めてからこの領地をもらったんだ。一つの土地を弄れるのはもっと面白いよね》
「自分の目で見られますからね」
「未だ開拓中で、退屈はしませんな」
《でしょ? 我ながら良い遊び場を手に入れたものだよ》
このシェンカ領は最後の遊び場。ファクラムが好き勝手できる箱庭だった。
《ここの変化って見てて飽きないんだよ。だから、キャロウル神にお願いして僕が飽きるまでここに居させてもらってるんだ。でもずっとこうして顕現するのって疲れるから、花が咲く間だけってことにしてる。その方が変化がよくわかるしね》
年に一度、花が咲く時にだけシェンカ領を見て回る。隠密能力の高いファクラムが人の目につくことはなく、一時を楽しむのだ。
しかし、そんなファクラムにフレアリールだけが気付いた。
《フレアちゃんにバレたのは……五歳の時だっけ?》
「そうですね。武術の先生達にサジを投げられて時間を持て余していた時です」
《そうそう。ちっちゃいのにすっごくキレイな型で剣を振るし、演武はやるしで驚いて姿を見せちゃったんだよ》
このお気に入りの場所で、フレアは気分を変えて稽古をしていた。そこで、思わず出てきたファクラムと出会ったのだ。
「フレアお姉さまがサジを投げられるってどういうことですっ?」
シュリアスタが不満そうに詰め寄って行った。武技にも定評のあるフレアが才能がないとでもいうのかと怒ったのだ。当然、これは逆の意味だった。
《誰もフレアちゃんに教えられなくなっちゃったんだよ。フレアちゃんの方が上手過ぎてね~。さっすが僕の子孫! っていうか、フレアちゃんって僕の細君に似てるんだよね~。それで絆されて色々教えちゃったのよ》
「そうだったのですか? それは光栄です。もっと色々教えてください」
《うん。遠慮しないところもそっくりっ》
使えるものは使うのは一族の方針だ。先祖ならば消えるまでこき使う。その知識を全て吸い出す。
だからこそ、父も兄も世間話のような気軽さで話しを聞き出しにかかっているのだ。それに、ファクラムも気付いている。
そこで、それまで黙っていたギルセリュートが尋ねる。フレアの方をチラリと見ていた。
「どんな奥様だったのですか?」
《僕が宰相になってすぐだったかな? 伯爵家の四女でね。彼女を見たのは戦場だったよ。領主同士の小競り合いだけどね》
他国との戦争は落ち着いたとはいえ、国内の混乱は続いていた。長い戦争状態は、中々皆の意識から抜けない。『戦って勝って奪う』という考えが定着してしまっていたのだ。
《曲がった事が嫌いでねえ。その時も父親の不正を知っちゃったがために死んでこいって送り出されたみたい。でも、僕が手を出すまでもなく一人でその戦いを終わらせちゃったのよ。彼女、周りにも生家にも隠してたけど、魔術の天才でね。僕はからっきしだったから面白くって》
最後『いい加減にしろ!』と半ばキレた彼女が戦場のど真ん中を爆破したのだ。これに恐れ慄いた両軍が戦意を喪失し、その間に彼女が国へ不正の証拠と報告書を提出。円満解決となった。
《もらった報告書がラブレターに見えたねっ。トキメキ過ぎて直接領地に出向いて裁決を言い渡したよ。花束持って》
「……そこで求婚されたと……?」
《うん!》
「……因みにどんなお言葉を贈られたのです……」
《『僕とこの国牛耳ってみない? 面白おかしく変革してバカを追い出そうよ!』だったかな》
「……」
ギルセリュートが肩を落とす。だが、周りはぶっ飛んだ求婚の言葉に笑い、楽しそうだ。
「ギル?」
一人落ち込むギルセリュートに声をかけたのだが反応がない。戸惑っていれば、シーリアが気にしなくていいと手を取って耳打ちしてきた。
「参考にしようとしてたのに、当てが外れて落ち込んでるのよ。その時を楽しみにしていればいいわ」
「その時っ……え……」
「ふふ」
意味が分かったフレアリールは徐々に顔を赤らめていく。
そんな様子には幸いなことにシーリア以外気付かない。シュリアスタも無邪気にファクラムへ質問を続けていた。
「では、奥様は何とお答えに?」
《『バカが死滅していくところが特等席で見物できるなら喜んで!』だった! おんなじことを考えてたってのが嬉しくってさ~。そのまま攫って来ちゃった》
注目すべきは同じ考えって所じゃないと、フレアリールは一気に上気していた熱が冷めるのを感じていた。
