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月が沈み、太陽が昇ったその日、空はイラつくほどの晴天だった。
世紀の大告白と題された新聞には、画像がなかった。
が、校内新聞として、堂々と下駄箱の真正面に、貼り出されている。
俺は四隅の画鋲から新聞を引きちぎり、真っ二つに裂いた。
「いやあ、よかったねえ、あのチュー現場の写真が載っていなくて。不幸中の幸い? 目に毒な部分の消去? 良い仕事するわ、新聞部」
後ろで脇田が笑う。
「でも、ディープキスしちゃったって書いてあるよ。全校のみなさんが、これで林君の節操のなさを、インプットしちゃったよね。僕、もう林君が不憫で不憫で。これからどんな事件が起こるか。向井君、楽しみだねえ」
西山の声に首を向けると、奴はさっき俺が破いた新聞のコピー版を、持っていた。
向井が不安げに俺を見る。
「罰だわ。いっそ火炙りにでも、されりゃいいのに」
お前の顔が曇っているのは、俺の視力が落ちたせいかな、脇田君。
「林、やっぱり俺」
向井が一歩前へ出る。
「大丈夫だって。まだ水ぶっ掛けられたくらいだし」
「はい! ストップ! そこまで! これより男前発言禁止! 何、その優しさ、お呼びじゃないって感じ」
西山がツンとそっぽを向く。
「俺の知ってる林はな、暗くて地味でやる気がなくて。二言目には、平凡が一番って言う奴なんだ。あの日の林を返せよ、この野郎」
脇田がしがみついてくる。
「ひいっ! キメェ! つうか、ブツブツ文句ばっか言ってんじゃねえ! お前らも敵か? 何気にラスボスか? 殴られてえなら、いつでも勝負してやるぞ! 本気でぶっ潰してやるからな!」
「そんなこと言って良いのお?」
ニヤリとほくそ笑む、西山。
「林君の苦手なもの、僕達、たっくさん知ってるんだけどなあ」
威勢を失くす、俺。
「林の苦手なもの?」
向井が呟く。
「手っ取り早く、決着をつけるってのもありだねえ、西山君」
「幼馴染の怖さ、思い知らせてやろうね、脇田君」
俺の苦手なものって、まさか。
でも、何年も前の話だ。
もう記憶のブラックホールへと、吸い込まれているはず。
吸い込まれていることにしてくれ!
「勝負には準備が不可欠だからな。数日、猶予をくれてやる」と脇田。
「もしギブアップするって言うんなら、教室のど真ん中で、土下座させるからね」と西山。
俺は親友の選び方を間違えたんだろうか。
世紀の大告白と題された新聞には、画像がなかった。
が、校内新聞として、堂々と下駄箱の真正面に、貼り出されている。
俺は四隅の画鋲から新聞を引きちぎり、真っ二つに裂いた。
「いやあ、よかったねえ、あのチュー現場の写真が載っていなくて。不幸中の幸い? 目に毒な部分の消去? 良い仕事するわ、新聞部」
後ろで脇田が笑う。
「でも、ディープキスしちゃったって書いてあるよ。全校のみなさんが、これで林君の節操のなさを、インプットしちゃったよね。僕、もう林君が不憫で不憫で。これからどんな事件が起こるか。向井君、楽しみだねえ」
西山の声に首を向けると、奴はさっき俺が破いた新聞のコピー版を、持っていた。
向井が不安げに俺を見る。
「罰だわ。いっそ火炙りにでも、されりゃいいのに」
お前の顔が曇っているのは、俺の視力が落ちたせいかな、脇田君。
「林、やっぱり俺」
向井が一歩前へ出る。
「大丈夫だって。まだ水ぶっ掛けられたくらいだし」
「はい! ストップ! そこまで! これより男前発言禁止! 何、その優しさ、お呼びじゃないって感じ」
西山がツンとそっぽを向く。
「俺の知ってる林はな、暗くて地味でやる気がなくて。二言目には、平凡が一番って言う奴なんだ。あの日の林を返せよ、この野郎」
脇田がしがみついてくる。
「ひいっ! キメェ! つうか、ブツブツ文句ばっか言ってんじゃねえ! お前らも敵か? 何気にラスボスか? 殴られてえなら、いつでも勝負してやるぞ! 本気でぶっ潰してやるからな!」
「そんなこと言って良いのお?」
ニヤリとほくそ笑む、西山。
「林君の苦手なもの、僕達、たっくさん知ってるんだけどなあ」
威勢を失くす、俺。
「林の苦手なもの?」
向井が呟く。
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「幼馴染の怖さ、思い知らせてやろうね、脇田君」
俺の苦手なものって、まさか。
でも、何年も前の話だ。
もう記憶のブラックホールへと、吸い込まれているはず。
吸い込まれていることにしてくれ!
「勝負には準備が不可欠だからな。数日、猶予をくれてやる」と脇田。
「もしギブアップするって言うんなら、教室のど真ん中で、土下座させるからね」と西山。
俺は親友の選び方を間違えたんだろうか。
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