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25  〈現在・オーガスト視点〉

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 オーガストはぼう然とした。
 昔、治癒の力が使えるようになったルイを、神のように祭り上げた。ルイにしかない力。ルイにしかできない救済。オーガストはそう言い、ルイを傷つけた。
 自己犠牲を教え込んだのは、紛れもなく自分だ。
 死ねばいいと思っていたから。苦しめばいいと願ったから。すべてを、奪って絶望させてやりたかったから。
 結果、ルイは自分の幸福より他者への幸福を選ぶ人間に成長した。
 喜べ、お前の教育の賜だ。
 ルイがオーガストの横を歩いて行く。
 俺のせいだ。俺のせい。俺が望んだから。俺の。
 オーガストは俯き、歯を食いしばりながら、ルイの腕を掴んだ。
 指が震える。
 拒絶されるのが恐ろしい。
 でも、それ以上に、自分の今を伝えたい。過去を塗り替えられなくとも、未来を変えることなら、できるかもしれないから、今、最善を尽くしたい。
 戸惑うルイの腕を引き、抱きしめる。
「愛している」
「え?」
「返事をくれ」
 ソロの町の住人が非難の声をあげる。
「ルイ。俺に、お前を愛するチャンスをくれないか?」
「あなたが好きなのは、人を救い続けるルイだ」
 オーガストはルイの両肩に手をのせ、首を左右した。
「俺が愛しているのは、俺の故郷の歌を聞いてくれていたルイだ。いつも傍で笑っていてくれたルイだ。人を救っているからじゃない。お前はお前であることに価値がある」
 オーガストは、愛していると控えめに笑んだ。
「ルイは?」
 色違いの瞳から涙が零れ落ちる。
 ルイの指がオーガストの袖をそっと掴む。
 オーガストはある決意を固め、ルイの頬に手を当てた。
「君を彼らから奪う。この地では平穏に生きられなくなる」
 ルイがじっと見つめてくる。
「心配するな。俺達は俺達の居場所を見つけに行けばいい。ついてきてくれるか?」
 オーガストはルイの唇を人差し指でなぞった。
 亜麻色の髪の少年が頷く。
 オーガストは微笑み、ルイの唇にキスをした。
 ソロの男達が顔を引きつらせる。
 ルイを守る一歩が成功し、オーガストは目を細めた。
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