しかし、周りは違ったのだ。
「きゃ~! ステキです! とってもお似合いなカップルです!」
《でっしょー! 彼女はその男勝りな性格が兵に人気でね~。でも僕としてはちょっと心配~。モテモテな奥さんって困るよ。けど、兵が断然使いやすくなったけどね~》
動かしやすくなったことは、確かに良いことだ。だが、それで嫉妬心が相殺されるとはどういうことか。
「なるほどっ、それは間違いなくフレアお姉さまに似ていますわねっ」
《だよね~。いやあ、フレアちゃんの旦那さんはきっと苦労するよ~。別に尊敬と憧れは向けてくれていいんだけどね? 僕も気にはなるけど許すっていうか。けど、たまに色目使ってくるのがいてさ~。そういうのは拳で語り合ったね》
「フレアお姉さまの隣に立つ以上、半端な強さではいけませんわっ」
何気に皆がギルセリュートとフレアリールへ視線を寄越す。ギルセリュートは必死で目を逸らしていた。
《やっぱ男は守れなきゃねっ。あ、でも彼女は結構勝手に出て行って気に入らない奴とかぶっ飛ばして帰ってきてたな~。僕が手を出す前にシメてきちゃう所があったよ》
「なんてカッコイイ奥様でしょうっ。憧れますわっ」
《あはは。そうやって女の子たちも虜にしちゃうんだよね~。だから、史実で男だったって説が出ちゃっててさ。お陰でこっちの記録もまともに残らなかったのよ》
女性に人気があるというのは、とても重要で、その上、彼女たちが残す言葉では女性と判断できないものがいくつもあった。そのため、ファクラムの妻であった人はいつの間にか男性だったことになっていた。
もちろん、ファクラムの妻とは別人という設定だ。彼女の行動、歴史を記すと、それは別人の男性のものとなってしまう。彼女の行動とは認識されないようになっていたのだ。
これにより、彼女の記録が極端に少なくなってしまい。行動的だった部分がごっそり抜け落ちたことで大人しい夫の影に隠れる細君という姿しか残らなかった。
「それで記録が少なかったのですね。安心しましたわ。私もこのシェンカの嫁として自信が持てます!」
母のファルセが拳を握りしめていた。確かにここまでの話しを聞くと、このシェンカの嫁に相応しい。
「お、おい……さすがに領からは出ないでくれよ……」
「わかってるわ。それはフレアに任せるわよ。やっぱり手加減って難しいんだもの」
「……そうだな……」
《あっはっはっ、そっか。そういえばファルセちゃんは一撃で馬車を破壊してたね》
「まあっ、ご存知でしたの? 若気の至りですわ」
照れ照れと頬を覆って揺れるファルセに、男性陣は顔色を変える。
《女が生き生きとしている土地は良いって言うけど、ウチの女性陣はちょっと元気過ぎかな?》
その言葉に男性陣は全員が真面目な顔で頷いたのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回は三日空きます。
よろしくお願いします◎
2019. 4. 30
彼が宰相になったのは間違いなく、その時の王の気まぐれだった。
後にも先にも、平民が宰相に抜擢されたことはない。
酷い時代だったという。戦争ばかりで、人々は生き残ることに必死だった。そこで、まだ少年であったファクラムは同年代の王子であった王と出会ったのだ。
《ホント、あの時はマジでおバカなお坊ちゃんでさあ。戦場で迷子になってたんだよね~》
「そこでお助けになられ、友情が芽生えたと?」
ファクラムは輪郭を時折ぼやかせながらお茶会に参加していた。
そして、父や兄達が興奮気味に昔の話しを聞き出しにかかっていたのだ。
《違うよ? ってかアイツ、王位争いで消されそうでさあ。敵にも味方にも狙われるっていう楽しい状況だったんだよ。僕はさあ、その頃武術ってのを極めようと思って戦場を渡り歩いてたのね。だから、アイツの味方をすればもれなく全部が敵に回るって知って都合よかったんだよ》
別に助けたわけではない。ただ、ファクラムは自分が思うようにしたかっただけ。
「なるほど。それは面白そうな状況ですね」
「戦争などやるバカ共など全部敵だ」
《だよねっ。もうめちゃくちゃ楽しかったよっ》
これだけで、戦いの才能もあるとわかる。シェンカの一族がそれなりに強い理由の一端がこれだ。
《そんで、戦争も落ち着いちゃって、僕ももうほとんど敵もいなくなったし、今度は隠密能力を高めようと思ってね。丁度良いからこの国の貴族の不正の証拠とか、片っ端から集めてやったの。で、集めたらいっぱいあったし、アイツに最終的に丸投げしたんだ》
「一斉摘発ですね。不要なゴミは処理すべきです」
「証拠を残すような小物など、国に不要だ」
《その通りっ》
不正をした貴族達の摘発など、シェンカの一族にかかれば朝飯前だ。
《そしたらアイツが言ったんだよね。宰相になって国を自由にしてみない? って。面白そうだから飽きるまで良いよってなったのさ》
「魅力的なお誘いでしたね」
「飽きるまでという条件を付けるとは、抜け目がない」
《いやあ、それなりに楽しかったよ。あんなに長く続いたことってなかったし》
飽き性なところがあるというのは認めている。だからこそ、多方面に手を出すのだ。
その間に妻となる人とも出会い、人生を謳歌した。あまり話には出てこないが、夫であるファクラムを支える良い妻だったという。
《そんで、宰相辞めてからこの領地をもらったんだ。一つの土地を弄れるのはもっと面白いよね》
「自分の目で見られますからね」
「未だ開拓中で、退屈はしませんな」
《でしょ? 我ながら良い遊び場を手に入れたものだよ》
このシェンカ領は最後の遊び場。ファクラムが好き勝手できる箱庭だった。
《ここの変化って見てて飽きないんだよ。だから、キャロウル神にお願いして僕が飽きるまでここに居させてもらってるんだ。でもずっとこうして顕現するのって疲れるから、花が咲く間だけってことにしてる。その方が変化がよくわかるしね》
年に一度、花が咲く時にだけシェンカ領を見て回る。隠密能力の高いファクラムが人の目につくことはなく、一時を楽しむのだ。
しかし、そんなファクラムにフレアリールだけが気付いた。
《フレアちゃんにバレたのは……五歳の時だっけ?》
「そうですね。武術の先生達にサジを投げられて時間を持て余していた時です」
《そうそう。ちっちゃいのにすっごくキレイな型で剣を振るし、演武はやるしで驚いて姿を見せちゃったんだよ》
このお気に入りの場所で、フレアは気分を変えて稽古をしていた。そこで、思わず出てきたファクラムと出会ったのだ。
「フレアお姉さまがサジを投げられるってどういうことですっ?」
シュリアスタが不満そうに詰め寄って行った。武技にも定評のあるフレアが才能がないとでもいうのかと怒ったのだ。当然、これは逆の意味だった。
《誰もフレアちゃんに教えられなくなっちゃったんだよ。フレアちゃんの方が上手過ぎてね~。さっすが僕の子孫! っていうか、フレアちゃんって僕の細君に似てるんだよね~。それで絆されて色々教えちゃったのよ》
「そうだったのですか? それは光栄です。もっと色々教えてください」
《うん。遠慮しないところもそっくりっ》
使えるものは使うのは一族の方針だ。先祖ならば消えるまでこき使う。その知識を全て吸い出す。
だからこそ、父も兄も世間話のような気軽さで話しを聞き出しにかかっているのだ。それに、ファクラムも気付いている。
そこで、それまで黙っていたギルセリュートが尋ねる。フレアの方をチラリと見ていた。
「どんな奥様だったのですか?」
《僕が宰相になってすぐだったかな? 伯爵家の四女でね。彼女を見たのは戦場だったよ。領主同士の小競り合いだけどね》
他国との戦争は落ち着いたとはいえ、国内の混乱は続いていた。長い戦争状態は、中々皆の意識から抜けない。『戦って勝って奪う』という考えが定着してしまっていたのだ。
《曲がった事が嫌いでねえ。その時も父親の不正を知っちゃったがために死んでこいって送り出されたみたい。でも、僕が手を出すまでもなく一人でその戦いを終わらせちゃったのよ。彼女、周りにも生家にも隠してたけど、魔術の天才でね。僕はからっきしだったから面白くって》
最後『いい加減にしろ!』と半ばキレた彼女が戦場のど真ん中を爆破したのだ。これに恐れ慄いた両軍が戦意を喪失し、その間に彼女が国へ不正の証拠と報告書を提出。円満解決となった。
《もらった報告書がラブレターに見えたねっ。トキメキ過ぎて直接領地に出向いて裁決を言い渡したよ。花束持って》
「……そこで求婚されたと……?」
《うん!》
「……因みにどんなお言葉を贈られたのです……」
《『僕とこの国牛耳ってみない? 面白おかしく変革してバカを追い出そうよ!』だったかな》
「……」
ギルセリュートが肩を落とす。だが、周りはぶっ飛んだ求婚の言葉に笑い、楽しそうだ。
「ギル?」
一人落ち込むギルセリュートに声をかけたのだが反応がない。戸惑っていれば、シーリアが気にしなくていいと手を取って耳打ちしてきた。
「参考にしようとしてたのに、当てが外れて落ち込んでるのよ。その時を楽しみにしていればいいわ」
「その時っ……え……」
「ふふ」
意味が分かったフレアリールは徐々に顔を赤らめていく。
そんな様子には幸いなことにシーリア以外気付かない。シュリアスタも無邪気にファクラムへ質問を続けていた。
「では、奥様は何とお答えに?」
《『バカが死滅していくところが特等席で見物できるなら喜んで!』だった! おんなじことを考えてたってのが嬉しくってさ~。そのまま攫って来ちゃった》
注目すべきは同じ考えって所じゃないと、フレアリールは一気に上気していた熱が冷めるのを感じていた。
しかし、周りは違ったのだ。
「きゃ~! ステキです! とってもお似合いなカップルです!」
《でっしょー! 彼女はその男勝りな性格が兵に人気でね~。でも僕としてはちょっと心配~。モテモテな奥さんって困るよ。けど、兵が断然使いやすくなったけどね~》
動かしやすくなったことは、確かに良いことだ。だが、それで嫉妬心が相殺されるとはどういうことか。
「なるほどっ、それは間違いなくフレアお姉さまに似ていますわねっ」
《だよね~。いやあ、フレアちゃんの旦那さんはきっと苦労するよ~。別に尊敬と憧れは向けてくれていいんだけどね? 僕も気にはなるけど許すっていうか。けど、たまに色目使ってくるのがいてさ~。そういうのは拳で語り合ったね》
「フレアお姉さまの隣に立つ以上、半端な強さではいけませんわっ」
何気に皆がギルセリュートとフレアリールへ視線を寄越す。ギルセリュートは必死で目を逸らしていた。
《やっぱ男は守れなきゃねっ。あ、でも彼女は結構勝手に出て行って気に入らない奴とかぶっ飛ばして帰ってきてたな~。僕が手を出す前にシメてきちゃう所があったよ》
「なんてカッコイイ奥様でしょうっ。憧れますわっ」
《あはは。そうやって女の子たちも虜にしちゃうんだよね~。だから、史実で男だったって説が出ちゃっててさ。お陰でこっちの記録もまともに残らなかったのよ》
女性に人気があるというのは、とても重要で、その上、彼女たちが残す言葉では女性と判断できないものがいくつもあった。そのため、ファクラムの妻であった人はいつの間にか男性だったことになっていた。
もちろん、ファクラムの妻とは別人という設定だ。彼女の行動、歴史を記すと、それは別人の男性のものとなってしまう。彼女の行動とは認識されないようになっていたのだ。
これにより、彼女の記録が極端に少なくなってしまい。行動的だった部分がごっそり抜け落ちたことで大人しい夫の影に隠れる細君という姿しか残らなかった。
「それで記録が少なかったのですね。安心しましたわ。私もこのシェンカの嫁として自信が持てます!」
母のファルセが拳を握りしめていた。確かにここまでの話しを聞くと、このシェンカの嫁に相応しい。
「お、おい……さすがに領からは出ないでくれよ……」
「わかってるわ。それはフレアに任せるわよ。やっぱり手加減って難しいんだもの」
「……そうだな……」
《あっはっはっ、そっか。そういえばファルセちゃんは一撃で馬車を破壊してたね》
「まあっ、ご存知でしたの? 若気の至りですわ」
照れ照れと頬を覆って揺れるファルセに、男性陣は顔色を変える。
《女が生き生きとしている土地は良いって言うけど、ウチの女性陣はちょっと元気過ぎかな?》
その言葉に男性陣は全員が真面目な顔で頷いたのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回は三日空きます。
よろしくお願いします◎
2019. 4. 30
41
お気に入りに追加
5,273
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる